ミニ・レビュー
メンバー二人だけでほぼすべての作業をこなすことで、独自性がさらに強まった3作目。生楽器と打ち込みを絶妙にブレンドし、ボサ・ノヴァやアフロ、ジャズなどを我流に咀嚼し、スケール感を増したヴォーカルとともに、濃密なオーガニック・サウンドを確立している。
ガイドコメント
約1年ぶりとなる3rdアルバム。生のグルーヴを重視した音作りだった前作とは対照的に、レコーディングからトラックダウンまでメンバー2人だけでほとんど創り上げた、ぬくもりあふれる1枚。
収録曲
01彼方へ
アルバム『ポエティック・オー』収録のナンバー。彼らの作品には「やわらなか夜」をはじめ6/8のナンバーが非常に多いが、この曲もその1つで、エレクトリック・シタールを導入したエキゾティックなサウンドとジャジィな雰囲気が同居している。
02リズム
ガット・ギターのアコースティックなカッティングとは裏腹に、ブラジル・ポピュラー音楽であるMPB(エミ・ペー・ベー)っぽいモダンなサウンドを持ったバウンス・ナンバー。黒っぽさとブラジルっぽさを融合したサウンドが面白い。
03煙のセレナード
イントロのスライドがドブロ・ギター風のアメリカン・ミュージックっぽさが漂うミディアム・ナンバー。少し枯れたくぐもった感じのサウンドが、まさにタイトルのごとく“煙”にぴったり。
04輪舞
05にわか雨
スロー・4ビートのジェントリーなバラード。メロディを聴かせることに重点を置いたようなシンプルなアレンジが徹底されていて潔い。ナガシマトモコのファルセットを駆使したヴォーカルが、とても切なく響いてくる。
06ソングバード
ラテン特有のリズムのツースリー・クラーベのイントロが心地よいブラジリアン・ナンバー。刻むリズムは4ビートで、ジャズっぽさも漂いお洒落度満点。ライヴではクラーベに合わせてクラップする様子が浮かぶ躍動感ある楽曲だ。
07STORY
チープなリズム・マシンとシンセによるイントロで、「これがorange pekoe?」と思わせる。だが、ナガシマトモコの声が聴こえてきたら一瞬で彼らの世界に戻してくれる。サビに入るとラテン・ムード満点でとてもポップなナンバー。
08Cradle
彼らお得意の6/8のリズム・スタイルを持ったインストゥルメンタル・ナンバー。パット・メセニーのようなオーガニックでスタイリッシュなギターをフィーチャーし、アルバム『ポエティック・オー』では最もジャズの影響が強く現われている作品。
09Heavenly Summer
打ち込みによるドラムス、シンセ・ベース、エレピでスタートするブラック・ミュージックの影響が強く現われたナンバー。このサウンドで90年代にデビューしていたら、アシッド・ジャズにカテゴライズされていたかもと思わせるほどだ。
10よろこびのうた
ブラジルっぽさ満点のガット・ギターのイントロに導かれてスタートするラテン・ナンバー。ポップでメジャーなサウンドで、歌うことの楽しさを綴った詞も好感が持てる。ライヴでの大合唱が思い描けそうな1曲。