ミニ・レビュー
二管編成のジャズ・コンボとアジテイターと名乗る非楽器奏者が一緒になった6人組。サウンドの基本にある語法はさまざまなジャズ。それらを独自のイナセな感覚を通し、下世話さ、はねっかえり感覚、娯楽感覚、チンピラ感覚などが渦巻く表現として押し出している。
ガイドコメント
2004年6月にサンプラー的アルバム『PIMPIN'』をリリースしたSOIL&“PIMP”SESSIONSの1stアルバム。圧倒的な勢いで迫る爆音ジャズは、ロック・ファンの心も鷲づかみにすること間違いなし。
収録曲
01PIMP MASTER
映画『少林寺』をヒントにタブゾンビ(tp)が作ったオリジナル・ストーリー。広東語らしき言語でアルバムのテーマとなる物語が語られる。聴き手の興味を惹くと同時に次のトラックへのスムースな流れを作り出している。
02NO TABOO
パンキッシュなイントロで始まる軽快かつアグレッシヴなナンバー。作者である元晴(as)のテンションの高いソロに続き、丈青が流れるようなピアノを聴かせる。曲中、2回チューニングが変わっているベースにも注目。
03FILTER
6秒ほどのイントロ的ベース・フレーズ。前後の楽曲が比較的雰囲気の似たテンションの高い速い曲であるため、効果的なアクセントとなっている。アルバム『PIMP MASTER』での次曲「SUFFOCATION」の中で、同じフレーズが登場する。
04SUFFOCATION
1stマキシ・シングルとしてもリリースされたファスト・チューン。親しみやすいテーマ・メロディや譜面に出来ないような元晴の炸裂ソロなどが聴きどころ。 サックスとピアノの他、ドラムもエンディングでフィル的ソロを披露。
05STINGER
本アルバム『PIMP MASTER』中、唯一みどりん(d)が作曲を手掛けたナンバー。彼らの楽曲の中では比較的オーソドックスな4ビート主体のオルガン・ジャズ。リズミカルなバンド・アンサンブルや“社長”のセリフなど、聴きどころ満載。
06WALTZ FOR GODDESS
ブラシを使用した印象的なドラム・フレーズと“社長”のセリフ&口笛で始まるワルツ曲。ファンタジックで美麗なピアノ・フレーズとハイ・テンションのバンド演奏のコントラストが魅力。ソロよりアンサンブルが主体。
07AVALANCHE
フロント2管のキャッチーなテーマが印象的な軽快なジャズ・サンバ。丈青と元晴の1分前後の長めのソロの合間に“社長”の雰囲気のあるセリフを入れるなど、聴き手を飽きさせない秀逸なアレンジが施されている。
08A WHEEL WITHIN A WHEEL
メッセンジャーズに在籍していた頃のボビー・ワトソンの代表曲のカヴァー。丈青を大フィーチャーしたテイクで、時折幾何学的なフレーズを織りまぜた2分弱のソロを披露。前後のテーマ部分では粋なアレンジも聴かせる。
09J.D.F#
2分半あまりの短かめのナンバー。コンクリート壁の部屋で演奏しているかのような独特の残響音が印象的。タブゾンビ(tp)と元晴(as)が交互にソロを披露し、絶妙な間を取りながらフェード・アウトする。
10LOW LIFE
パーカッシヴなドラムのイントロで始まる16ビートのフュージョン・ナンバー。怪しげな雰囲気を演出するエレピや、リバーブとディレイの強くかかったフロント2管のソロなどが魅力。潔いエンディングも好印象。
11NO MATTER
アルバム『PIMP MASTER』での「MO' BETTER BLUES」の前奏的な位置付けのトラック。パーカッシヴなドラムと白たま系のベースをバックに“社長”が意味深なセリフをセクシーに語る。曲紹介をし、次曲へのスムーズな流れを演出。
12MO' BETTER BLUES
スパイク・リー監督によるジャズ映画のタイトル曲のカヴァー。ブランフォード・マルサリスらによる原曲とは全く異なる無国籍な雰囲気が特徴的。歌心あふれる丈青のソロやクライマックスの盛り上がりが聴きどころ。
13WASTED TIME
アグレッシヴなベースではじまる3拍子基調のファスト・ジャズ。テーマのメロディそのものはハード・バップ的だが、重厚なコーラスや斬新なアレンジが加えられることで独特のサウンドに。極めてテンションの高い1曲。
14MASTER OF PIMP
「Master of Pimp」という絶叫で始まる映画のサントラのようなスケールの大きいナンバー。野外風SEがアルバム1曲目のタイトル曲「PIMP MASTER」と同じためか、アルバム全体を通しての流れを感じさせる。
15閃く刃
トラックは分かれているがアルバム『PIMP MASTER』での前曲「MASTER OF PIMP」から繋がる一続きのナンバー。最大限にテンションの高いパンキッシュなサウンドが魅力で、恐怖映画のような絶叫が繰り広げられる。「DEATH JAZZ」のシャウトでアルバムを締める。