ミニ・レビュー
デビュー10周年を記念したオールタイム・ベスト。「奏」や「全力少年」などをDisc.1に、活動再開後の「虹のレシピ」「アイスクリーム シンドローム」「ユリーカ」などをDisc.2に収録。二人の歩んできた歴史、成長具合が全30曲から伝わってくる、コアなファンも初心者も楽しめる2枚組。
ガイドコメント
デビュー10周年を記念した、2013年8月21日リリースの初となるオールタイム・ベスト。「奏」「全力少年」といった代表曲をはじめ、「ボクノート」「ガラナ」などのヒット・シングルからライヴ定番曲、ファンに人気の楽曲までをたっぷりと収録。
収録曲
[Disc 1]
01view
2003年にリリースされた記念すべき1stシングル。インディでの経験も豊富とはいえ、完成度は出色。マイナー調のメロで、長く続くトンネルのなかで逡巡する君への想いを綴る。緊迫感のあるバンド・アンサンブルも好印象だ。
02君の話
インディ時代のミニ・アルバム『君の話』のタイトル曲。ちょっぴりファンキーなテイストのアコギのカッティングで幕を開け、パーカッションの肉感的なビートが印象的。イライラとした心情を率直に綴った歌詞も面白い。
03奏 (かなで)
あだち充原作の映画『ラフ ROUGH』挿入歌に起用された2ndシングルは、流麗なピアノで幕を開けるミディアム・バラード。大切な君との前向きな別れをどこまでも美しいメロディとともに描くが、感傷的過ぎないテンポ感がちょうどいい。
04ふれて未来を
軽やかなピアノに絡むオルガン、そしてストリングスにブラスが楽しげなサウンドを奏でる3枚目のシングル。君との幸せな未来を描いた歌詞は微笑ましいが、“まだ見ぬ君を さて、探しに行こう!”と結ぶラストがちょっと笑える。
05冬の口笛
ソフト・ロックやAORあたりの影響を受けたと思われるサウンドが新鮮に響く4thシングル。サビをはじめ、全編にわたって伸びやかなメロディを中心としており、大橋卓弥の歌声の魅力をじっくりと味わうことができる。
06全力少年
“全力で少年だった”というフレーズが耳に残る、彼らのブレイクのきっかけともなった5枚目のシングル。ストリングスやブラスを配した色鮮やかで多幸感に満ちたサウンドが心地よい。かつての自分たちを思い出し、怯えずに夢へと進めと勇気づけてくれる。
07雨待ち風
カルビー「夏ポテト」CMソングに起用された6枚目のシングル。抑えめなピアノと情感たっぷりのヴォーカルではじまるミディアム・バラードで、失ってしまった君への想いを綴った歌詞が切ない。鮮やかすぎる夏の風景も悲しみに拍車をかけている。
08キレイだ
w-inds.に提供した楽曲のセルフ・カヴァー。歪ませたギターによるイントロ、ベース・ラインやパーカッションの肉感的なアクセントが新鮮なロック・チューンだ。もう戻ることのない君への想いを詰め込み気味に、そしてどこかやぶれかぶれに歌う。
09飲みに来ないか
タカラ「canチューハイ」CMソングに起用されたポップ・チューン。大切な彼女とケンカ、謝って“飲みに来ないか”と誘いたいけどそれもシャクだな……多くの人が経験のあるような葛藤を描く。ラストで結局引き下がる姿も共感を呼びそう。
10ボクノート
7枚目のシングルは映画『ドラえもん のび太の恐竜2006』主題歌。自分のなかにある言葉のカケラを少しずつ紡いで“僕の音”にしていくんだという歌詞は、曲作りの心境を綴っているよう。リアリティに満ちた手触りが心に直に響いてくる。
11ガラナ
映画『ラフ ROUGH』主題歌に起用された8枚目のシングル。がなるように歌う大橋の姿が新鮮なロック寄りのポップ・ナンバーだ。肝心なところで一歩踏み出せない苛立ちを綴っており、“この想いを止めるな!”というシンプルなメッセージが力強い。
12スフィアの羽根
「ガラナ」のカップリングとして発表された朝日放送『2006 夏の高校野球』テーマ・ソング。爽やかなサウンドとキャッチーなメロディ、未来へ向かって進む姿を後押しするメッセージ、王道ながらすべてが高い次元でかみ合ったポップ・ソングだ。
13アカツキの詩
ソフト・ロック風のハートウォーミングなサウンドが心地よく響く9thシングル。うまくいかない君との関係を描いており、“守ろうとした 手のひらで 握りつぶしてしまう”というサビの一節にすべての想いが詰まっている。
14藍
ピアノとギターとヴォーカル、二人だけのシンプルなサウンドによる導入が秀逸なミディアム・バラード。“愛”というシンプルにして複雑な問題の核心を突く疑問から、“来週はいつ会えるんだろう”という問いへと移っていく流れがユニーク。
15惑星タイマー
オフィスオーガスタのアーティストたちによるユニット、福耳としてリリースされたナンバーのセルフ・カヴァー。とはいえ、原曲でも前半は大橋がほぼ一人で歌っていただけに違和感はなく、素朴なメロディの魅力を存分に楽しめる。
16マリンスノウ
明治製菓「アーモンドチョコ」CMソングの10枚目のシングル。大切な君を失い、“孤独の海”に放り出された姿を描く。ストリングスも交えたドラマティックなサウンドをバックに歌う“思い出の重さで、泳げない”のフレーズは秀逸。
[Disc 2]
01虹のレシピ
それぞれのソロ活動を経てリリースされた11枚目のシングル。ワウを咬ませたギターのカッティングをバックに、ブラスやパーカッションで味付けした優しい雰囲気のミディアム・ポップ・チューン。一発録音ならではのグルーヴ感も心地よい。
02雫
アコースティック・ギターを中心に、どこか異国情緒も感じさせるサウンドに仕上げたナンバー。大地を踏みしめて歩いていくような、確かな意思を感じる歌唱が力強い。NHK Eテレのアニメ『獣の奏者 エリン』オープニング・テーマ。
03ゴールデンタイムラバー
バリバリの打ち込みで構築されたサウンドに驚かされるTBS系アニメ『鋼の錬金術師』第3期オープニング・テーマの12thシングル。不穏な雰囲気を漂わせる中盤のブリッジをはじめ、クールかつワイルドなテイストが支配しており、大橋の歌唱も色気たっぷり。
048ミリメートル
ゆったりとしたテンポで綴られた悲しいバラード。8ミリカメラのフィルムに残る二人の幸せな時間、もう決して戻ることのない時間と手に入れることのできない未来に思いを馳せる。受け入れたように穏やかに歌う大橋のヴォーカルが胸に刺さる。
05アイスクリーム シンドローム
13枚目のシングルは、2010年に公開されたアニメ映画『劇場版ポケットモンスター』主題歌。洗練されたサウンドと計算し尽くされたアレンジは洋楽的な印象を与える。彼らならではの、メロディにピッタリとハマる歌詞がスピード感を生んでいる。
06さいごのひ
美しいピアノの旋律によるイントロから“名曲”の要素が満載のミディアム・バラード。なぜ僕と君は出会ってしまったんだろう……大切な君との別れ、そしてたった一人の部屋で逡巡する苦悩を綴る。丁寧に構築されたアレンジは王道ゆえ、表現力の高さが浮き彫りに。
07晴ときどき曇
見上げるたびに色や模様を変える空を君との毎日にたとえ、繰り返さない今を大切に生きようと綴る、花王「アタックNeo」CMソング。ストリングスを交えて分厚くコーティングしたサウンドに負けぬ、どこまでもキャッチーなメロディの強さは見事。
08石コロDays
配信リリースで発表されたNHK Eテレ『中学生日記』主題歌。タイアップに合わせ、中学生から話を聞いて書き上げたという歌詞は青臭くも真っ直ぐ。内に秘めた想いやうまくいかない今を表わしたようなイントロの温度感も絶妙。
09センチメンタル ホームタウン
彼らにとって初の配信リリースとなったナンバー。ピアノを中心に、カントリー風のテイストを忍び込ませたアプローチが新鮮。心落ち着く“ホームタウン”へと戻る車の旅を描いており、車窓を流れる風景を切り取った歌詞が鮮やか。
10ラストシーン
映画『臨場 劇場版』イメージ・ソングに起用された16枚目のシングル。自分のこともままならない僕だけど、君の世界をずっと守っていたい……生きる意味を教えてくれた大切な存在へのまっすぐな想いを、奇を衒うことなく歌い上げる。
11ユリーカ
日本テレビ系アニメ『宇宙兄弟』オープニング・テーマの17thシングル。推進力の高いバンド・サウンドは比較的シンプルだが、緊張感や爽快感を生み出すストリングスのアレンジが秀逸。ラストのサビでの開放感は、まるで広い空へと飛び出したかのよう。
12スカーレット
電車の音で幕を開ける18枚目のシングルは、“旅立ち”を描いたミディアム・チューン。“スカーレットの電車”が走る自分の原点を見つめながら、大きな夢を持って歩いていく決意を綴る。終盤に向けて大きなクレッシェンドを描くアレンジも感動的。
13トラベラーズ・ハイ
18枚目のシングルは、ギターの細かなカッティングに弾けるブラス、色鮮やかなストリングスで彩りを添えたパーティ・チューン。彼らが敬愛するミスチルの曲名を忍ばせたり、メタな視点を取り入れたりといった遊び心満載の歌詞も楽しい。
14Hello Especially
10周年記念楽曲として制作された19枚目のシングル。素朴なカントリー・テイストを基調としたハートウォームなナンバーで、いい具合に肩の力の抜けた語り口で伝える感謝の言葉が微笑ましい。思わず口ずさみたくなるようなコーラスもキャッチー。