ミニ・レビュー
結成20周年を迎えた彼らの12枚目のアルバム。前作から2年9ヵ月ぶり、制作に1年5ヵ月をかけた労作。スキマスイッチの大橋卓弥や植村花菜が参加した「群青」、映画『ハチミツとクローバー』の主題歌の「魔法のコトバ」などを含む全13曲。独特の言葉使いと音は彼らにしか出せない味。
ガイドコメント
およそ2年9ヵ月ぶり、12枚目となるアルバム。共同プロデューサー&アレンジャーに亀田誠治を迎え、彼ららしいひねりを効かせたギター・ポップ・サウンドが構築されている。シングル曲「群青」「魔法のコトバ」をはじめ、胸を打つ名曲が勢ぞろい。
収録曲
01僕のギター
スピッツのトレード・マークともいうべき、ざっくりとしたアコースティック・ギターで始まるアルバム『さざなみCD』のオープナー。“小さなことが/大きな光になってくように”。清い祈りのようなメロディとまっすぐな言葉が、身体中に響きわたる。
02桃
爽やかなギター・サウンドに乗せてピュアな恋を歌う、ビター・スウィートな味わいのギター・ロック・チューン。トロピカルなギターのフレーズが印象的だ。「ロビンソン」の流れを汲む、まさにスピッツらしいナンバーといえる。
03群青
バッキング・ヴォーカルに植村花菜、大橋卓弥(スキマスイッチ)を迎え、全編3声のハーモニーでまとめたポップ・チューン。アルペジオ中心の清涼感あふれるギター・アンサンブルとともに、爽やかさを届けてくれる。
04Na・de・Na・deボーイ
“ナデナデボーイ”“巻き巻き”など、ユーモラスなマサムネ語が飛び出す、アッパーなポップ・ロック・チューン。Aメロの畳み掛けるようなダブル・ヴォーカルのファルセットが耳に残る。歌詞に出てくるハングルは“アラッソ”と発音するそう。
05ルキンフォー
柔らかいメロディにコーティングされた温かさと切なさ。まさにスピッツの王道といったミディアム・チューン。サウンド・プロデュースに亀田誠治を迎えて作り上げた爽やかなバンド・サウンドに、草野のヴォーカルが優しく寄り添っている。
06不思議
目と目で通じあえる、恋のフシギ。いや、むしろ、ブキミ? “過ぎていったモロモロはもういいよ”と走り出す恋心を歌うアップ・テンポのギター・ロック・チューン。恋のトキメキがいっぱいに詰まった、スピッツ印の甘酸っぱいラヴ・ソングだ。
07点と点
タイトルも歌詞も謎解きのようなアップ・テンポのロック・チューン。歌謡曲風のマイナー・キーのメロディも、スピッツの十八番。ツアーのサポート・メンバーであるクジヒロコが奏でるキーボードのフレーズが、GSっぽい懐かしい雰囲気を醸し出している。
08P
偶然の再会で引き戻される記憶、消せなかった想い。ストレートな言葉とメロディが胸を締めつける、リズムレスのミッド・バラード。全編に流れるフェンダー・ローズのマットな音色が郷愁を誘う。耳を澄ませば、タイトルにもある“P”の電子音が。
09魔法のコトバ
映画『ハチミツとクローバー』主題歌となった31枚目シングル。シナリオを読んで書き下ろしたという「わがまま空に投げた」など、若者の奔放さを瑞々しく描いた歌詞に、草野のセンスが光る。スピッツらしい優しいメロディが心に染み入るナンバー。
10トビウオ
イントロから爆音ギターが飛び跳ねる、灼熱のロック・ナンバー。アッパーなメロディとポジティヴな詞に背中を押されて、走り出してしまいそう。まぶしい夏の日差しと抜けるような青空が浮かんでくる、スピッツのサマー・ソング。
11ネズミの進化
ブルージィなアコースティック・ギターに陽気なパーカッションやファンキーなオルガンも加わった、ぶ厚いサウンドのミッド・ロック・チューン。ネヴァー・ギヴアップの精神をネズミの進化になぞらえた、スピッツ流の応援ソング。
12漣 (さざなみ)
さざなみのようなアルペジオが心にしみわたる、珠玉のギター・ロック・チューン。鮮やかに情景が浮かんでくる詞に切ないメロディやサビの変拍子など、すべてがスピッツ・サウンド。結成20周年を記念するアルバム『さざなみCD』にふさわしいタイトル・トラックだ。
13砂漠の花
“終わりと思ってた壁も 新しい扉だった”。結成から20年の歳月を経てなお進化を続ける、スピッツらしいミッド・ロック・バラード。早くも次作への期待と新しい変化を感じさせる力強い4人の演奏に、アコースティック・ピアノが花を添える。