ミニ・レビュー
米国ではデジタル発売(一部店頭で限定販売)だが日本では通常CD発売となった2005年作『モンキー・ビジネス』収録曲リミックス集。ウィル・アイ・アムの“サウンドの父”ともいうべき東海岸敏腕サウンド・メイカーたちの顔ぶれ/仕事が古いヒップホップ・ファンには涙もの。
ガイドコメント
2005年5月にリリースされ世界中で大ヒットを記録した4thアルバム『モンキー・ビジネス』収録曲の中から、ヒップホップ色の強い楽曲をメンバー自身がピックアップした、リミックス・ミニ・アルバム。
収録曲
01LIKE THAT
Q-ティップ、タリブ・クウェリ、シー・ロー、そしてファーギー以外のメンバー3人の個性抜群のマイク・リレーが満腹にさせてくれる。コミカルに「IN THE HOUSE」で結ぶライミングの後に、ジョン・レジェンドがコーラスで加わってくるお茶目な曲だ。
02BA BUMP
80年代後半から90年代前半にかけて活躍したヒップホップ・グループ、EPMDのエリック・サーモンのリミックス&プロデュース作品。サーモンの明るいラップと好対照なファーギーの妖しいテンションのラップとの化学反応がかっこいい。
03MY STYLE
アップルの素っ頓狂なラップとファーギーのつぼを押さえたコーラスが魅力的な、8ビートのおとぼけヒップホップ。ジャスティン・ティンバーレイクがフィーチャリング参加、プロデューサーはギャングスタ・ラップの星、DJプレミアという濃い曲だ。
04THEY DON'T WANT MUSIC
90年代以降のヒップホップを作った男、ピート・ロックのプロデュース作品。禁断のキーワード「ファンキー」が繰り返されるサウンドにジェイムス・ブラウンのサンプリングがのる、ブラック・ミュージックの歴史をたどるようなアレンジが興味深い。
05FEEL IT
87年にウィル・スミス(当時はフレッシュ・プリンス)とのコンビで彗星のごとく現れたジャジー・ジェフによるプロデュース作品。スクラッチとヴォイス・サンプリングを駆使したジャジー・ジェフのDJプレイが花を添える、おしゃれなサウンドが潤してくれる。
06AUDIO DELITE
リック・ジェイムス作品のサンプリングにウィル・アイ・アム特有のヴァラエティ豊かなフレーズが混ざっていく作品。尺八やジョージ・ベンソン風のギター・サウンドも飛び出すアイディアの多彩さ、頭脳のタフさに敬服してしまう曲だ。
07DISCO CLUB
21世紀のスライ&ザ・ファミリー・ストーンといった雰囲気の曲。BEPのメンバーそれぞれが入れ代わり立ち代わりで楽しませてくれるゴーゴー・サウンドは、ブラック・ミュージックの縮図のよう。ファーギーの露悪的なラップにはひたすら圧倒されてしまう。