ガイドコメント
退廃美をたたえた独自のサウンドを武器に90年代のイギリスで最も成功したバンドのひとつとなったスウェードのベスト・アルバム。シングル・ナンバーを全てコンパイルしたファン必携の1枚だ。
収録曲
01BEAUTIFUL ONES
冒頭のギター・アルペジオが印象的な、スウェードのポップ・センスが全開のロック・ナンバー。時間を持て余し、退廃的な生活を繰り返す若者を「beautiful ones(=華麗なる者たち)」と表現することにスウェード独特のニヒリズムを感じることができる。
02ANIMAL NITRATE
ブレッド・アンダーソンの艶のあるヴォーカル、それに絡みつくようなギター・フレーズが妖艶さを醸し出すグラム・ロック・ナンバー。家庭内の虐待を、オブラートに包むことなく、リアルに歌うという衝撃的な内容だ。
03TRASH
抜群のメロディ・センス、皮肉めいた歌詞、スウェードの魅力が凝縮されたグラム・ポップ・ナンバー。軽快なメロディに反し、「でも僕等はクズ」という隠遁とした詞を乗せているのは、彼らならではのポップ・センスといえよう。
04METAL MICKEY
「metal mickey」という一見アンバランスなタイトルがユニークな、野心的な女性をテーマにしたロック・ナンバー。「彼女は魂はおろか、自我のためなら体だって売る」というフレーズからは、ブレッド・アンダーソンの価値基準がうかがえて興味深い。
05SO YOUNG
1stアルバムのオープニングを飾る、初期スウェードの代表曲のひとつ。サビ後のゆったりとしたピアノから再びサビへと展開するドラマチックな流れは、聴く者の期待を裏切らない。若さゆえの危うさとみずみずしさであふれた傑作。
06THE WILD ONES
ギターとヴォーカルで静かに幕を開ける官能的なバラード。届かない彼女への想いを吐露する切ないヴォーカルが、聴く者の涙を誘う。シンプルなバンド構成で演奏され、メンバーの個性が存分に引き立った名曲。
07OBSESSIONS
スウェードのずば抜けたポップ・センスが炸裂したキラー・トラック。専売特許のスリリングで刺激的な内容ではなく、彼女に対する気持ちをブレッド・アンダーソンのユニークな感性で歌った、愛であふれた名曲。
08FILMSTAR
映画スターの映画スター然とした日常を歌うロック・ナンバー。主人公が映画スター本人ではなく、それをクールな(というか冷ややかな)視点で客観的に見ている人、という設定が興味深い。大きなリズムの中での縦横無尽なギター・プレイは必聴。
09CAN'T GET ENOUGH
シンプルな8ビートで展開されるスウェード流パンク・ナンバー。乾いた音のギター・フレーズと電子音のマッチングが絶妙。加えてサビの女性コーラスが曲全体にゴージャス感を与え、スウェード独自の妖艶な世界観を見事に表現している。
10EVERYTHING WILL FLOW
セックスやドラッグ、そしてロック。退廃的な生活を送る若者が、ふとした瞬間に人生のはかなさを感じてしまう、センチメンタルなナンバー。マイナーからメジャーへと展開する歌謡曲的なサウンドは、涙を誘うほど感動的だ。
11STAY TOGETHER
フル・ヴァージョンは8分にも及ぶ壮大なバラード。「さあ、一緒に過ごそう それとも僕と心中する?」といった危うげな2者のリアルな描写やドラマティックな展開は、スウェードの真骨頂といえる。
12LOVE THE WAY YOU LOVE
13THE DROWNERS
「兄との近親同性愛」という、背筋がゾクっとするようなテーマ。スロー気味の8ビートに乗せた妖艶な歌声やメロディの美しさが絶妙。鋭利なサウンドのギターが曲全体を引き締め、ドラマティックなグラム・ロックを完成させている。
14NEW GENERATION
全編を通して浮遊感のあるギターが存在感を示し、ホーン・セクションが、都会の夜の切ないムードをより鮮やかに演出している。落ち着いたムードが漂う、ファンの間でも人気の高いラブ・ソング。
15LAZY
ブレッド・アンダーソンの視点で、イギリス労働者階級の暗部を直接的に歌っている。ただ事実のみを忠実に歌うことで、強いメッセージ性がともなっている。メジャー感のある抜群なメロディ・センスで哀愁を誘う名曲。
16SHE'S IN FASHION
都会生活という舞台を華麗に渡り歩く女性がテーマとなったポップなナンバー。「彼女はこれ以上無いほど似たもの」という詞に象徴されるように、ポップさの中にも毒気やエロティックなヴォーカルをしのばせるのは、やはりスウェードならでは。
17ATTITUDE
18ELECTRICITY
世界で途絶えることのないさまざまな問題すべて、それさえも「愛」であると歌いきるポップ・ナンバー。シンプルなAメロから大きく展開するサビのメロディは、曲のテーマである「愛の大きさ」に負けない広がりを持っている。
19WE ARE THE PIGS
スウェードのスタイリッシュなポップ・センスは陰を潜めているが、壮大なアレンジが施されたメロディが秀逸。タイトル通り、自虐的な内容なのだが、エンディングのブレッド・アンダーソンのシャウトは力強く感動的で、「希望」を抱かせてくれるナンバー。
20POSITIVITY
日曜の朝の幸福感をそのままパッケージしたかのような、優しさであふれたミディアム・ナンバー。ひたすら「夜」を歌ってきた彼らが、時を隔て「朝は君のためにやってくる」と笑顔で歌う姿は、長年のファンにはたまらない。
21SATURDAY NIGHT
恋人との土曜の夜を歌った珠玉のバラード・ナンバー。イントロのギターのアルペジオで一気に曲の世界に引き込まれる。「彼女を幸せにすることならなんでも」という言葉の危うさが、楽曲の切なさに拍車をかけている。