ミニ・レビュー
アコースティック楽器を中心とした6人編成バンドのファースト・アルバム。ギターとヴァイオリン、ウッド・ベースとのアンサンブルと巧みなコーラスは、ブリティッシュ系フォークを思わせる。大半が英語詞で、深い洞察力から生まれる人生の苦悩や希望を歌う。
ガイドコメント
BRAHMANのTOSHI_LOW率いるアコースティック・バンドのアルバム。ヴァイオリンやパーカッション、アコースティック・ギターといった楽器を駆使し、トラディショナルなサウンドと斬新なアイディアを融合させた音世界を表現する。
収録曲
01ホールド・ユア・ヘッド・アップ・ハイ
BRAHMANのメンバーを中心にしたプロジェクトのアルバム『OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND』のオープニング・チューン。カントリー・スタイルなギターが印象的なアコースティック調のサウンドで、ミキシングのテクニックも素晴らしい。
02ディソナント・メロディー
フィドルをフィーチャーしてはいるがカントリー風な色合いは強くなく、どちらかというとブリティッシュ色の強さが垣間見られる、ポップなアコースティック・ナンバー。パーカッシヴなドラミングが魅力的だ。
03ビリーヴ
イントロのギター・アンサンブルで心惹かれ、2つのギターが心地よく交わり生み出される豊潤なサウンドが絶品のナンバー。静かなサウンドの中にも男らしさが感じられるハーモニーが相まって、独特のオリジナリティが感じられる。
04ブラック・アンド・ブルー・モーニング
ドラマティックで壮大に突き進むサウンドが気持ち良く響く、ポップ・ナンバー。シンプルな作りでありながらも、ブレイクやアンサンブルなどで練り上げた過程が垣間見られるアレンジが聴きどころだ。
05レイン
夏らしさが漂うしっとりとしたスロー・ナンバー。スティール・パンとフィドルの軽やかで優美な響きが暑さを癒してくれるよう。無駄な音を極力そぎ落としたアコースティックなサウンド・プロダクションが潔い。
06ホール・ニュー・デイ
カントリー・スタイルのアコギとフィドルのイントロは、“気分はナッシュヴィル”といった古き良きアメリカン・オールディーズ・スタイル。だが、底抜けに明るいわけではなく、どこかブリティッシュな雰囲気を持ったサウンドで、早口言葉のようなメロディもユニーク。
07サンキュー
ギターのカウントから始まるボトル・ネックのイントロが、いい意味でラフ。セッションのような気楽なノリを持ちながらも、ギター・アンサンブルがバランス良くまとめられている。リラックスしたヴォーカルにも好感が持てる作品だ。
08メモリーズ
優しいフィドルのソロが何とも切ない。アルバム『OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND』の中では、最も心に響く、美しいメロディ・ラインが印象的なナンバー。力強いハーモニーが顕著な彼らだが、ここでは、優しいテイストに仕上げている。
09スコール
カントリーでもブルーグラスでもない独特のリズム。むしろ、アイリッシュやトラッド・フォークに通ずるような陰りを持ったサウンドが特色のナンバー。優しげなヴァースと力強いサビとのバランス感覚が素晴らしい。
10アワー・ハンド
イントロのフィドルの優しい音色によって、グイッと心をつかまれるスロー・ナンバー。ほとんどが英詞のアルバム『OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND』のなかで、唯一日本語詞によって手掛けられただけに、彼らのメッセージがより伝わってくるようだ。
11ハルパー
洋楽を意識したメロディ・ラインが垣間見られるが、個性的なリズムを生み出すパーカションが入ってくるだけで、彼ら流の独自のサウンドへ変化していくナンバー。リズム・アンサンブルの演奏が何より素晴らしい。
12ベガーズ・アンド・スレイヴス
ヴァラエティ豊かなリズムの変化が感じられる、アルバム『OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND』を締めくくるプログレッシヴなナンバー。クラシカルな響きを生み出すフィドルが、ヴァイオリン曲といえるほどフィーチャーされている。練りこまれたサウンドが圧巻。