ミニ・レビュー
ソロ・シングルをまとめた本作。各曲がひとつの物語になっていて、12話のラブ・ストーリーを聴いているようだ。ただ、パターンにはまりがちな詞が少し退屈かも。アイドルとしてではなく、ミュージシャンとして成長した姿を期待したいところだ。
ガイドコメント
藤井フミヤのソロ・デビュー後のシングルを集めたコンプリート・ベスト。こんなにシングルが出ていたとは。チェッカーズはもう遠い昔のことなのだった。初回のみステッカー封入。
収録曲
01TRUE LOVE
93年発表の1stソロ・シングル。フジテレビ系ドラマ『あすなろ白書』主題歌となり、200万枚を超える大ヒットを記録。アコースティック・ギターをフィーチャーした爽やかなバラードで、前向きな歌詞の内容から結婚披露宴ソングの定番にもなった。フミヤの決意表明ともいえる強いメッセージ性と、繊細な表現力が見事にマッチした楽曲だ。
02女神 (エロス)
94年発表の2ndシングル。作詞はフミヤ自身、作曲はMr.Childrenの桜井和寿が担当。ディスコティックな16ビートにオルガンが絡むダンサブルなサウンドが特徴。洋楽クラブ系ミュージックと歌謡曲の絶妙な折衷感覚が面白い。フミヤ特有のセクシーなヴォーカリゼーションを前面に押し出したワイルドな一曲。
03エンジェル
1stアルバムの表題曲となった94年発表の3rdシングル。作曲は山弦などの活動で知られるギタリスト、小倉博和。包容力のある優しいバラードで、ビートルズのストリングス・アレンジを思わせる編曲が白眉。壮大なスケールで描かれたサウンドに乗るフミヤのヴォーカルは、まっすぐに大空に伸びていくようなすがすがしさがある。
04DAYS
94年に発売された通算4枚目のシングルで、作詞・作曲をフミヤ自身が手掛けたミドル・バラード。ブルージィな匂いをふりまくギターの音色が印象的な、ロッカ・バラード風のサウンドが特徴。歌詞は骨っぽい内容で、過ぎ去った日々と来るべき未来の双方に視点を注ぐ、フミヤの完成された美学が表現されている。
05タイムマシーン
筒美京平が作曲を手掛けた、95年発表のフミヤ5枚目のシングル曲。ドリーミーな雰囲気が漂う極上のポップ・チューンで、エヴァーグリーンな輝きを放つグッド・メロディが耳に残る好楽曲。楽しげなフミヤのヴォーカル、そしてポップでいながらもロックンロールのテイストを盛り込んだ奥深いサウンド・メイキングが聴きどころ。
06ハートブレイク
TBS系ドラマ『パパ サバイバル』の主題歌としてヒットを記録した、95年発表のフミヤ6枚目のシングル。作曲に布袋寅泰を起用し、三連符を基調とした50's風のロッカ・バラードを展開。男の強さと弱さを描き出した楽曲で、雄々しい曲調に合わせてフミヤのヴォーカルもワイルドに。布袋のメロディアスな旋律美も聴きどころだ。
07GET UP BOY
95年発表のフミヤの7枚目のシングル。作詞はフミヤ自身、作曲は弟の藤井尚之が担当。親しみやすいメロディとドライヴ感あふれるベース・ラインが耳に残る痛快なロックンロールだ。藤井兄弟が手掛けたソングライティングだけに、かつてのチェッカーズ時代を想起させる部分も。F-BLOOD結成の布石となった曲としても興味深い。
08GIRL FRIEND
96年発表の通算8枚目のシングル。透明度の高いネオアコ的サウンドのなかで、センシティヴに揺れるメロディが心地いい。作曲を手掛けたのはレベッカやフェビアンに在籍した古賀森男。古賀の優れたポップ感覚が存分に表現され、フミヤのウェットな声質との相乗効果により楽曲としての完成度はきわめて高い。フミヤ指折りの名曲。
09Another Orion
自らが主演したTBS系ドラマ『硝子のかけらたち』の主題歌となり、ミリオン・セールスを記録した96年の大ヒット曲。夜空・星座をモチーフにしたバラードで、スケールの大きなフミヤの歌唱と、清涼感を残しつつ曲全体を盛り上げる効果的なアレンジが特徴。優しさを伝える歌詞とピアノを中心としたすっきりとしたサウンドが秀逸だ。
10Snow Crystal
フミヤ自身が作詞・作曲を手掛けたクリスマス・ラヴ・ソング。96年発表の通算10枚目のシングルで、ミドル・テンポの心温まるポップ・ソング。雪の舞う街を連想させる浮遊感のあるメロディと、聖夜を思わせる鐘の音、シルキーなストリングスなど、クリスマスを彩るにふさわしいアレンジが施されている。歌詞は切なくも温かい内容。
11DO NOT
97年発表の通算11枚目のシングル。作曲にはSHERBETSのギタリスト、水政創史郎を起用し、美しく幻想的なロックに取り組んだ。スローからミドルに転じるサビの部分では、フミヤのファルセットが楽曲のサイケな魅力を際立たせる。UKロックに通じる、先の読めないメロディも光彩を放っている。フジテレビ系ドラマ『ミセスシンデレラ』の主題歌。
12Go the Destance
97年発表、通算12枚目のシングル。ディズニー映画『ヘラクレス』のテーマ・ソングに起用されたバラード。バラード曲の典型ともいえるきらびやかなシンセ音と、スネア・ドラムの深いアクセントが印象的な壮大な楽曲。歌い手としての実力をあますところなく披露するフミヤのヴォーカルが魅力的だ。荘厳な輝きを放つ一曲。