ガイドコメント
90年代の名盤として挙げられることも多い91年に発表されたプライマルの大ヒット・アルバム。本作品よりギター・ロック・サウンドに幻想的なエレクトロを取り入れ、当時の音楽シーンに大きな影響を与えた。
ミニ・レビュー
気がついてみれば、前作から3年も経っていた。アルバムごとにイギリスの音楽的時流を反映した音を展開しているが、ここではハウス転向へのキッカケとなった(7)をメインに、グルーヴ感溢れるロックンロールやコズミックなハウス・サウンドを聞かせる。3rd。
収録曲
01MOVIN' ON UP
スティーヴン・スティルスのヒット曲「愛への讃歌」をパクっ……否、リサイクルしたゴスペル風スワンプ・ロック。パーカッシヴなサウンドに、ローリング・ストーンズ作品でおなじみのジミー・ミラーを起用した成果がみられる。
02SLIP INSIDE THIS HOUSE
テキサス・サイケの雄、13thフロア・エレヴェイターズの1967年発表曲をカヴァー。蠢き波打つアシッド・サイケをアシッド・ハウスへと巧みに転換した。サイケとアシッド・ハウスに共通する熱性が図らずも浮き彫りになる好演だ。
03DON'T FIGHT IT, FEEL IT (FEATURNG DENISE JOHNSON)
彼らの「フリー」などにも参加している女性ヴォーカリスト、デニス・ジョンソンをフィーチャー。“一晩中踊ろう、ハイになろう”と歌う詞が、アシッド・ハウス・ムーヴメントの享楽を体現するダンサブルなナンバー。
04HIGHER THAN THE SUN
歌詞に登場する幻覚剤の効果を、音楽で表現したかのようなサウンドのとろけぶりが絶品。ボビーの歌唱はイマイチながら、それが結果的には酩酊感を加速させる結果に。チルアウト系なようであり、ダンサブルでもあるアレンジが奥深い。
05INNER FLIGHT
1960年代アシッド・ロックが、薬物によるトリップのスイッチでありBGMであったように、90年代アシッド・ハウスもまた同様だ。自己の“内宇宙”を知る旅のBGMとなる、アンビエントな音空間が広がるエレクトロ・インスト・ナンバー。
06COME TOGETHER
ビートルズにも同名曲があるが、“集まれ、ひとつになろう”と呼びかける歌詞は、むしろ「愛こそはすべて」の精神に近いアシッド・ハウス・ナンバー。シンプルな言葉の連なりがアシッド・ハウスの理念を端的に表現する。
07LOADED
前作収録曲「アイム・ルージング・モア・ザン・アイル・エヴァー・ハヴ」が、アンディ・ウェザーオールの助力で進化。ローリング・ストーンズの「悪魔を憐れむ歌」に、アシッド・ハウスのビートを加えたような趣。
08DAMAGED
ボビーのへべれけた歌唱も愛おしく感じるバラード・ナンバー。ジミー・ミラーがプロデュースを手がけた、土臭くソウルフルなサウンドが、一時期のストーンズを思わせる。ギターもピアノも情感たっぷりだ。
09I'M COMIN' DOWN
サックスやパーカーションを使ったジャズ・サウンドとトリップ感旺盛なエレクトロ・サウンドが同居するチルアウト・ナンバー。夜通し歌い踊りすぎて、さすがの不夜城も消灯寸前。心地良い眠気を誘い出してくれる。
10HIGHER THAN THE SUN (FEATURING JAH WOBBLE)
11SHINE LIKE STARS
寝息のように寄せては返すアンビエント・サウンドに、エコーの効いた別色のサウンドが被さるシンフォニックな前半。後半はタブラなどを使った東洋的なエッセンスを振りかけたアンビエントなハウス・サウンドを展開。