ミニ・レビュー
『NME』誌が本年度のベスト・アルバム候補に挙げる期待のニュー・カマー。ケミカル・ブラザーズの曲名から拝借したというバンド名のとおり、漆黒の闇を這うようなビートのスリルと、どこまでも上昇していくような高揚感あふれるメロディが最大の魅力だ。
ガイドコメント
バンド名はケミカル・ブラザーズの曲名から拝借したという、UKディスコ・パンク4人組のデビュー・アルバム。ニューウェイヴ色を帯びた華麗なパンク・サウンドは、聴く者を一気に虜にする。
収録曲
01WAKE UP
地を這うような強靭なベース・ラインが生む激しいビートに歪んだギター・カッティング。さらにディレイの効いた反骨精神を煽るようなサイケデリックなヴォーカルが空間を埋め尽くす、ダンサブルなロック・チューン。
02PUT YOU IN YOUR PLACE
限定リリースながら話題をさらったデビュー・シングル曲。冒頭からファンキーなギター・リフがうねり、豪快なビートに乗って、パッションを吐き出すようなアグレッシヴなヴォーカルが突き進むアッパー・チューン。
03DEAD SCENE
弾けるディスコ・ビートに野太いベース・ライン、クールなギター・リフが交わり、高揚感を煽るサイケデリックなヴォーカルが冴えわたる。サビで激情が噴き出すドラマティックな展開は圧巻で、フロアを熱く揺らしそう。
04THE WAY IT IS
激しく動くベース・ラインと後ノリのドラミングが生みだすダイナミックなビート、扇情的なギター・カッティングが絡むダンサブル・チューン。さらに情熱的で憂いを帯びたヴォーカルが、鮮やかに交錯して恍惚へといざなう。
05COMMERCIAL BREAKDOWN
メディアを過信して本質を見逃すことへの批判を表現した、ニューウェイヴ・テイストが漂うナンバー。力強くエモーショナルなバンド・サウンドや、キャッチーながらも哀愁を漂わせるファニーなヴォーカルが胸に迫る。
06SOMEBODY'S ALWAYS GETTING IN THE WAY
美しいメロディを紡ぐ瑞々しいギターの旋律に、叙情的でメロディアスなヴォーカルや切ないコーラス・ワークが溶け合って、エレガントな雰囲気を醸し出す。伝統的なUKロックの要素を取り入れたスロー・ナンバー。
07BORDERS
マンチェスター・サウンドの流れを汲む、切ない疾走感と清らかで流麗なギターの旋律にファルセットを交えた伸びやかでハイ・トーンなヴォーカルが溶け合ったギター・ロック・チューン。メロディの美しさは陶酔モノ。
08PANIC ATTACK
パニックに陥った情景と危機感を巧みに映し出した、緊迫感が漂うナンバー。ダイナミックに疾走するビートに扇情的な分厚いギター・リフが絡みつき、コーラスが美しく重なるエモーショナルなヴォーカルが突き進んでいく。
09I AIN'T LOSING ANY SLEEP
小さな街に住む怒れるパンクスに対して、諭すように語りかけるヴォーカルのフレーズが印象的なロック・チューン。静かに幕が明け、曲の進展とともに華やかさが増し、サビで一気に情熱があふれ出る壮大な展開が白眉。
10MY ARMY
流麗なギター・カッティングと優美で情感あふれるヴォーカルが、切ない疾走感を保つビートに乗って駆け抜ける。“やってみたらうまくいくかもしれないよ“という優しいメッセージを的確に音像化した爽やかなナンバー。
11RAISE THE ALARM
軽快なディスコ・ビートと色彩豊かなギターの旋律にキャッチーなヴォーカルが交わって、斬新なサウンドを鳴らすアルバム表題曲。“求めていることを実現する方法が分からないなら警報を発して”というテーマが鮮烈。
12OUT OF CONTROL
豪快なビートや激しいギター・リフ、情熱的でサイケデリックなヴォーカルが一体となり、“オレたちはコントロール不能”と繰り返す。アグレッシヴな世界を巧みに描き出したファンキーなロックンロール・チューンだ。
13YOU NEVER PARTY
ユース・カルチャーを背景にした、若者群像を臨場感たっぷりに描いたナンバー。抑制したメロディを滑らかに進むヴォーカルのループ、しなやかなビート、幾重にも重なって響く神秘的なギターのバッキングが艶めかしく展開していく。
14THEY GOT A HOLD OF US
静かなギター・カッティングで幕が開け、叙情的で澄んだヴォーカルが重なり、中盤で一転、濃厚なグルーヴを持つエモーショナルなバンド・サウンドが広がる。その壮大な展開が陶酔をもたらす、繊細で美しいナンバー。
15WHO CALLED THE DANDY?
ダビーなテイストに彩られた緊張感の漂うナンバー。メタリックな打ち込みビートに、浮遊するエレクトロ・ノイズや妖しく揺らめくギターが交錯し、強い存在感で響くクールなヴォーカルが幻想的なムードを醸し出している。