ミニ・レビュー
前作に続きサポート・バンド、RAWGUNSとの共演アルバム。ラテン調の曲、7分近い大作、美しいバラード(ぼくは彼のバラードが好きです)など、大人っぽい仕上がり。これまたいいのだが、サウンドもぐっとシンプルになって余計な装飾がないのが特徴だ。
ガイドコメント
2006年から活動をともにしているRAWGUNSと共同で製作されたアルバム。セッション主体のレコーディングにより生み出された、大人のラブ・ソングを多数収録している。ジャンルもロックやファンク、バラードまで実に幅広い。
収録曲
01GOLD
イントロから骨太なギター・サウンドが炸裂! 全曲「藤井フミヤが歌うこと」を前提にオーダーメイドされたナンバーが並ぶアルバム『Order Made』のなかでも、特に藤井フミヤらしい伸びやかなヴォーカルが楽しめる一曲。
02Time Limit
うねるシンセサイザー、エッジの効いたカッティング・ギター。骨太なファンクネスが問答無用にカッコいい、藤井フミヤ流ソウル・ミュージック。フミヤのソウル・パフォーマーとしての実力を高らかに証明した作品だ。
03黒い空
藤井フミヤ自身が作曲を手がけた、ストレートなロックンロール・ナンバー。スティングが在籍していたロック・バンド“ポリス”にも近接した、ディレイ・エコーを多用した浮遊感のあるギター・リフが印象的だ。
04君になる
屋敷豪太らを擁する超強力バンド、RAWGUNSとのコラボによるラヴ・バラード。愛しい人への思いでいっぱいの気持ちが、シンプルな歌詞の中に込められている。「笑っても歌っても」というAメロが印象的なリフレインとなり、心に染み入る。
05ピースの唄
ロックンロール・エイジの藤井フミヤが、そのルーツ・ミュージックともいうべきドゥー・ワップに挑戦した軽快なナンバー。世界がどんなにすさんでも二人でいれば大丈夫……というピースフルな歌詞が、気持ちよく伝わってくる。
06Sweet beans soup
直訳すると「甘い豆のスープ」。ときめくような恋や情熱的な恋ではなく、男女の関係を超えて人間同士の付き合いになる“夫婦善哉”を歌ったロックンロール・ナンバー。不惑を超えた藤井フミヤだからこそ書き上げられた曲だ。
07ALL 愛 NEED
世界中のあらゆる国の“I LOVE YOU”がモチーフとして使われている、キュートなポップ・ソング。温かみのあるシンセ・サウンド、効果的に挿入されるハンドクラップ、思わず口ずさみたくなるメロディが印象的だ。
08How Far
アコースティック・ギターの哀愁を帯びたアルペジオとピアノの耽美な旋律がリスナーを優しく包み込む、ロマンティックなバラード。広い高原に一陣の風が吹きぬけるかのような、壮大でドラマティックな展開が圧倒的。
09Solitaire
トランプの1人用ゲームとして有名な“ソリティア”をモチーフにした、ブルージィなミディアム・チューン。藤井フミヤのそれまでのイメージを刷新するような、骨っぽさと男らしさを見事に体現したヴォーカルに酔わされる。
10Faces
男にとって永遠のミステリーで、幻惑される存在の“オンナ”を、酸いも甘いも噛み分けたミドル・エイジの視点で歌ったナンバー。作詞・作曲を担当した佐橋佳幸によるファンキーなギター・プレイが印象的だ。
11蒼い耳
一流のミュージシャンによる高度なアンサンブル、大人のバンド・サウンドが堪能できる一曲。アダルト・オリエンテッド・ロック(AOR)の雰囲気が濃厚にパッキングされた、ソフトでメロウなミディアム・チューンだ。
12飛行船
斎藤有太ならではの叙情的な詞世界と洗練されたサウンドが、大人をも酔わせる落ち着いた雰囲気をもたらすミディアム・ナンバー。RAWGUNSとの質の高いセッション・ワークから生まれた、円熟のアダルト・コンテンポラリーだ。
13地上にない場所
メロウなメロディ・ラインと藤井フミヤの憂いを帯びたヴォーカルが絶妙に絡み合う、恋する切なさを叙情的に綴った深遠で壮大なスロー・ナンバー。代表曲「True Love」に匹敵する、ニュー・スタンダードの誕生だ。