ミニ・レビュー
リヴァプール郊外で結成されたロック・バンドの4作目。ケルト、ロカビリーなど、さまざまな要素を消化吸収して本格的なオリジナリティを打ち出したともいうべきアルバムだ。変化のある演奏だが、特に牧歌的なアコースティック・ナンバーに成長、魅力を感じる。
ガイドコメント
リヴァプール出身のザ・コーラルの4thアルバム。オアシスのノエル・ギャラガーが所有するスタジオでレコーディングされた作品で、独創的で野心的な楽曲が多数収められている。
収録曲
01WHO'S GONNA FIND ME
夜明けの静寂の中で感じる孤独を歌い上げた、グループ・サウンズ風の哀愁漂うロック・ナンバー。フリーキーなスライド・ギターが暴れまくっていたりと、細かなサウンド・アレンジはモダンなブルース解釈といった趣もあり。
02REMEMBER ME
女の子とまともに話すこともできないシャイな男の子の失恋を描いたポップ・チューン。タムを中心に叩きまくる手数の多いドラミングとフェンダー・ローズ・ピアノの粘っこいコード弾きが横ノリのグルーヴを作り上げている。
03PUT THE SUN BACK
ブラーの「ヴィラ・ローズィー」を彷彿とさせる哀愁漂うフォーク・ロック・チューン。“あの頃の気持ちを2人の心に取り戻さなくちゃ”……そんな前向きなフレーズがメランコリックなメロディに乗せて歌われる優しい応援歌だ。
04JAQUELINE
アコースティック・ギターの軽やかなコード・ストロークとエレクトリック・ギターのメロディアスなアルペジオが清々しい、爽やかなポップ・ナンバー。別れてしまったかつての恋人、ジャクリーンとの思い出を綴った歌詞が切ない。
05FIREFLIES
“泣いているんじゃない。おれは蛍を見ているだけ”。そんな風に強がってみせる男の哀愁を描いたサイケデリック・ロック・チューン。器用に取り入れたラテン調のリズム・アプローチの巧さは、同郷の大先輩であるビートルズ譲り。
06IN THE RAIN
エレクトリック・ギターの歯切れの良いコード・カッティングが堪能できる、タイトなロックンロール・チューン。サイケデリックなコード進行に乗せて人懐っこいメロディが放たれる、コーラルの“らしさ”が存分に発揮された楽曲だ。
07NOT SO LONELY
アコースティック・ギターの繊細なアルペジオがフィーチャーされた、ビートルズの「ブラックバード」にも通じるバラード・ナンバー。大空を自由に駆け巡っているかのようにどこまでも伸びやかに響きわたるフルートの音色が美しい。
08COBWEBS
“どんなことがあってもずっと一緒だよ”と、恋人への熱い愛のメッセージを歌い上げる、幸せいっぱいのカントリー・ロック・チューン。ブラシを効果的に使用した柔らかいドラミングが楽曲の温かいムードを強調している。
09REBECCA YOU
自分の殻に閉じこもっている君には手が届きそうもない……。そんな人間関係における絶望的な断絶と孤独感を荘厳なストリングスの音色に乗せて綴ったバロック・ロック・ナンバー。ジェイムズ・スケリーの歌声も心なしか寂しげだ。
10SHE'S GOT REASON
“愛は黄金、時は泥棒、彼女は川へと流れる川”……そんなイマジネイティヴなフレーズが印象的なサイケデリック・ロック・チューン。リヴァーブを強めに効かせたエレクトリック・ギターの妖しい音色が、楽曲を幻想的に彩っている。
11MUSIC AT NIGHT
タイトルそのままの音楽至上主義なアティテュードが歌い込まれたフォーク・ロック・ナンバー。彼らにしては珍しく6分を超える長尺曲だ。東欧的なストリングスの音色には、クレズマー(ユダヤ人の音楽)からの影響もうかがえる。
12THE VOICE
モータウン調のグルーヴィなベース・ラインが印象的なロックンロール・ナンバー。そんな黒っぽいリズム・セクションの上にアイリッシュ・トラッド直系のいなたいメロディを乗せてしまうところが、コーラルの個性だ。
13LAUGHING EYES
カントリー調の伸びやかなスライド・ギターとハーモニカの朴とつとした音色の絡みが郷愁を誘う、牧歌的なアコースティック・ポップ・ナンバー。軽やかなリズムに乗せてジェイムズ・スケリーの柔らかな歌声が優しく響きわたる。