ミニ・レビュー
デビュー作にして700万枚をセールスした彼らの待望の2作目。(3)に象徴されるハイ・エナジーなロックにキャッチーなコーラスをプラス、チープ・トリックのモダン版的な要素もあり。骨太で、しっかりメロウな彼らならではのサウンドを作り上げた意欲作だ。
ガイドコメント
全世界で大ヒットを記録したデビュー作『ホット・ファス』に続く2ndアルバム。一度聴いたら耳から離れないポップ・チューンが満載。随所にハッとさせる仕掛けや遊び心が詰まった傑作となった。
収録曲
01SAM'S TOWN
狂おしいキーボードや勢い良く鳴らされるギターが、2ndアルバム『サムズ・タウン』のオープニングを飾るにふさわしい華々しさを演出。どこか影のあるヴォーカルがそれと相反するサウンドとぶつかり合うことで、バンドならではのエネルギーが放出されている。
02ENTERLUDE
ピアノの弾き語りによって歌われる1分弱の小曲。「どうぞ楽しくお過ごしください」と聴き手に対して呼びかける、アルバム紹介の意図を持って作られたであろうナンバー。2ndアルバム『サムズ・タウン』収録の「エグジットルード」と呼応している。
03WHEN YOU WERE YOUNG
全米1位を獲得した『サムズ・タウン』のリード・トラック。リズム隊のタイトな演奏に支えられ、ハード・ロック風のギターが力強いうなりをあげる。アメリカン・ロックに傾倒した、新たなキラーズ・サウンドが堪能できる1曲。
04BLING (CONFESSION OF A KING)
プロレスの入場曲に使われそうな、ピリピリとしたファイティング・スピリットが印象的なナンバー。感情の起伏が激しいヴォーカルによって、「生きることについて」という大きなテーマが見事に描かれている。
05FOR REASONS UNKNOWN
歌われるのは、昔と変わってしまった自分を受け入れられずに苦しむ人物の姿。まるで、突然にロック・スターに成り上がった自分たちを歌っているかのようで、説得力は抜群。UKポスト・ロックの影響を感じさせる重いベースや、挑発的なキーボードの不穏さが、そのテーマをさらに助長している。
06READ MY MIND
軽快に弾むドラムに不気味なキーボードと爽やかなギターが交じり合う、というキラーズらしさいっぱいの楽曲。U2のボノがお気に入りというのも納得の、揺るぎない自信を誇示した安定感あるヴォーカルが、シンプルな曲展開の中で輝きを放っている。
07UNCLE JONNY
ヴォーカリスト、ブランドンの叔父をモデルにしたという曲。ドラッグに侵されていく叔父の姿を歌い上げる暗さと重たさは、キラーズというバンドのイメージを覆すもの。ノリの良さだけに焦点が当てられることへの反動が現れているようにも感じられる。
08BONES
ティム・バートンによるPVも話題となった、2ndアルバム『サムズ・タウン』からの2ndシングル曲。王道アメリカン・ロックを彷彿とさせる、ハード・エッジなギターを携えたポップさと覚えやすいメロディ・ラインが特徴的だ。
09MY LIST
シンプルなドラミングが弾むなかで、一方的な恋心が静かに歌い上げられる。ヴォーカル、ブランドンの巧みな感情表現をよりいっそう盛り上げる曲展開は、バンドとしてのまとまりと確かな実力を感じさせる仕上がりとなっている。
10THIS RIVER IS WILD
パワー・コードを多用したギターからうかがえるアメリカン・ロックからの影響と、ニュー・オーダーゆずりのベース・ラインやキーボードの使用からうかがえるUKポスト・ロック色とが、巧みに融合されたナンバー。表情豊かなヴォーカルが出色の出来だ。
11WHY DO I KEEP COUNTING?
ヴォーカルとコーラス・ワークを強調した作りの中で、効果的に導入されるピアノや控えめながらどっしりと構えたリズム隊など、そのバランスの取り方にセンスの良さが感じられる。プロデューサー、フラッド&アラン・モウルダーの手腕が発揮されたナンバー。
12EXITLUDE
『サムズ・タウン』の2曲目「エンタールード」と呼応する、本編のクロージング・ナンバー。見事なコーラス・ワークを聴かせて、新たな側面を見せつけている。感動的なピアノの調べとともに歌われる希望の言葉が、聴き手の心に明かりを灯してくれる。
13WHERE THE WHITE BOYS DANCE
静かなギターのアルペジオと水を打つようなピアノの音色に、メタリックなベース・ラインと地を揺るがすような力強いドラミング。それらを混ぜ合わせた不穏な空気が特色の曲で、U2などのプロデュースを手がけてきたフラッド&アラン・モウルダーによる演出の巧が味わえる。
14ALL THE PRETTY FACES
メタリックでユニークなベース・ラインが響くヘヴィな楽曲。盛り上げどころを的確に捉えた演奏と力強いヴォーカルが、聴き手を圧倒するエネルギーを放っている。2ndアルバム『サムズ・タウン』日本盤のボーナス・トラックとして収録。