ミニ・レビュー
2008年初頭、初の武道館公演の大成功も記憶に新しいラッパー/シンガー・ソングライター、約1年ぶりのアルバム(通算4枚目)。直球のラブ・ソングからユーモラスな曲想まで、さらにスケールを増したSEAMOワールドに浸ることができる。もちろんヒット・シングル「Continue」や「MOTHER」も収録。
ガイドコメント
約1年ぶりとなるアルバム。母への感謝の気持ちを歌った「MOTHER」や、TVドラマ『夢をかなえるゾウ』の主題歌「Continue」などを収録。コラボ曲や大ネタを取り入れた、彼らしいエンタテインメント性にあふれている。
収録曲
01ここで会ったが運命
4枚目のアルバム『スクラップ&ビルド』のオープニング・トラック。エネルギッシュながら比較的ドライ&ライトなサウンドに、キレのよいライムが乗る。“みかん箱から武道館”“叩き上げ”というリリックからは、過去の苦労の一端がうかがえる。
02はじめの一歩
優しく包み込むようなテクノ・ポップ調サウンドが魅力の応援ソング。“信じれば夢は叶う”という一節は、シーモだからこその説得力。あえて重ねすぎずにすべらせたストリングスが、温かさを醸し出している。
03Continue
英の作曲家、E.エルガーの「威風堂々」を大胆にフィーチャーした、感動的かつ壮大なミディアム・ナンバー。“負けたら終わりじゃなくて やめたら終わりなんだよね”という、くじけそうな時に勇気をくれるリリック群が秀逸。日本テレビ系ドラマ『夢をかなえるゾウ』の主題歌に起用されたシングル。
04Kiss Kiss Kiss (feat.AZU&yukako)
ステージで数多く共演を果たし、シーモと抜群の相性の良さを見せる女性シンガー、AZUを迎えたナンバー。バラード調で歌われる伸びやかなマイナー・ソロからアップ・ビートで刻まれる明るいパートへ続く展開が心地よい。
05Kick it out
アシッド・ジャズ的なホーン使いが濃密な空気を醸し出すファンキー・ナンバー。クラブ・シーンで生き抜くために必要な“しぶとさ”をうたうシーモの声も自然と重さを増すが、どこかしらに居心地のよさや安堵感が伝わってくるのが面白い。
06やさしい風
グリコ「ポッキー・チョコレート」CFソングに起用された、爽やかでポジティヴなミッド・チューン。やさしい風を感じる軽いピアノの音色と心地良いテンポで刻まれるギター・カッティングが、明るい空模様を描いている。
07tbp
アルバム『スクラップ&ビルド』の前曲「やさしい風」のアウトロに収録されたコント調のトークに続く、絶叫インタールード。ハードなギター・サウンドをバックに、所属事務所“tbp”の連絡先をファルセットで叫ぶという異色の爆笑トラック。住所と電話番号が脳裏に焼き付けられること間違いなし。
08Girl Is Mine (feat.CRYSTAL BOY (nobodyknows+))
nobodyknows+のCRYSTAL BOYをフィーチャーしたディスコ・ナンバー。マイケル・ジャクソンとポール・マッカートニーによる同名曲よろしく、CRYSTAL BOYとによる口説き文句の掛け合いと女の子たちのキュートな合いの手のループが、盛り上がりを加速させている。
09FRIDAY NIGHT FEVER
仕事から開放される最も嬉しいひととき=“金曜の夜”をキラキラとしたラップで綴ったアッパー・チューン。ジャジィなイントロから一転、オーヴァードライヴを効かせたギター・カッティングが、疾走感あふれるビート・サウンドを展開していく。
10Walk Don't Run
ゆるめのピアノが落ち着いたイメージを与えるミディアム・トラック。せわしい朝の風景を切り取りながら、走らず落ち着いていこうというメッセージ・ソングで、やや抑え気味のトーンのフロウが絶妙に効いている。
11MOTHER
母への感謝を切々と綴り話題となったシングル。アコースティック・サウンドを主体にしたミドル・テンポの明るい楽曲は、母が傍らにいる平凡な一日をイメージさせる。誰よりも支えになってくれていると告げるサビは、沁みるものがある。
12そばに〜たいせつなひと〜
コンピレーション盤『さだまさしトリビュート さだのうた』にも収録された、さだ「たいせつなひと」のリメイク作。大切な人に対する不安な気持ちを吐露した曲で、乾いたドラムやブライトなピアノが実直でひたむきな姿を巧みに演出している。
13夏の忘れもの
真夏が過ぎて涼しくなりゆく日々の情景を切り取った一曲。温かくもどこか哀しいアコギの音色と哀愁をまとわせたヴォーカルが、メランコリックながらも心を潤す。アルバム『スクラップ&ビルド』のクロージング・トラック。