ミニ・レビュー
メルボルン出身の4人組による3年ぶりとなるセカンド・アルバム。豪快さと繊細さを併せ持つサウンドの端々から70年代UKロックの香りが漂うが、単なる焼き直しにはとどまらないバンドとしての個性・存在感は前作以上。成長の跡を感じる快作だ。★
ガイドコメント
2003年のデビュー・アルバム『ゲット・ボーン』が全世界で300万枚を売り上げる空前の大ブレイクを果たしたロックンロール・バンド、ジェットの約3年ぶりとなる2ndアルバム。本作でもパワフルな演奏を聴かせてくれる。
収録曲
01L'ESPRIT D'ESCALIER
圧倒的な音圧で聴き手を興奮のるつぼへと導く、アルバム『シャイン・オン』のオープニングを飾る23秒の序曲。短時間のなかで、存在感と高いセンスを一瞬にして見せつけるサウンド・メイクは、彼らの実力と勢いを証明するのに十分だといえる。
02HOLIDAY
終始勢いを失わない挑発的なヴォーカルに彼らの自信が垣間見られるロック・チューン。キャッチーなギター・リフは耳にこびりつくような中毒性を持ち、がっしりしたリズム隊には隙がない。彼らのポピュラリティが実感できる高いサウンド・センスが魅力だ。
03PUT YOUR MONEY WHERE YOUR MOUTH IS
2ndアルバム『シャイン・オン』からの1stシングル・カットは、ジェットが得意とするメリハリをつけたロック・サウンドが炸裂。タイトにまとめられたトラディショナルで潔いロックンロールは、時代に流されない芯の強さと斬新さが感じられる。
04BRING IT ON BACK
安定したリズム隊がしっかりと曲を支え、フィードバック・ギターが神秘的に響きわたる。徐々に音の厚みが増していきサビで一気に弾けるという展開は、オーソドックスではあるが、シンプルながらも心弾ませるサウンド・メイクには、ジェットの高い実力が感じられる。
05THAT'S ALL LIES
アップ・テンポなドラムに扇情的なギター・リフ。パーティ・ナンバーのようなノリも垣間見られるが、余計なものを削ぎ落としたタイトなサウンドは、まさにジェット印のロックンロール。「やけくそ」な詞を披露するヴォーカルには、往年のロックンロール魂もうかがえる。
06KINGS HORSES
スロー・テンポな楽曲の中で光るのは、ただ騒がしいだけの衝動的なロック・バンドではない、安定した実力と音楽センスが実感できる個々の演奏の巧さだ。犯した過ちを悔やむという詞が、心に熱く響いてやまないナンバーだ。
07SHINE ON
ピアノをバックに静かな空間の中で歌われるのは、前向きに歩き続けることを呼びかけた優しく力強いメッセージ。シンプルな構成ながらも、演奏能力の高さゆえ、まったく間延びすることがない。ハイレベルなロックを展開するアルバム・タイトル曲だ。
08COME ON COME ON
ゆったりとしたドラムに導かれて威風堂々と歌い上げるヴォーカルに、なにごとにも動じない彼らの信念がみてとれる。ノスタルジーを抱合したサウンドだが、メリハリの効いたサウンド・プロデュースと迷いのない演奏によって、清々しささえ漂う、懐の広さを感じさせるナンバー。
09STAND UP
ハード・ロックにまで通じるようなダイナミックなサウンドに、ブルース風の味わい深さが融合したロックンロール・ナンバー。4人編成のシンプルなバンド・スタイルだが、高い演奏技術とメリハリのあるサウンド・プロダクションで、他とは一線を画すタイトな魅力が解き放たれている。
10RIP IT UP
変則的なドラムが特徴的なロック・ナンバー。これぞジェットといわんばかりの切れ味鋭いギター・リフが全開。70年代ロックを彷彿とさせる勢いまかせの“ワルそうな”ヴォーカルの威圧感には、ただただ圧倒される。
11SKIN AND BONES
出身のオーストラリアの広大な土地を思わせる牧歌的な香りを漂わせながらも、ブリティッシュゆずりの情緒的なギター・ソロが入ってきたりと、ジェットの本質がチラチラと顔を見せる。ダイナミックなサウンド展開が魅力のミディアム・ロック・チューン。
12SHINY MAGAZINE
アコースティック・ギターにスライド風ギターまで登場するという、ジェットのイメージにはあまりそぐわないやわらかい雰囲気が特色。それでもしっかりと聴かせてしまうのが彼らの凄さ。ジェットのアナザー・ワールドが堪能できるロック・ナンバーだ。
13ELEANOR
流麗なギターのアルペジオがリードするバラード・ナンバー。ベースやドラムを極限まで抑え込み、弾き語り風に仕上げたこの曲には、新たな世界へ踏み入ろうとするジェットの姿勢が表われているかのよう。ここでのヴォーカルは己に語りかけるかのように真摯に響いている。
14ALL YOU HAVE TO DO
『シャイン・オン』の冒頭曲「レスプリ・デスカリエ」の続編曲。“ロックンロール・リヴァイヴァル”の申し子と謳われる彼ら渾身のバラード。アルバム・ラストを飾るにふさわしく、ジャズの要素を取り込んだ華々しい楽曲で、ゴスペル風アレンジなど彼らの新たな可能性を感じさせる。
15HOLD ON
2nd『シャイン・オン』の日本盤ボーナス・トラック。美しいアコースティック・ギターの音色や丁寧に導入されるギター・ソロなど、本編に入っていてもいいほどの仕上がり。「頑張ろう」というメッセージを歌う親しげなヴォーカルも出色の出来だ。