ミニ・レビュー
デビュー25周年を迎えた米ロック・バンドの20枚目。ジム・オルークが脱退し久々の4人編成の録音で、ぐっとストレートでクリアになったのが印象的だ。もちろんノイジィな演奏も健在だが、とにかく彼らの本質はフレッシュなまま変わっていない。
ガイドコメント
81年にNYCで誕生したソニック・ユース。以後、オルタナティヴ・ロック界の重要バンドとしてあらゆる世代からリスペクトされる彼らの、2年ぶり20枚目のオリジナル・アルバム。セルフ・プロデュース作だ。
収録曲
01REENA
キム・ゴードンがリード・ヴォーカルをとるアルバム『ラザー・リップト』のオープニング・ナンバー。どことなく女性らしい歌いっぷりが印象的。ポップさも感じさせるが、バンド本来のアグレッシヴさは健在。
02INCINERATE
サーストン・ムーアがリード・ヴォーカルをとるキャッチーなナンバー。ギターとドラムスの絡みが実にカッコイイ。ノイジーなサウンドでクライマックスへ駆け抜けるサウンドは、実にスリリングだ。
03DO YOU BELIEVE IN RAPTURE?
シンプルなギターのストロークとサーストン・ムーアのヴォーカルをメインにした弾き語り風ナンバー。淡々としてはいるが歪みのある響きがフィーチャーされ、内に秘めた激しさが感じられる味わい深い演奏だ。
04SLEEPIN AROUND
アルバム『ラザー・リップト』に収録のナンバー。ストレートな演奏とは程遠く、イントロからノイジーなギターがあちこちで唸りを上げている。火を吹くような、あるいは鋭利な刃物を感じさせる、研ぎ澄まされた印象の演奏が炸裂!
05WHAT A WASTE
スピード感のあるノイジーなビートが心地良く飛び込んでくるナンバー。パワフルなキム・ゴードンのヴォーカルにキャッチーな間奏のギター・フレーズなど、硬軟の両面を生かしたソニック・ユースらしい演奏だ。
06JAMS RUN FREE
ゆるいリード・ギターで始まるミディアム・ナンバー。ささやくようなキム・ゴードンのセクシーなヴォーカルが聴きもので、バックが次第にノイジーで混沌としたサウンドへと移行する展開の絶妙さに思わず恍惚としてしまうはず。
07RATS
リー・ラナルドがリード・ヴォーカルをとるヘヴィなナンバー。全編ノイジーなサウンドで、ドラムスさえもその中に埋もれてしまっている感じのディープさが心地良い。いつまでもどっぷり浸っていたい快感を覚える演奏だ。
08TURQUOISE BOY
キム・ゴードンがヴォーカルをとるミディアム・ナンバー。やや明るめのキャッチーなイントロでキムもしっとりと歌っていくが、対照的に終盤は激しくノイジーなサウンドで攻めるからたまらない。演奏、構成のうまさを実感させてくれる。
09LIGHTS OUT
サーストン・ムーアが低音でゆったりと歌うミディアム・ナンバー。とりとめのないリード・ギターなど、爆発寸前ギリギリのゆるさが魅惑のサウンドを展開。荒涼としてやるせない、そんなたまらないムードを持った曲だ。
10THE NEUTRAL
キム・ゴードンのヴォーカルやギターの音色がなんとも可愛らしくキャッチーな曲。アルバム『ラザー・リップト』の中では最も軽快な曲といえる。それでいて飽きのこない演奏だ。メロディも素晴らしく絶妙で、心に残る佳曲。
11PINK STEAM
長いイントロだけで満足してしまいそう。というより、インストがサウンドの中心を担うソニック・ユース節全開の曲。歌部分が最後という変則的構成も面白い。重量感のあるギター・フレーズで聴き手を圧倒する、ひたすらにカッコいい演奏だ。
12OR
アンダーグラウンドなムードに彩られたアルバム『ラザー・リップト』のラスト・トラック。サーストン・ムーアの祈るようなヴォーカルや冷たい感触の混沌としたサウンドなど、聴きどころたっぷり。静かな演奏だけに余韻がいつまでも続く。
13HELEN LUNDEBERG
冒頭にスタジオでのやりとりがひとこと入った、アルバム『ラザー・リップト』収録のインターナショナル・ボーナス・トラック。ブッ飛んだテンションのヴォーカルと乾いたギター・カッティング、さらにノイズがけたたましく交錯するスリリングな演奏でKO必至のハード・チューンだ。
14EYELINER
アルバム『ラザー・リップト』UK&日本盤に収録のボーナス・トラック楽曲。ノイジーなギター・サウンドと連射されるリリックで構成されたヘヴィな演奏だ。感情が洪水のように吐き出される切迫感に満ちたシリアスなナンバー。
15DO YOU BELIEVE IN RAPTURE?
アルバム『ラザー・リップト』収録楽曲の別ヴァージョンで、日本盤のみのボーナス・トラック楽曲。サイケデリック・ミックスとあるが、変にいじくりまわすことなく、オリジナル・ヴァージョンが持つ要素を活かした、サイケなアクセントの加減が絶妙なリミックス。