ミニ・レビュー
話題になっている久しぶりのアルバム(通算5枚目)。とにかく歌詞とメロディ、ヴォーカルとバックのサウンドがぴったり寄り添い、ポップで気持ちがいい。アルバム全体の構成も統一感があるし、バンドの演奏力もかなりのものだと思う。
ガイドコメント
前作『ユグドラシル』から約3年4ヵ月ぶりとなるフル・アルバム。「メーデー」「花の名」「涙のふるさと」などのヒット・シングル曲をはじめ、珠玉のギター・サウンドに独創的で真摯なメッセージを乗せた、彼らならではの楽曲が満載。
収録曲
01voyager
前作から3年4ヵ月ぶりとなるアルバム『orbital period』のオープニング・ナンバー。アルバム全体のイントロ的なアコースティック・ギターのアルペジオによる小曲で、“○月×日”(まるがつばつにち)というフレーズを歌詞にしているのにはビックリ。
02星の鳥
シンセサイザーによる1分弱のインスト・ナンバー。BUMP OF CHICKENのテーマ曲で、トラックと詞は分かれているが、アルバム『orbital period』の次曲「メーデー」に重なって繋がっており、イントロの役割も兼ねている。
03メーデー
14thシングル。タイトルは船や飛行機などから発信される助けを求める信号のことだとか。音作りも凝っているうえ、詞とメロディ、ヴォーカルとバックが一体化。ポップでリズミカルな、すごく気持ちのいい曲だ。
04才悩人応援歌
気持ち良さそうに歌っているヴォーカルをはじめ、全体的に伸び伸びとして爽やかだ。またユニークなドラムスのイントロなど、さまざまなアイディアがちりばめられていて、バンドの成長ぶりが伝わってくる。リズミカルでカッコいい。
05プラネタリウム
ヴォーカルの藤原基央が少年時代の夏休みに作ったプラネタリウムのことを歌ったという10thシングル。哀愁を帯びたヴォーカルとメロディ、そしてギターの音色がとても心に響くロマンティックなナンバー。
06supernova
アコースティック・ギターの流麗な音に乗せて、藤原基央の透き通るヴォーカルが生命について、大事なものについて歌い上げる。ロックのテイストはぐっと影を潜め、詞を聴かせるミディアム・チューンに仕上がった。
07ハンマーソングと痛みの塔
ポール・マッカートニーが愛用するヘフナー・ベースをフィーチャーした曲。レゲエ風のイントロをはじめ、ダンサブルな感覚を打ち出したりと興味深い仕掛けがたっぷり。詞にもユーモラスなところもあり、さまざまに楽しめるナンバーだ。
08時空かくれんぼ
ギターのアルペジオをフィーチャーした8分の6拍子のナンバー。ヴォーカルのムードなど全体的にノスタルジックな感じだが、中盤からドラマティックになるなど、一筋縄とはいかない展開が魅力の手の込んだ楽曲構成だ。
09かさぶたぶたぶ
リッケンバッカーなどビートルズが使用した楽器を使った曲。“僕はかさぶた”というフレーズが出てくるなどちょっぴりひょうきんな歌詞で、『みんなのうた』で流れてもおかしくない楽しさと子供のような瑞々しさがある。
10花の名
映画『ALWAYS 続・三丁目の夕日』の主題歌となった13thシングル。“簡単なことなのに どうして言えないんだろう”と歌い始める心に染みるスロー・ナンバーだ。エレクトリック・シタールもいいアクセントとなっている。
11ひとりごと
繊細で優しいヴォーカルとメタリックな印象を受けるサウンドのミックスが興味深い。しみじみとした演奏と“ねぇ 優しさってなんだと思う”という詞が胸を打つ、豊かな感性が光る曲だ。
12飴玉の唄
タイトルとは異なりややシリアスな歌詞との対照がおもしろいナンバー。ドラムスをロールさせたり、やや冷ややかな感触のサウンドにしているところも聴きものだ。ささやくようなヴォーカルだが、説得力がある。
13星の鳥 (reprise)
アルバム『orbital period』に収録のインスト・ナンバー。同作収録の「メーデー」の前奏の一部分やパイプ・オルガンがフィーチャーされ、適所にインストが配置された練られた構成が秀逸のアルバムの次曲「カルマ」への導入的な役割を果たしている。
14カルマ
PS2用ソフト『テイルズ オブ ジ アビス』のテーマ・ソング。「難解な歌詞でもゲームがそれを紐解いてくれる」を前提に作詞し、自分探しという奥深いテーマを歌ったロック・チューンだ。風のような疾走感が溢れる。
15arrows
アコースティック・ギターのみから始まり、徐々に楽器が加わる展開をみせる6分を超える大作。ヴォーカルも演奏も坦々として穏やかではあるが、鬼気迫る瞬間も垣間見られ、バンドの底力を実感させられる曲だ。
16涙のふるさと
ロッテ「エアーズ」CMソングとして起用された12thシングル。涙で空いた心の穴を埋めるような独自の詞世界が展開するポップ・ロックだ。美しくも力強いリズムと、サビの「会いに来たよ」のリフレインがいつまでも心に残る。
17flyby
アルバム『orbital period』のオープニング「voyager」と対をなすナンバー。「voyager」は終始しんみりしているが、こちらはバーンと盛り上がる部分も。コンセプチュアルな作品の最後を飾るのにふさわしい小曲だ。