ミニ・レビュー
2003年に衝撃的なデビューを飾ったNY出身の3ピース・バンドのセカンド。3年間メンバーそれぞれの活動が盛んだったが、今作ではそれがいい方向に作用し、前作を完全に脱皮した内容となった。マテリアルやサウンドに広がりが出ながらも、芯の部分は不変だ。
ガイドコメント
2003年の『フィーヴァー・トゥ・テル』が大ヒットし注目を浴びたガレージ・ロック・バンドの3年ぶりとなる2ndアルバム。紅一点のカレンOの破天荒な魅力もそのままに、クールなサウンドを聴かせてくれる。
収録曲
01GOLD LION
アコギや電子音を積極的に使ったヘヴィでエキセントリックなポップ・ソング。従来のガレージ・パンク的世界に音楽的な幅広さを加えた一曲だが、曲調からはラヴ&ロケッツ「語りつくされたこと」を思い描いてしまうところも。
02WAY OUT
2ndアルバムにおけるメロディックな要素の強まりを象徴した、激しくもキャッチーなナンバー。ギターとドラムスが機械的にリズムを刻み続ける序盤では抑えられていた感情が、カオティックな終盤で一気に爆発する。
03FANCY
レッド・ツェッペリン風の爆音アンサンブルが展開される、情緒不安定な趣のヘヴィ・ロック・ナンバー。トライバルなドラミング、重量感あるギター・リフ、叫びとささやき声を演じ分けた歌唱が、楽曲に奇異な個性を順次加える。
04PHENOMENA
重厚なロック・アンサンブルによるスタイリッシュなダンサブル・トラック。サビのリフレインが、曲題もよく似たL.L.クールJ「フェノミナン」を思わせるように、ヒップホップへの傾倒を強く感じさせる新展開サウンドだ。
05HONEYBEAR
モータウン・ポップ、ディスコ、ガレージ・パンクにロシア民謡らしきものまで混ぜ込んだダンサブル・ナンバー。キテレツな要素満載のトリッキーな曲構成を、あくまでキャッチーに仕上げてみせたアート感覚がさすが。
06CHEATED HEARTS
初期XTCからフランツ・フェルディナンドへと至る、エキセントリックでひねくれたポップ・ソングの流れに連なるキャッチーな曲。前作における「マップス」を、よりカラフルにしたような雰囲気を持った失恋ソングだ。
07DUDLEY
クリアなギターのアルペジオで始まる、冷ややかな雰囲気のギター・ロック・ナンバー。マザーグースの子守唄「ハッシュ・リトル・ベイビー」をなぞったような歌メロだが、歌詞では男に翻弄された女の不満が述べられている。
08MYSTERIES
多様化したバンド・サウンドを象徴するカウパンク/パンカビリー調ナンバー。序盤では恋人への嫉妬がやんわりと勝気に歌われるが、終盤は情念がドロドロと渦巻く手に負えない展開に。女性の怖さを的確に体現した曲。
09THE SWEETS
曲題とは裏腹に、恋人をじわじわと問い詰め、断罪するような歌詞。フォーキーなアコースティック・サウンドをバックにした感傷的な歌唱が、最後にはPJハーヴェイ風の感情的なものへと変貌。その二面性の魅力たるや!
10WARRIOR
アマチュア時代にはフォーキーな弾き語りスタイルだった、カレンの原点も垣間見えるアシッド・フォーク・ナンバー。途中、テンションが急上昇する魅力的な展開が、アコースティック・パートの淋しさを引き立てている。
11TURN INTO
往年のガール・ポップを思わせるシンプルなメロディを、サイケデリックなサウンドでコーティングした甘美な傑作。アコースティック・サウンドの巧みな取り入れ方に、音楽面での進化の跡がみられる。
12デジャ・ヴ- DノJタ VU -
デビュー作『フィーヴァー・トゥ・テル』でのガレージ・パンク路線に近い趣の攻撃的ナンバー。カレンの感情表現豊かな歌唱と重低音バンド・サウンドの競演は、非様式的なヘヴィ・メタルとも解釈可能な興趣を演出している。
仕様
エンハンストCD内容:ゴールド・ライオン (ビデオ)