ミニ・レビュー
60年代マインドでインド・テイストを昇華した個性的な音を鳴らす、クーラ・シェイカー待望のセカンド作。デビュー作にあったキャッチーさは少し後退したように思うが、その分、奥行きのあるアレンジと洗練されたサウンドに著しいバンドの成長が窺える。★
ガイドコメント
デビュー・アルバム『K』のスーパー・ヒットはロック・ファンなら記憶に新しいところ。いよいよファン待望の2作目が完成しました。KISSを手がけたボブ・エズリンをプロデューサーに起用。
収録曲
01GREAT HOSANNAH
“インド音楽を採り入れたブリティッシュ・ロック”の基本線に変化はないが、練り込まれたサウンドには、それまでの作品とは異なる綿密な設計図の存在が感じ取れる。新生クーラを象徴するプログレッシヴな佳曲。
02MYSTICAL MACHINE GUN
ピンク・フロイドとの仕事で知られるボブ・エズリンがプロデュースしたアルバム『ペザンツ、ピッグス&アストロノウツ』収録曲。イントロからフロイド節が全開。彼らにしては珍しくドラム・ループを使用している点にも注目だ。
03S.O.S.
ピンク・フロイドへの傾倒で知られる彼らが、ここでは拍子を工夫しキング・クリムゾン風に展開する。救助信号を思わせるタイトルは、収録CD『ペザンツ、ピッグス&アストロノウツ』の背部に隠された“HELP”の文字と関連が?
04RADHE RADHE
祈祷歌人の家系に生まれたインド人女性シンガー、ゴーリ・チョウドリーの美声で始まるラーガ・ロック。インド旅行気分に浸らせてくれる厳粛な冒頭部と、ホーン・セクションも加わるにぎやかな後半部のギャップが愉快。
05I'M STILL HERE
「僕はまだここにいる」と切実に歌い上げた、わずか1分半のアコースティック・ナンバー。クリスピアン曰く、“自分がバス・ルームに閉じ込められた時の気持ち”を歌ったのだとか。確かにそう読めなくもない歌詞だが。
06SHOWER YOUR LOVE
イントロでバグパイプのように聴こえる音は、日本でいうところの雅楽の“篳篥(ひちりき)”にあたるインド楽器“シャナイ”で出している音。ストリングスやコーラスなど、かなり明確にビートルズ色を出してみせたメロウ・ナンバー。
07108BATTLES (OF THE MIND)
108の数字からもわかるように、煩悩との闘いを歌ったキャッチーなグルーヴ・ロック・ナンバー。風が吹き雷鳴が轟くSEを使った展開に、いったいクリスピアンはどんな煩悩と闘っているのかと心配になる。
08SOUND OF DRUMS
ジョージ・ドラキュリアスとリック・ルービンがプロデュースしたブルージィなプログレッシヴ・ナンバー。シングル版よりもスマートにアレンジされ、冒頭部はレッド・ツェッペリンの「俺の罪」を思い出す。
09TIMEWORM
インド風のリズムの上で、英国フォーク/トラッド系のギターが静かに鳴っているクラブ・ミュージック風ラーガ・フォーク・ロック。インド人シンガー、ヒマングシュ・ゴスワミが、スピリチュアルな歌声を聴かせている。
10LAST FAREWELL
プログレ・ロックでベートーヴェン!? と思わせるイントロのこの曲は、『ペザンツ、ピッグス&アストロノウツ』を1曲目から順に聴くと必ずや既視感に襲われる。なぜなら、歌詞が同じで「GREAT HOSANNAH」の短縮変奏版と分かるからだ。
11GOLDEN AVATAR
クリスピアン曰く“聖人だけが達する高次元の精神レベル”を意味した曲題だとか。テープ逆回転サウンドやハーモニーを駆使したビートリッシュなサウンドで、ロック史における聖人たちが達した高次元の領域を目指す。
12NAMAMI NANDA-NANDANA
15世紀の聖人を歌ったインド民謡の曲題をそのまま冠したクーラ自作曲。マントラをクラブ・ミュージック風に転化したこの曲で、なんと“インドの人間国宝”ハリプラサード・チャウラースィヤーがバーンスリーを吹奏。