ミニ・レビュー
結成10周年、移籍第1弾となる5枚目のアルバム。UKIの舌足らずでコケティッシュなヴォーカルをメインに、ほど良く弾けたバンド・サウンドとともに勢いよく一気に聴かせる。大胆にエレクトロニクスを取り入れた曲もあり、変化にも富んでいる。
ガイドコメント
ロック・バンド、SHAKALABBITSの6枚目となるアルバム。パンキッシュでキュートな歌を聴かせるヴォーカルを中心に、これまで試してきた音楽要素を集大成させたような仕上がり。メンバーの強い意思がうかがえるパワフルな作品となっている。
収録曲
[Disc 1]
01sheep glide carnival
夢の中で繰り広げられる、不思議なサーカス団の出し物の様子を歌ったナンバー。全編にブラスを配したにぎやかなパーティ・チューンだが、夜明けとともにサーカスは終演。「いつかまた遊んでね」というラストの一節がどこか寂しげだ。
02Walk Over the Rainbow
SHAKALABBITSらしいノリノリのギター・ロック・ナンバー。直接的な表現は少ないが、歌詞のいたるところからポジティヴなメッセージが伝わってくる。疾走感に満ちたギター・サウンドも、前に進む勇気を後押ししてくれる。
03クランベリーハウス
ファンタジックかつシュールな歌詞を謎解きしていく楽しみも味わえそうなポップ・ナンバー。ノイジーなエレキ・ギターが耳を引くが、随所に配されたアコースティック・ギターの音色がアクセントとして実に効果的だ。
04Synchrotron Rec Machine
わずか2分で駆け抜ける、疾走感たっぷりのロック・ナンバー。パンキッシュなUKIのハイトーン・ヴォイスとノリノリのバンド・サウンドに、思わずこぶしを振り挙げてしまいそう。唐突に終わるエンディングも痛快だ。
05時空マスター
自分の過去へ行くことができる「時空マスター」たちを歌ったナンバー。嫌な思い出を回避し、やり直し放題の彼らの姿を描きながら、その実、悲喜入り混じってこその人生だというメッセージも伝わってくる。
06モンゴルフィエの手紙
気球に乗って家々の屋根を見下ろしながら、さまざなことに想いを巡らす主人公の心情を歌ったナンバー。広がりのある爽やかなサウンドとは裏腹の、不安や迷いを含んだナイーヴかつ内省的な歌詞が切ない。
07グルーチョマルクス公園
アコースティック・ギターを基調としたスカ・ビートで幕を開けるナンバー。ピエロと不思議な女性との出会いを描いた、童話のような歌詞に思わず引き込まれてしまう。セクシーなUKIのヴォーカルも新鮮だ。
08Circadian Bird
人生の分岐点において大切な、前へ踏み出す勇気を歌ったナンバー。バンドの高い演奏力に裏打ちされた、グルーヴ感のあるダイナミックなサウンドが聴きどころ。ロック・シンガー然としたUKIのヴォーカルも負けじと応戦している。
09JAILHOUSE inn
「狭苦しい天井」というフレーズが象徴するように、どこか閉塞感のある歌詞が印象的なミディアム・ナンバー。スリリングなギター・サウンドが歌詞の世界観を見事に表現しており、エモーショナルなUKIのヴォーカルも聴き応えがある。
10COLONY DINNER
あらゆるものを捨てて日々のしがらみから解放されようと歌う扇情的なナンバー。歌詞に登場する“理不尽なマスター”“無茶振りオーダー”といった言葉に共感してしまうサラリーマンたちも多いのでは?
11The Pitchfork Diaries
ロックンローラーを夢見る羊飼いの少女の姿を生き生きと描いた、カントリー・パンク風のナンバー。“Pitchfork(=干し草用くま手)”をギター代わりにかき鳴らす、少女の姿が目に浮かぶよう。バンジョーを配したサウンドも、歌詞の世界観にぴったりだ。
12ハブランサス
リズム隊とギターの絡みがかっこいいグルーヴィなナンバー。ダークでデカダン色の濃い歌詞の中で、サビの「どうなっても生きてやれ」というフレーズが、一筋の光りのようにまぶしい。タイトルのハブランサスとは夏に咲く花の名前。
13My Planet
短い単語をちりばめた歌詞が、万華鏡のようにさまざまな映像を浮かび上がらせるミディアム・ナンバー。UKIのヴォーカルも一歩引いた感じで、聴き手に曲の解釈を委ねているかのよう。聴けば聴くほどに、魅力が増してきそうな一曲だ。
14Tweak
“負のスパイラル”によってつまづいても、転がり続けていくと歌うナンバー。カラリと明るいUKIのヴォーカルとドライヴ感あふれるサウンドが溶け合い、ポジティヴなエネルギーを与えてくれる応援歌だ。
[Disc 2]〈DVD〉〈Music Clip〉
01Walk Over the Rainbow
02Circadian Bird