ミニ・レビュー
2007年で結成15周年を迎えるベテラン・ポップ・パンク・トリオの、古巣トゥース&ネイル・レーベル復帰アルバム。ハードに疾走する中にもポップな感覚を巧みに織り込むセンスはさすがベテランといった感じで、確かな手応えを伝えてくれる充実作となっている。
ガイドコメント
ポップ・パンク・シーンに欠かせない3人組、エム・エックス・ピー・エックス(MXPX)の2007年7月発表のアルバム。バンド結成15周年を迎えての作品とは思えないほどの疾走感が気持ち良い。キャリアとともに増していく彼らの勢いは刺激的だ。
収録曲
01SECRET WEAPON
ハイテンション、ハイスピードで飛ばし、“自分自身が秘密兵器”と訴える、アルバム『シークレット・ウェポン』オープニングを飾るタイトル・トラック。自分を見失わずに未来がもたらすものをその手に掴もうという、ポジティヴなメッセージが心に刺さる。
02SHUT IT DOWN
インターネットに象徴されるテクノロジーは本当に人間を幸福にするのかと疑問を呈し、ヴァーチャルな世界に埋没するなと警鐘を鳴らすナンバー。ハードにドライヴするサウンドの中で、MXPXらしいポップなスパイスが効いている。
03HERE'S TO THE LIFE
自分の居場所は自分で作らなければいけない、自分を見つめ直す時間が必要だという詞の一節が、日々の暮らしに追われる現代人の胸に突き刺さる。パンキッシュかつポップなサウンドが、爽快な気分をもたらしてくれる一曲だ。
04TOP OF THE CHARTS
MXPXが体験した実話を基に、メジャー・レーベルに対する不満を皮肉を込めてぶちまけたナンバー。とはいえ、真剣に怒っているのではなく、遊び感覚で書いた曲とのことで、サウンドやヴォーカルもリラックスした表情を聴かせる。
05PUNK RAWK CELEBRITY
既存の権威や商業ロックへの反抗・反発心から生まれたはずのパンクが、いつの間にかメジャーになり、セレブとしてもてはやされる現実を冷笑したナンバー。ホーンを取り入れたアレンジや凝った曲構成が、新鮮に響いてくる。
06CONTENTION
15分で書き上げたという、イントロからエンディングまで一気呵成に突っ走る高速ハードコア・チューン。イラクやアフガニスタンに対するブッシュ政権の姿勢を批判しストレートに反戦を訴える歌詞に、アメリカの悲痛さが感じられる。
07ANGELS
天使が寄り添い、見守っていてくれる。そんな平穏な時が流れる世界を捜し求めるんだと、パラダイスやプロミスト・ランドへの憧れがMXPX流に描かれている。パンキッシュでありながら、どこか穏やかさを感じさせるナンバーだ。
08DROWNING
自分を取り巻く環境や世界が音を立てて崩れていく……そんな強迫観念から生じる不安な心情が綴られている。ネガティヴなイメージの歌詞とは裏腹に、ヴォーカルやサウンドには突き抜けたポップさがあり、爽快な聴き心地を与えてくれる。
09CHOP SHOP
バンドの出身地ワシントン州で実際に起きた、斧を凶器に使った殺人事件を題材に書かれた曲。ショッキングな出来事に対する怒り、そして同じようなことが日常的に繰り返されることへの憤りが込められたハードコア・チューン。
10YOU'RE ON FIRE
悪い方向に進んでいた過去を悔い償い、陽の当たる人生を歩むことの素晴らしさや大切さを、1人の少年を主人公に描いたナンバー。シャープなギター・リフがポジティヴな歌詞のイメージとマッチした、ポップ・パンク・チューン。
11BASS SO LOW
インターネットのデジタル信号を通して、世界中の見知らぬ人々と結びつく現代人をテーマに描かれた曲。メロディックなパンク・サウンドの中、タイトルが示すようにベースの音が低く、そして重々しく響いて、全体を引き締めている。
12SAD SAD SONG
人の好意を理解せず、自分の不運を他人のせいにする……そんな友人に愛想を尽かし、突き放す情景が淡々と描かれている。スーパードラッグのジョン・デイヴィスがピアノとコーラスでゲスト参加した、タイトルどおりどこかもの悲しいナンバー。
13NEVER BETTER THAN NOW
今が一番幸せ、人生の最高潮にいるんだと感じながら生きていく。それが結果として幸福へとつながるんだと訴える曲。MXPXらしいポジティヴ思考のメッセージが、疾走感あふれるポップ・パンク・サウンドとともに心に響いてくる。
14BITING THE BULLET (IS BAD FOR BUSINESS)
多くの人たちに何度も裏切られ、騙され続けてきた……そんな人生を大きく変えたいと願う少女の歌。MXPXにしては落ち着きのある、マイルドなタッチのサウンドで、いい意味で大人になった彼らを感じさせてくれる。
15NOT NOTHING
決して良好な関係ではない知り合いについて書かれた曲。知ってる人間を敵視したり、嫌悪感を抱くのは相手が悪いからなのか、それとも自分の側に問題があるのか。人間界の難しさについて、ついつい考えさせられるパンク・チューン。
16TIGHTLY WOUND
人生はいいことばかりじゃないが、悪いことばかりでもない。山あり谷ありだからこそ途中でくじけたりせずに歩みを進めていこうという歌。グッド・シャーロットのベンジーがバック・ヴォーカルで参加した、ポップなロック・チューンだ。
17THE HOO-HA JANGLE
胡散臭い儲け話や、必要性のないものを売りつけようとする奴らが獲物を探して徘徊する現代社会。そんな連中の無駄話を聞くな、騙されるなと訴えるポップ・パンク。自分にとって何が必要かを見極めることが大事だと諭してくれている。
18BITING THE BULLET (IS BAD FOR BUSINESS)
アルバム『シークレット・ウェポン』の日本盤のみのボーナス・トラック。歯を食いしばって銃弾に耐えるという賢くないやり方より、嫌だとハッキリ伝える強い意志を持つことが、報われない日々から脱出する一歩だと教えてくれる曲。
仕様
CDエクストラ内容:シークレット・ウェポン (ビデオ)