ミニ・レビュー
マンチェスターのクラブ“ハシェンダ”を震源地として、全英を完全に覆いつくしたブームの中心は、誰がなんといおうとハッピー・マンデーズ。本作はハウス系のプロデューサーを迎え、よりアカ抜けた感じだが、下半身を刺激する横ノリのドライヴ感は健在。特に(7)は最高。
ガイドコメント
この3rdアルバムで、彼らは全英No.1を獲得。まさにブームは最高潮に達しようとしていた時期だが、これを聴けば、彼らがその中でもひと際輝いていた存在だったことがわかるはず。
収録曲
01KINKY AFRO
キラキラと光り輝くアコースティック・ギターのイントロからなだれ込む軽やかなマッドチェスター・グルーヴ。「ユピイピ・ヤイヤイヤイ!」というコーラスが、とどまることのないダンス衝動と歓喜を端的に表している。
02GOD'S COP
ブルージィなギターが牽引するイントロから一転、ダビーなビートを主体としたエレクトロなダンス・ナンバーへ。抜けのいいサビのメロディとゴツゴツしたギターの相性も気分を盛り上げるが、フィリー・ソウル調なストリングスもハートに火をつける。
03DONOVAN
ブラジリアン・ビートをフィーチャーした神秘的な前半から、ヘヴィなギターがうねる狂騒的なグルーヴへとシフト・チェンジする変速ダンス・ナンバー。抑圧から解放へと導かれる音の波が、とてつもない快楽を引き起こす。
04GRANDBAG'S FUNERAL
ガレージ・ロック調の荒っぽいギターとオルガンのフレーズが男臭さを醸し出したロックンロール・ナンバー。ぶっきらぼうに歌うショーン・ライダーの悪童っぷりも露骨で、悪名高かったハッピー・マンデーズの素行が如実にうかがえる曲だ。
05LOOSE FIT
アシッドなビートを前面にフィーチャーしたダンス・チューン。情熱的でありながもどこか冷えきったようなサウンドは、クラブが持つ独特の狂騒感と退廃感を体現している。まるでフロアに満ちる悲喜をそのまま切り取ったようだ。
06DENNIS AND LOIS
能天気に上の方へと伸びていく音と鍵盤のフレーズがどこまでも気分を煽る、ハッピーなダンス・チューン。アシッドなダンス・グルーヴは『スクリーマデリカ』時代のプライマル・スクリームも彷彿とさせる。
07BOB'S YER UNCLE
アコースティック・ギターと横ノリのビートによる軽やかなグルーヴに、アクセントとしてフルートとソウルフルな女性ヴォーカルが盛り込まれている。アコースティック・セッションだけに若干地味ではあるが、原始的な香り漂うダンス・ビートが本能を刺激する。
08STEP ON
アシッド・ビートとファンキーなサウンドで構成されたケバケバしいダンス・チューン。巨大な音の波が身体の奥底に眠っているダンス衝動を刺激し、有無を言わさず踊らせる。これぞハピマン! と諸手を上げて踊りたくなるような怒濤のダンス・チューンだ。
09HOLIDAY
ソウルフルな女性コーラスとファンキーなセッションがハッピーな気分を盛り上げるミドル・ナンバー。一見ヘロヘロしたギター・ロックに思えるサウンドが、反復しながら極彩色のソウルへと様変わりしていくのには興奮を覚えずにはいられない。
10HARMONY
ゴスペル調のコーラスとフリーキーなセッションで構成されたナンバー。独特のドラッギーなダンス・ビートは皆無だが、サイケデリックな香り漂うサウンドには、ベクトルは違えど同じトリップ感を感じることができる。