ミニ・レビュー
ニューウェイヴ再評価の波に乗って登場したニューヨークの4人組のセカンド。デンジャー・マウス、ポール・エプワース&ユアン・ピアソンという最強の布陣をプロデューサーに迎えて、さらに肉感的なダンス・チューン満載の一枚になっている。
ガイドコメント
パンクやファンク、ディスコやハウスを融合させたユニークなサウンドが魅力の、ザ・ラプチャーの約3年ぶりとなる2ndアルバム。本作は豪華なプロデューサー陣を起用し、彼らならではの幅広い音楽性が楽しめるサウンドを聴かせてくれる。
収録曲
01DON GON DO IT
80年代ニューウェイヴを思わせるチープなビートと電子音がいい味を出していたかと思えば、サビではゴスペル調のコーラスでサイケ感を演出。一気に高揚感を煽る。サウンドとしては非常にシンプルだが、その奥に潜む毒はかなりのものだ。
02PIECES OF THE PEOPLE WE LOVE
ビートとヴォーカル、コーラスを主体にした前半と、バンド・サウンドとなる後半と構成的な変化は見られるものの、全体としての熱の低さは変わらない。気楽さを前面に押し出しながらも、静かにじりじりと迫り来るサウンドは青白い炎のようだ。
03GET MYSELF INTO IT
金属的なギターのカッティング、ギャング・オブ・フォーを思わせるニューウェイヴ直系のビート、そして高らかなルークの歌声。「これぞラプチャー!」と諸手を挙げて大喜びしたくなるような、彼らの王道的ナンバー。この酩酊サウンドは癖になること間違いなし。
04FIRST GEAR
電子ビートとハンドクラップのようなリズムを基盤に、粘っこいベース音やギターのカッティング、妖しいキーボードのフレーズがジャンク的に折り重なって、奇天烈なグルーヴを練り上げている。有象無象を飲み込んだダンス・ビートが気持ちいい。
05THE DEVIL
ニューウェイヴ全開のギターとキーボードのフレーズが絡み合うポップなイントロから雪崩れ込む、ハイテンションなダンス・ナンバー。圧倒的な高揚感と祝福感を伴うサウンドは、彼らの代表曲「ハウス・オブ・ジェラス・ラヴァーズ」に並ぶといえる佳曲だ。
06WHOO! ALRIGHT - YEAH... UH HUH
性急なビートと金属的なギター・カッティングの図太いセッションが印象的なナンバー。ドープでスピード感を伴ったサウンドは、即効性をもって本能に訴えかけ、理性を消失させる。プライマル・スクリームの「スワスティカ・アイズ」を彷彿とさせる。
07CALLING ME
ラプチャーらしからぬヘヴィなギターで幕を開けたかと思いきや、重々しいミドル調のロックンロールを展開。絨毯爆撃のようなビート音の合間をくぐり抜けるように聴こえてくる、ルークの救いを求めるような歌声が耳に残る。
08DOWN FOR SO LONG
豪快なバンド・セッションが生み出す突き抜けるようなサウンドが心地いいナンバー。何度も繰り返される「随分長い間探していたんだ」というフレーズには、アルバム制作に当たっての彼らの苦悩が如実に反映されている。
09THE SOUND
ヘヴィなギターやデジタル・ノイズを前面に押し出したハードなサウンドが目立つロックンロール・ナンバー。歌詞の中にもプロデューサーや友人の名前が入っていたりと、バンドの自伝的な内容となっている。
10LIVE IN SUNSHINE
後期ビートルズを彷彿とさせるグッド・メロディとサイケデリアの融合が美しいナンバー。すべての苦悩から解放されたような伸びやかな歌声とサウンドは愛に満ちあふれており、心地良く胸に響いてくる。
11CRIMSON RED
ブルース調のギターとニューウェイヴ調のビートが融合した、ニュー・ブルースとでもいうべき不可思議なサウンドを放つ一曲。土臭いようでいて、どこか近代的なメロディは都会のクラブというよりも、場末のバーのような猥雑とした喧騒を思い起こさせる。
仕様
エンハンストCD内容:ゲット・マイセルフ・イントゥ・イット (ビデオ)