ミニ・レビュー
日本女性が二人になったロンドン拠点の多国籍バンドのセカンド。ソウル、ヒップホップ、ニューウェイヴ、オルタナなど、雑食性のミクスチャー・ロックな音楽性はデビュー作同様だが、よりソウルフルで強靱なダンス・グルーヴを身に着けたのが頼もしい。
ガイドコメント
イギリスの男女6人組ジャンルレス・バンド、ザ・ゴー!チームの2ndアルバム。前作で“ジャクソン5 meets ソニック・ユース”と称されたサウンドが、よりいっそうの進化を遂げており、胸が高鳴るサウンドが満載。
収録曲
01GLIP LIKE A VICE
大胆なドラミングと力強い音圧、そしてニンジャのラップがファンキーなダンス・チューン。ホーン、ギター、ブレイクビーツが飛び交うサウンドに、70年代のレアな音をサンプリング。ライヴの心地よい高揚感を作っている。
02DOING IT RIGHT
60年代テイストが懐かしい、陽気なチア・リーディング調ダンス・ナンバー。ノーザン・ソウルのシンディ・ギブソン「アイル・オールウェイズ・ラヴ・ユー」をサンプリング。鼓笛隊のような音のアレンジとキャッチーなコーラスが快い。
03MY WORLD
彼らには珍しい、牧歌的な雰囲気が漂うインストゥルメンタル。アコースティック・ギターを中心にした穏やかなメロディは、彼らが活動する英国郊外ののどかな田園風景を表わしているよう。アイディア豊富な彼らの音楽観が息づいている。
04TITANIC VANDALISM
黒人女性ニンジャのグルーヴィなラップとホーンを用いた華やかなアレンジが、熱い興奮を作るラップ・チューン。70年代のサイケデリック・ファンク・バンド、ポリティシャンズの曲をサンプリング。陽気なノリが気持ち良い。
05FAKE ID
オルタナと60年代ポップスを融合させた明るいナンバー。ラップを取り入れず、思わず口ずさみたくなるキャッチーな歌のみで構成。ホワイトノイズやフィードバックを入れ、ザラついた音に仕上げている点が、“普通”を嫌う彼ららしい。
06UNIVERSAL SPEECH
入り乱れるキャッチーな女性ラップが享楽的かつアヴァンギャルドなナンバー。彼らの盟友でもあるブラジルのクラブ・ミュージック・バンド、ボンヂ・ド・ホレのマリナが参加。生演奏のグルーヴが圧倒的なパワーで迫ってくる。
07KEYS TO THE CITY
にぎやかなパーティ・シーンを切り取ったような、華やかなユニゾン・ラップ・ナンバー。ヒップホップやニューウェイヴ、古き良きソウルの香りを注いだ音が刺激的。“聴く人にワクワクして欲しい”と願う彼らの思いが伝わってくる。
08THE WRATH OF MARCIE
温かみのあるカントリー調に仕上げたナンバー。カントリー・シンガー、グレン・キャンベルの曲をサンプリングし牧歌的な雰囲気を出しながら、一方でエレクトロやロックのファンキーな音を注入。一筋縄ではいかない音世界を作っている。
09I NEVER NEEDED IT NOW SO MUCH
軽快なピアノの伴奏がリードする、フォーキーなポップ・チューン。ラップを取り入れず、カントリー風味の素朴な歌声が耳に優しい。アフリカ、英国、日本と多国籍な人種が集まるグループらしい、幅広く寛容な音楽性が感じられる。
10FLASHLIGHT FIGHT
パブリック・エナミーのチャックDがゲスト・ヴォーカルとして参加し、太く轟きわたるラップを披露するナンバー。各楽器が激しくうなる快楽的なグルーヴやスクラッチ音に、野太くスピリチュアルな声がぶつかるさまは、迫力満点だ。
11PATRICIA'S MOVING PICTURE
ハーモニカや鉄琴の素朴な音がノスタルジックなインストゥルメンタル。ほのぼのとした安心感を与える生楽器に、壮大なホーンをアクセントとして入れた点がユニーク。幼いころを思い出すような優しい音に仕上げている。
12A VERSION OF MYSELF
アコースティックなギターの演奏をバックに、少女風の甘い歌声を乗せたギター・ポップ・ソング。意図的に全体をザラついた音にアレンジし、古いレコードを聴いているような懐かしい感覚を作っている。たて笛の素朴な音も可愛らしい。
13BULL IN THE HEATHER
意図的に音を外した三味線に似せた音とノイジーな不協和音に、並々ならぬ音楽センスが息づくナンバー。チアリーダー風の女性コーラスや激しいシャウトが、不思議な音世界を作っている。ソニック・ユースの楽曲をサンプリング。
14WILLOW'S SONG
妖しく美しい神秘的なムードに包まれるサイケデリック・ポップ。浮遊感のあるボーイ・ソプラノにも似た歌声が、ギターを中心としたメロウな音楽に揺らめく。神聖と謎めきがたゆたう、アルバム『プルーフ・オブ・ユース』のボーナス・トラック。
15MILK CRISIS
高く突き抜けるような日本語ラップを前面に出した、疾走感あふれるラップ・ナンバー。うなりを上げるロックンロール調のギターと挑発的に畳み込んでくるラップが刺激的だ。既成概念をぶち壊す想像力と音楽力に満ちたナンバー。
仕様
CDエクストラ内容:GRIP LIKE A VICE (ビデオクリップ)〜DOING It RIGHT (ビデオクリップ)