ガイドコメント
切実に音楽と向き合い続け、持てる情熱のすべてを叩き込んだという、2010年12月発表のアルバム。映画『Mr.Children/Split The Difference』のエンディング曲「Forever」ほか、全曲初CD化。
収録曲
01I
サイケな雰囲気を持つミディアム・ロック・チューン。アコギのカッティングとドラムによる不穏なイントロから、“もう いいでしょう!?”と桜井の絞り出すような歌声で曲の雰囲気を一気に決定づける。“I”に向けて放つ自嘲的な内容な歌詞が印象的。
02擬態
夏を感じさせる爽やかなアルペジオで幕を開けるポップ・ナンバー。鮮やかなサウンドに若干の湿度を帯びたメロディ・ラインを乗せたミスチルならではの一曲。目や耳じゃないところを使ってさまざまに“擬態”したものの本質を見抜くんだ、というメッセージ・ソングか。
03HOWL
力強いビートに合わせ“HOWL(遠吠え)”するようなシャウトが印象的な、シンプルなロック。輝いて見えたモノがガラス玉だと気付いても“夢見なくちゃつまんねぇ 淡々と死んでいきたくはない”という、がなるような歌唱が胸を打つ。微かなに鳴るオルガンが効果的。
04I'm talking about Lovin'
片思いの恋を綴った爽やかで甘酸っぱいラヴ・ソング。“君は運命の人”と自らに言い聞かせながらも、あと一歩を踏み出せない切ない恋模様を描き上げる。“Oh... I'm talking about Lovin”と歌うサビのコーラス・ワークが印象的だ。
05365日
愛しい君への想いを書き連ねた“心に綴るラブレター”のようなミディアム・バラード。心温まるメロディと小林武史のストリングス・アレンジが見事に合わさった、Mr.Chirdlenの真骨頂ともいえる一曲だ。NTT東日本・NTT西日本CMソング。
06ロックンロールは生きている
意表をつくテクノ調のイントロで幕を開けるロック・チューン。窮屈で鞭打たれるような時代に対する怒りを“ロックンロール”と表現し、“闇を蹴っ飛ばせ”と鼓舞するように歌う。目まぐるしい展開に合わせた、仰々しくも感じられるアレンジがピタリとハマっている。
07ロザリータ
イントロのフルートの音色が印象的なミディアム・バラード。“さよならなんて言わないで”と去っていった恋人を想い、うなされるようにささやく“ロザリータ”の歌唱が胸を打つ。昭和を感じさせるような官能的な雰囲気が全体を覆う、懐かしくも新境地といえる一曲。
08蒼
ピアノを中心にしたサウンドをバックに、桜井が情感たっぷりに歌い上げるバラード。自らの使命あるいは夢にひたむきに立ち向かうも“ただただ自分の身の丈を知らされ”る悲しみを描き出す。4分弱と比較的短いが、シンプルなアレンジながらラストの口笛が深い余韻を残す。
09fanfare
アニメ映画『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』主題歌。まさに“ファンファーレ”風に幕を開ける、ストリングスやホーンを駆使した壮大なロックだ。“ヨウソロ”“デカい帆をはれ”と映画を意識したフレーズを多用しながら、力強く旅立ちを歌う。
10ハル
鮮やかなサウンドに乗せて、優しく頬をなでる“春”の風を描くミッド。誰もいない道に合図を告げる信号機に対し“愛想などない でも律儀で 誰かに似てる気がした”と綴る豊かな感性、そして語りかけるように優しくも力強い息吹を感じるメロディは桜井の独壇場だ。
11Prelude
爽やかなギターのバッキングで幕を開ける色彩豊かなロック。“光の射す方へ”“英雄(=HERO)”といった詞や散りばめられたメロディからは、彼らの過去作を想起させるところも。過去を振り返ることが新しい未来への“プレリュード(前奏曲)”とするのは性急か。
12Forever
映画『Mr.Chirdlen/Split The Difference』エンディング・テーマ。ピアノを基調とした穏やかなサウンドにのせて、終わった恋を悲しくもどこか温かく振り返るミッド・バラード。“Forever”に対して日本語で韻を踏む詞が秀逸。