ミニ・レビュー
UKガラージ界から飛び出し、大ヒットをとばした男性歌手のセカンド。やはり痛感させられるのは、そのなめらかにして艶のある歌声。これさえあれば、そりゃ優れたソウル盤になってしまうではないか。前線のビートも無理なく、彼の輝きを助ける。★
ガイドコメント
デビュー・アルバム『スリッカー・ザン・ユア・アヴェレイジ』が全世界で800万枚以上のセールスを記録したクレイグ・デヴィッド。時代の寵児となった彼の待望の2ndアルバム。
収録曲
01SLICHER THAN YOUR A VERAGE
2ndアルバムのタイトル・チューン。ギター・リフのループにキーボード、スクラッチ、さらにゲストのTRELLによるラップなど、さまざまな要素を採用したR&Bで、“2ステップ”だけではない幅広さを見せている、インパクトの大きなリード・トラックだ。
02WHAT'S YOUR FLAVA?
2ndアルバム『スリッカー・ザン・ユア・アヴェレイジ』の1stシングル・カット曲は、ヴォコーダー使いや粘着性のあるサウンドなど、サイバー感覚にあふれる斬新なファンク・チューン。ラップ風から甘いファルセットまで披露するヴォーカル・スキルにも注目。
03FAST CARS
速い車のように“乗りこなすのが難しい存在だ”と歌うダンス・ポップス。マイケル・ジャクソンの「スピード・デーモン」を想起させるような、スリリングな展開が魅力。ハイスピードで走り去っていく車のSEで締めるアウトロもムードを盛り上げる。
04HIDDEN AGENDA
軽やかなスパニッシュ・ギターをフィーチャーしたポップ感覚あふれるR&Bチューン。初夏の爽やかな風を思わせるサウンドももちろんだが、力みのない自然体のヴォーカルが実に心地よく響く、グッド・ミュージックだ。
05EENIE MEENIE
ガラージにヒップホップ・テイストを融合させた、新感覚のUKガラージ・ナンバー。高速ラップとコーラス・ヴァースを繰り返す展開は目新しいものではないが、メサイア・ボリカルによるアグレッシヴなラップ・パートなどでみせる衝撃度はかなりのものだ。
06YOU DON'T MISS YOUR WATER ('TIL THE WELL RUNS DRY)
“井戸の水が枯れるまで、水の大切さはわからない”と愛する人の大切さを歌った、スタンダードなR&Bチューン。純粋にUSマナーのR&Bにのっとったバラードで、涌き出るような愛情が感じられるヴォーカルが秀逸。
07RISE & FALL
スティングの「シェイプ・オブ・マイ・ハート」をサンプリングし、さらにスティング本人をフィーチャーしたというサプライズ・ソング。タイトルよろしく、華やかにみえるアーティストの浮き沈みを、哀愁あるサウンドと懐の深いデュエットで披露している。
08PERSONAL
ジェイミー・フォックス「T SHIRT AND PANTIES」を用いた、オリエンタルな彩りのアレンジが特色のスロー・バラード。“親密な関係になろう”と包み込むように歌う、クレイグの恍惚な表情が見えてくるようなメロウ・チューンだ。
09HANDS UP IN THE AIR
クラブで手を挙げるようなアゲアゲなシチュエーションをテーマにしたミディアムR&Bだが、サウンドはどこかセンチメンタルなムード。緩急をつけたヴァースの構成がスムースに展開し、リラックスしたヴォーカルが映えるナンバー。
102 STEPS BACK
“僕が1歩進むと君は2歩後退する”を意味するタイトルと彼の音楽的出自といわれる2ステップをかけた、シャレの利いたナンバー。スタンダードでソフトな2ステップ・サウンドが展開するなか、浸透力のあるヴォーカルが流れていく。
11SPANISH
DUKE ONEのラップをフィーチャーした、スパニッシュ・ギターとハンド・クラップがベースとなったミディアムR&Bチューン。ニュージャックスウィング風のアプローチもみせる、色香漂うヴォーカルが魅力的な夜へと誘惑していくようだ。
12WHAT'S CHANGED
ケイティ・ホームズのヴォーカルをフィーチャーしたミディアムR&Bチューン。“どうして態度が変わってしまったかを教えて”と懇願するケイティと、それに申し訳なさそうに応えるクレイグのヴォーカルが、切ないサウンドをさらにやるせなくさせる。
13WORLD FILLED WITH LOVE
アルバム『スリッカー・ザン・ユア・アヴェレイジ』本編のラスト。当日ニューヨークにて体験した“9.11”の衝撃をテーマに、“愛を見つけ出すことが大事なんだ”というメッセージを、爽やかなライト・ポップスに乗せて歌っている。
14FOUR TIMES A LADY
仕様
※〈CDエクストラ〉内容:ホワッツ・ユア・フレイヴァ (プロモーション・ヴィデオ)