ミニ・レビュー
7作目の限定特別盤で、注目はボーナス・ディスクの[2]。イケイケ化した(4)(5)はクラブ向けだが、新曲の(1)〜(3)は近未来的ヘヴィ・チューンだし、PCなどで最近のライヴも2曲観られるし、豪華デジパックだからファンは見つけたら即ゲットすべし。
ガイドコメント
KORNの7作目となるアルバム。エレクトロニクスを多用し、華やかでキャッチーなテイストが満載。メロディアスなヴォーカル・ナンバーも増え、バラエティ豊かな作品に仕上がっている。
収録曲
01TWISTED TRANSISTOR
02POLITICS
プログラミングを大胆に施したサウンドには、ニューウェイヴやインダストリアルなどジョナサンの趣向がこれまで以上にストレートに打ち出されている。ある種ダンサブルともいえるグルーヴ感が新鮮に響くナンバーだ。
03HYPOCRITES
印象的なリフが繰り返される、どんよりとした重苦しい曲。だが、手数の多いドラムが生み出す躍動感と飛び交うスペイシーな電子音がよいアクセントとなっており、起伏のある音像に仕上がっている。
04SOUVENIR
重いリフとグルーヴでじわじわと攻めるスローな楽曲。エレクトロによるアレンジが効いており、ニューウェイヴ風の退廃と妖しさが漂う。インダストリアル調のかなりダンサブルな間奏パートも新鮮な、実験性に富んだ1曲。
0510 OR A 2-WAY
ダブ調のゆるい横ノリと縦ノリのビートを交錯させた、ダンス・ミュージックへのアプローチが興味深い。本作で「自分たちを再創造したかった」というのも納得がいく、新境地に挑んだ意欲的な1曲。
06THROW ME AWAY
2005年に発表された7thアルバム収録曲で、おどろおどろしいサウンドに乗せたジョナサンの呪術めいたヴォーカルが、ひときわ不気味に感じられるメタル・ナンバー。絶望の淵から叫ぶようなリリックがダークなサウンドと融合。聴き手の心を激しく揺さぶるKORNの真髄が遺憾なく発揮された楽曲。
07LOVE SONG
額面どおりのストレートな愛ではなく愛と死をテーマにしたアンチ・ラブ・ソング。押し寄せる不穏なグルーヴと狂気をはらんだ美しい旋律が幻想の花を妖しく咲かせる、KORN流ゴシックの決定版。
08OPEN UP
痛々しいまでの内省を吐露した歌とゴシック・テイストで彩られた陰鬱でメランコリックなメロディが、じわじわと心の奥底に沈みこんでくる。ハミングやラストに響く木琴のような音など、個性的なアレンジも興味深い。
09COMING UNDONE
3拍子のリズムと韻を踏んだ詞の繰り返しが軍隊の行進を思わせる、勇壮で冷淡とした感触が切迫感を醸し出している。破滅寸前のギリギリの不安定な精神状態をリアルに伝えるヘヴィ・チューンだ。
10GETTING OFF
デス・メタル風の野太い雄叫びや地鳴りのごときヘヴィなギターに、非常にノリのよいビートや躍動的なグルーヴが絶妙に絡み合う。KORNの一筋縄ではいかない音楽性が遺憾なく発揮された個性的な楽曲だ。
11LIAR
12FOR NO ONE
調子のいいラップと跳ねるようなリズムをフィーチャーしつつもロックのダイナミズムを備えた、かつてのミクスチャー・サウンドに近い雰囲気が味わえる楽曲。反抗する若者の代弁者的存在であり続けようとする彼らの意志が感じられる歌詞にも注目だ。
13SEEN IT ALL
独特なひっかかりのあるメロディと、終盤の重厚なサウンドに寄り添うように奏でられるピアノやストリングスが印象的。デリケートで感情を抑制しつつも強烈なインパクトを残すジョナサンの表現力に驚きを禁じえない。
14TEARJERKER
新境地を開拓した『シー・ユー・オン・ジ・アザー・サイド』中、最も異彩を放つKORN風オペラ。冷ややかな中に美しく繊細なメロディと艶のある歌がゆらめきながら描かれる孤独感と切なさに覆われた内省的な世界は、ナイン・インチ・ネイルズを彷彿とさせる。
15TOO LATE I'M DEAD
ささやくようなヴォーカルが耳を惹く不気味な静寂から一転、サビでは荒々しい歌唱とヘヴィなグルーヴがのた打ち回る。妖しげなコーラスやキテレツなリフ、神経を逆なでするような電子音がよじれながら、次第にカオスへと誘うクレイジーなナンバー。