[Disc 1]
01DOWN TOWN
シュガー・ベイブ唯一のシングルとなったポップ・ナンバーで、伊藤銀次と組んで制作。大貫妙子のコーラスも印象的な“Down townへくり出そう”のフレーズが休日へのウキウキした気持ちを呼び起こす。「土曜日の恋人」とともに“ひょうきん族”世代のアンセム。
02雨は手のひらにいっぱい
シュガー・ベイブのベスト・トラックと名高いミディアム・ポップ。大瀧詠一の提案によるフィル・スペクター志向も、しっかりと“ナイアガラ”節を奏でている。悲しみに暮れ涙する心境を“雨は手のひらにいっぱい”と描写したセンスが素晴らしい。
03パレード
シュガー・ベイブ期の制作だが、オリジナルは1976年の『ナイアガラ・トライアングル Vol.1』にて。トキメキと興奮が交ざり合う夢空間を、やわらかいポップ・サウンドとゴキゲンな“ごらん、パレードがいくよ”のヴォーカルが進む。
04WINDY LADY
漆黒の太いベースで幕が開く、ソロ・デビュー作『CIRCUS TOWN』収録曲。艶っぽい歌唱と華やかでセクシーなホーンがアダルトな空間を作り出すクール&ファンキーなミッドで、フュージョン的な要素も。何度も“Windy〜”と語りかけ、愛を十分に伝える。
05LOVE SPACE
ソロ2作目『SPACY』収録の爽やかな開放感に満ちたナンバー。フュージョンやAOR的なアプローチは、海外レコーディングの経験によるものか。吉田美奈子による日常的な、しかし美しい詞世界を、山下達郎が優しくも情熱的なヴォーカルで伝えている。
06SOLID SLIDER
端的だが印象深い吉田美奈子の詞と山下達郎のテナー・ヴォーカルの相性は実にいい。どちらかというと激しさのないリズムだが、描くのは“奴を殺せる!”というシリアスなストーリー。1977年リリース『SPACY』収録のジャジィなポップスだ。
07PAPER DOLL
倦怠と憂鬱がさまようようなヴォーカルは、独占したいだけの恋(=“PAPER DOLL”)に辟易した僕の心情を見事に映し出す。影を落とすようなダウナーなグルーヴとともに、青春期のなんともやるせない悲観めいた気分を綴ったミディアム・ポップだ。
08LET'S DANCE BABY
キング・トーンズに書き下ろした曲をセルフ・カヴァーした、1979年リリースのソロ初となるシングル。全体的に上質なフュージョン・ポップスに仕上がっているが、“君の呼び名はイカロス〜”以降のフックのライトなファンキー・グルーヴがたまらない。
09BOMBER
吉田美奈子とのコンビによるディスコ・チューン。シングル「LET'S DANCE BABY」収録で、特に大阪からヒットをもたらした。前面に強調された太いベースを軸にグイグイとせりあがっていくような展開が秀逸。歌唱の熱量もギラつく夏のようにハイだ。
10潮騒 (THE WHISPERING SEA)
愛する人と二人きり、夕陽が落ちて星影が浮かぶ海辺……とラヴ・ソングにはもってこいのシチュエーションを背景に、山下達郎がそっとやさしく愛を口ずさむ。ファンからの人気も高い、ムーディなミディアム・スロー・バラードだ。
11FUNKY FLUSHIN'
「BOMBER」のディスコ・シーンでのヒットから生まれたといえる1979年のファンキー・ディスコ。“Let's play〜”のフックで飛び込むクラップや中盤のパーカッシヴなパートからのグルーヴィンな展開が、興奮度を上昇させる。
12愛を描いて-LET'S KISS THE SUN-
初タイアップ・シングル(JAL「沖縄キャンペーン」イメージ・ソング)となった1979年発表の晴れやかなラヴ・ソング。どこまでも伸びやかなコーラスと陽気で爽快なサウンドが微笑ましいファンキーなポップだ。希望に満ちた明るいヴォーカルがとにかく印象的。
13RIDE ON TIME
内股で立つジャケットが印象的なアルバムのセルフ・タイトル曲で、1980年発表のヒット・シングル。黄昏の侘びしさと情熱が絶妙な加減で融合したノスタルジックなポップで、冒頭の“青い〜”から即興奮を呼ぶ傑作中の傑作。マクセルCMソングでも話題に。
14SPARKLE
イントロからラストまで山下達郎のギター・カッティングを存分に味わえる、これぞタツロー節な夏の季節感満載のファンキー・ポップ。青から藍、漆黒へと移ろう空と海にきらめく星たちをバックに生まれる恋物語を、心地よく歌いあげている。
15LOVELAND、ISLAND
陽気で弾むようなリズミカルなテンポで展開するサマー・ポップ。ビールCM用に手掛けた曲で、ブラジルの路上でサンバを踊る女性の映像にテンポを合わせたサウンドワークが巧み。伸びやかなサックスやコーラスなど、南国の雰囲気たっぷりだ。
16あまく危険な香り
TBS系ドラマと同タイトルの主題歌で、アダルトな雰囲気が漂うソウル・テイストのスウィート・ポップス。自身が好きなシカゴ・スタイルのリズム・パターンで、黄昏以降のトキメキを誘惑する。山下達郎のヴォーカルも、実にメロウだ。
17YOUR EYES
英語詞のパートナー、アラン・オデイ作詞によるロマンティックなミディアム・ラヴ・バラード。朝起きて君の目を見たとき、僕の夢が叶ったんだ……という甘く優しい光景を、山下達郎がソフトなテナーで表情豊かに歌いあげている。
[Disc 2]
01悲しみのJODY (She Was Crying)
1983年リリース『MELODIES』のオープナー。近づけぬまま過ぎ去ってしまった夏の風景を回想した歌で、“OH JODY〜”のファルセット・ヴォーカルが強いインパクトを残す。夏から秋へと向かう季節感をちりばめた哀愁ポップスだ。
02高気圧ガール
“夏だ、海だ、達郎だ!”路線の、全日空「沖縄」イメージ・ソング起用のサマー・ポップ。ア・カペラとパーカッションをバックに配したアレンジが、開放感と高揚をいっそう促す。身体を火照らせるようなねっとりとした歌唱も、大人のムードを作るのに一役買っている。
03クリスマス・イブ
“雨は夜更け過ぎに〜”の一節があまりにも有名な国民的クリスマス・アンセム。発表から5年後の1988年にJR東海CMとなった。時流にとらわれないスタンダード・ポップスだが、コーラスやパッヘルベル「カノン」の導入などアレンジも凝っていて、ドラマ性も高い。
04スプリンクラー
舞台は地下鉄表参道駅がある交差点。雨の中泣きながら地下鉄の階段を駆け降りる君を眺める僕の悲しい気持ちを綴った歌で、壊れたスプリンクラーのような激しい雨に二人の間ににわかに宿った心のざわめきを消し止めてと懇願。大正琴もマッチした物憂げな曲調が印象的だ。
05THE THEME FROM BIG WAVE
映画『ビッグウェイヴ』のテーマ・ソングで、サントラからのシングル。英語作詞のパートナー、アラン・オデイが綴った波を愛してやまないサーファーの心情を、山下達郎がちょっぴり侘びしくも伸びやかに歌う。センチメンタルなサーフ・ポップだ。
06I LOVE YOU・・・・Part1
サントリーギフトCM用に、詞は“I Love You…”のみという注文に応えた約2分の小品。コーラスを全編に配したドゥー・ワップにして、見事に楽曲へ重みをもたらした。山下達郎にとって最後のアナログ・レコーディングとなったムーディなラヴ・バラードだ。
07風の回廊 (コリドー)
1985年リリースの14thシングル。やや早めな“IN THE WIND〜”のフレーズが、パッと吹き抜けるつむじ風にぴったり。僕の愛を吹き飛ばしたつむじ風には、心の回廊にある扉とつながっていると綴る詞世界が秀逸。大人の爽快さを携えたポップスだ。
08土曜日の恋人
何かが起きそうな胸騒ぎが漂うミディアム・ポップ。雨模様の土曜の夜、街に傘とコートがカラフルに華やぐ……そんな光景と恋のきっかけを重ねた詞世界が微笑ましい。中盤登場の口笛も心のトキメキを伝える。フジテレビ系『オレたちひょうきん族』エンディング・テーマ。
09ゲット・バック・イン・ラブ
TBS系ドラマ『海岸物語 昔みたいに…』主題歌起用のラヴ・バラード。夏っぽいアップ・テンポ楽曲の制作に疲れ、バラードを制作。ボズ・スキャッグス「ウィ・アー・オール・アローン」風の雰囲気も見え隠れ。ブリッジ以降からクライマックスへの展開は胸を熱くする。
10踊ろよ、フィッシュ
“夏だ、海だ、達郎だ!”路線ラストとなるサマー・ラヴ・ポップスで、全日空「沖縄キャンペーン」イメージ・ソング。テナーとファルセットを行き来するホットなヴォーカルが印象的。夏の輝きを存分にちりばめた、亜熱帯仕様のナンバーだ。
11蒼氓 (そうぼう)
日常に点在する何気ない恋模様を歌うことが多かった山下達郎が、自身の子供が生まれたことで“生”への思いを綴ったミディアム・スロー・バラード。広がりを持ったゆったりとした空間のなかで、丁寧に言葉を置くような歌唱が耳に残っていく。
12アトムの子
手塚治虫の追悼ではなく、その意志を継承することをテーマに制作。誰もが手塚漫画ヒーローの継承者なんだということを端的に示した傑作だ。野生的なジャングル・ビートをバックにした希望に満ちた力強い曲風は、心に勇気の火を灯してくれる。さあ、シンギン・ラウド!
13さよなら夏の日
1991年リリースのシングルで、数ある名曲バラードのなかでも最上位のひとつといえる人気曲。子供から大人への成長過程を夏の日との別離と捉えた詞世界、もどかしさや不安を感じながらも未来へ向かう凛々しさを描いた歌唱や旋律……そのバランス配分が絶妙な傑作だ。
14ターナーの汽罐車
イギリスの風景画家ウイリアム・ターナーの作品からヒントを得た曲で、パブで虚しい夜を過ごす男女の倦怠を歌う。そんな憂鬱な二人をよそに、飾ってある絵画の中の汽車は淡々と走るという構図は、時だけが過ぎていくことの示唆か。メロディは明るくもどこか切ない。
15エンドレス・ゲーム
山下達郎のイメージにはあまりないメロウ&スムースな“メイクラヴァー”御用達ともいえる濃密な曲調は、TBS系ドラマ『誘惑』主題歌としての書き下ろしだからこそ。ドラマ同様にジリジリとした展開でリスナーの気持ちをそぞろにさせる。ウェットな歌唱とも好相性だ。
16ジャングル・スウィング
無機質なダンス・ビートに対してフェイクなビートじゃ踊れないと向こうを張った、山下達郎の気概が感じられる詞が印象的。スウィート・ソウルでクラシックなジャングル・ビートに乗せているのも面白い。バブルに浮かれる人たちを皮肉った歌だ。
17おやすみ、ロージー-Angel Babyへのオマージュ-
オリジナルは鈴木雅之への書き下ろし提供曲。山下達郎自身が好きなドゥー・ワップ曲調のセルフ・カヴァーで、漆黒ではないが、思い入れたっぷりの歌唱が美味。タイトルのロージーはロージー&オリジナルズからの引用か。心がホッと温まるラヴリーな子守歌だ。
[Disc 3]
01ヘロン
アオサギ(=ヘロン)が鳴くと雨が降るという言い伝えから着想を得たポップ・チューン。夜明けを迎える美しい情景を描いた瑞々しく鮮やかなサウンドは生命力にあふれている。クラップからのサビ導入や、“ヘロン”“リボン”“イオン”などの韻も見事に心躍らせる。
02世界の果てまで
日本テレビ系ドラマ『ベストフレンド』主題歌起用のミディアム・ポップ。青山の絵画館通りあたりを舞台にした、冬へと向かう季節の雨の日の情景を描く。冬の寒さの訪れとともに自分の心も冷え込んでいく、切ない想いを綴る。秋の終わりを思わせるオートハープが印象的。
03ドリーミング・ガール
松本隆が詞を手掛けたソウルフルなテイストのミディアム・ポップ。間奏やバックのストリングスからは、フィリー・ソウルの味わいがたっぷり。夢見る少女との出会いに心躍るさまを、ハートウォームなテナー・ヴォイスで歌いあげている。
04ドーナツ・ソング
ミスタードーナツCMソングとして話題となった、1998年『COZY』収録曲。かつての渋谷公園通りの店舗が舞台で、エンゼルクリームなど商品名を含めた詞も楽しい。ドーナツを食べて喜ぶ顔が浮かぶようなリズミカルでジョイフルな曲風は、ウキウキワクワクさせる。
05いつか晴れた日に
アコギを軸にしたサウンドは、ギターの弾き語りから曲を作ったからか。タイトルよろしくどこか曇りがかったような陰影のある曲調で、未来への希望と不安が入り交じった思春期の想いを描いている。派手さはないが、ジワジワと染み込む浸透力のあるミディアム・ポップだ。
06君の声に恋してる
シンセのアルペジオをバックに展開するポップなラヴ・ソング。君の声を聞かせてよ……遠距離をつなぐ電話をテーマに懐かしさと温かさを感じるサウンドで綴る。歌曲ともに恋しいトキメキに包まれていて、実に愛らしい。NTTコミュニケーションズのCMソング。
072000トンの雨 (2003 NEW VOCAL REMIX)
1978年のアルバム『GO AHEAD!』収録曲だが、その後2003年に広末涼子&松田龍平共演の映画『恋愛寫眞』テーマ・ソングとして脚光を浴びた。“僕は今日も一人”とつぶやくしかないやるせなさを歌う、若さゆえの悩みを見事に楽曲に昇華させた名曲だ。
08忘れないで
悲しき熱情とでもいえそうなヴォーカルとメロディが印象的な作風は、カンツォーネ風の楽曲を歌いたいという欲求から。竹内まりやが詞、服部克久がホーン&ストリングス・アレンジでドラマティックな演出に手を貸した、渾身のラヴ・ソングだ。
09FOREVER MINE
江國香織原作の映画『東京タワー』テーマ・ソングとして2005年にリリースされたシングルだが、原作と異なる幸福な結末を翻して、不倫の男女が抱える死への暗喩を歌う。侘びしさと希望が同居した微妙な感情を、表情豊かなヴォーカルで演出している。
10ずっと一緒さ
あなたと二人で生きていきたいと告げるオーセンティックなラヴ・ソング。過度な演出がないことで、詞に込められたメッセージの説得力を高めている。ポジティヴな曲調ながらしみじみとさせるのは、達郎の歌唱力ゆえ。フジテレビ系ドラマ『薔薇のない花屋』主題歌。
11街物語 (まちものがたり)
TBS系ドラマ『新参者』主題歌起用のシングルで、グルーヴィなリズムで刻むミディアム・ポップ。時代を超えて連綿と繰り返される、下町を舞台にした若者たちの恋の普遍性を綴る。それでも人生は続くという命題を陰りあるポップ・ソングに投影した秀作だ。
12僕らの夏の夢
信越の自然に代表される日本の山々へ向けた賛歌。山下達郎自身が思う夏の風景=“山”の静謐さを崇めながら、憧憬を込めて歌う。青々とした緑の広がりが目に浮かぶような、淀みのないシンプルなミディアム・ナンバーだ。劇場版アニメ『サマーウォーズ』主題歌。
13愛してるって言えなくたって
47枚目のシングルで、TBS系ドラマ『冬のサクラ』主題歌。東北の冬の歌としてリリースした2日後に東日本大震災が発生した。バカラックやリチャード・クレイダーマンあたりも感じさせる正統派ラヴ・バラードで、郷愁誘うストリングスは欧州風味。
14愛を教えて
全体的に陰りを帯びたアダルトなムードに支配されるノスタルジックなラヴ・ソング。ラテン風ガット・ギターが哀愁を誘い、ファルセットで歌うフックは内なる情熱を感じさせる。あなたの愛で明日へ生きていけると告げる、大人だからこそ歌えるナンバーだ。
15希望という名の光
映画『てぃだかんかん』主題歌として書き下ろした2010年リリースのシングル。“何度でも起き上がって立ち向かえる力を送ろう”など、発表1年後の大災害を経て、詞に新たな意味が加わり広まった。時流に左右されない悠然としたメロディに、心が安らぐ。
[Disc 4]
01硝子の少年 (UNRELEASED DEMO VOCAL)
02酔いしれてDeja Vu (UNRELEASED DEMO VOCAL)
03GUILTY (UNRELEASED DEMO VOCAL)
04EVERY NIGHT
05夜のシルエット
06希望という名の光 (2012 ACOUSTIC VERSION)