ミニ・レビュー
多彩なゲストを迎え、熟成という言葉がぴったりの3作目。バラエティに富んだ内容で3、6、14曲目といったシングル・ナンバーだけを見ても、彼の音楽の振り幅の大きさがわかる。ヒップホップというジャンルを飛び越え、スケール感を増した“塾長”の想いがリアルに響く。
ガイドコメント
ヒット・シングル曲「Fly Away」「Cry Baby」などを収録した3rdアルバム。切ないメロディで綴られるラヴ・ソングからアゲアゲのパーティ・チューンまで、ポップでメロウなSEAMOワールドが堪能できる。
収録曲
01SEAMOGoGoGo
ディスコ・テイストのハイテンションなサンプリングが光る、アルバム『ラウンド・アバウト』のイントロダクション。にぎやかな音の渦とポップなラップが、リスナーの耳をファンキーに煽る。ライヴのオープニングを飾るのにふさわしい、アッパーなトラックだ。
02ラップの花道
ヘヴィ・ロックのように太くうねるグルーヴィなイントロが、耳に飛び込んでくる。“ラップこそが自分の花道”と高らかに宣言する、ポジティヴなヒップホップ賛歌。ファンキーなリフが牽引する、ポップな楽曲に仕上がっている。
03Fly Away
ファンキー&グルーヴィなトラックが“どこまでも高く羽ばたいていこう”というメッセージを後押しするアッパー・チューン。アグレッシヴに振り切りながら、オーディエンスをガッツリとアゲていくフロウも素晴らしい。スガシカオがギタリストとして参加。
04Hey Boy、Hey Girl (feat.BoA)
ダンスホール・レゲエのような、跳ねる硬質グルーヴが印象的なアッパー・チューン。BoAをフィーチャーしたヴォーカル・パートは、メロディアスかつポップ。煌びやかなシンセの音色が、華やかなBoAの声と好相性だ。
05君のとなり
BPMを落としたスロー・ラヴ・バラード。アコースティック・ギターやトライアングルなど細やかなサウンド・コラージュが施された、メロウなトラックが印象的だ。SEAMOらしいロマンティックなリリックが、リスナーの共感を誘う。
06Cry Baby
音楽活動が上手く立ち行かず、未来への不安に苛まれていた頃……SEAMO自身が経験した挫折をリアルに反映した、切なくも前向きなミディアム・バラード。暖かい空気を生み出すストリングスなど、生楽器の使い方が上手い。
07おいしいゴハン
アコースティック・ギターと歌声のみで構成される、1分半のユニークな弾き語り。“実家のご飯”について愛情たっぷりに歌われる、可愛らしい歌詞が微笑ましい。アルバム『ラウンド・アバウト』の折り返し地点に配置された、素朴なワンクッション。
08Do It! (feat.MICRO&KURO (from HOME MADE 家族))
盟友HOME MADE 家族からMICROとKUROをフィーチャーした、ポジティヴな応援ソング。ディスコ・テイストのシンセが印象的なトラック上を、メロディアスなラップが交錯する。男らしい骨太なメッセージが光るアッパー・チューンだ。
09Chilling、Chilling
チープな脱力サウンドで構築された、軽快なトラックが耳に残る。リリックの内容はなんとユーモラスな自転車賛歌。しかし、ラップはあくまでテクニカルで老獪なSEAMO節で、彼の引き出しの多さを垣間見ることができる。
10料理三銃士 (feat.一撃&KookaiV10 (from 手裏剣ジェット))
手裏剣ジェットのメンバー、一撃&KookaiV10をゲストに迎えたファンキーな楽曲。音楽製作を料理に喩えたユニークなリリックが印象的だ。ラッパー3人の若くエネルギッシュなマイクリレーを味わうことができる。
11Hot!
パーカッシヴなビート感がラテン・フレイヴァを感じさせる、熱いヒップホップ・ソング。真夏のフロアに最適な骨太ラップが力強くドライヴしていく。アッシャーの大ヒット曲「Yeah!」を彷彿とさせるシンセの音色が隠し味となっている。
12宝島 (feat.hiroko (from mihimaru GT))
沖縄音階のイントロが印象的なミドル・テンポのサマー・チューン。Hiroko(mihimaru GT)のヴォーカルが優しく耳をくすぐる、涼しく流麗な楽曲だ。三線の音色など、サンプリングネタにも沖縄モノが多用されている。
13空
ハイテンションなイントロからド派手なサンプリング&スクラッチが展開され、後半のハイライトへ。ラップの要素を抑えたメロディアスなヴォーカル・パートがポップさを演出するナンバーで、リリックの内容もSEAMOらしいポジティヴさに満ちている。
14軌跡
ピアノとアコースティック・ギターによって導かれるのは、“いちばん、遠くへ行ってしまった”最愛の女性に対する痛々しいまでの想い。「マタアイマショウ」に代表される、SEAMOの切なくてメロウな部分がクローズアップされたバラード。
15From Now
爪弾かれるギターの音色や温かなリム・ショットの響きが、優しさに満ちたおおらかなサウンドを演出する。SEAMO節全開の前向きなメッセージがリスナーの背中をそっと押してくれるようで、包容力のある楽曲に仕上がっている。
16…おかえり
1分30秒のアルバム『ラウンド・アバウト』のタイトなアウトロ。重厚なピアノの音色がロマンティックな夜を思わせ、アルバムの終焉を優しく飾る。庶民的で親しみやすい歌詞がリスナーの耳を癒す、メロウ&スウィートなチルアウト・トラックとなっている。