ミニ・レビュー
ヘヴィ・ロック不毛の地という人もいるが、実はスキッドボーイなどのハードコアも活躍したアイオアの9人組。ヴォーカルやベースに少しKOЯNの影響を見せつつも、一触即発のインパクトにかけたようなパッションが凄まじい。これは虐げられた力の爆発だ。
ガイドコメント
猟奇趣味的激烈音楽集団のデビュー・アルバムの再発だが、「フレイム・リム・ナーサリー」「ピューリティ」の2曲が削られ、ボーナス・トラック4曲とブックレットが新たに追加された。
収録曲
01742617000027
ライヴのオープニングSEとして轟かせ、観客を大興奮させたインスト・ナンバー。サンプリングされたさまざまなトーンの声は、これから始まる奇天烈変態轟音ワールドへの警告とも歓迎ともとれる。
02(SIC)
鬼ブラスト・ビートと激パーカッション、ド派手なサンプリグが乱舞するイントロから度肝をぬかれる。抗う間もなく体が反応してしまう、抜群の瞬発力をもったキラー・チューン。ライヴでも威力を発揮する楽曲で、ファンの間でも人気が高い。
03EYELESS
不穏な旋律が響きわたるイントロからゾクゾクするファストなナンバー。ぶちぎれたヴォイス、手数の多いドラム、上下動の激しいギター、ヒステリックなサンプリングなどが一体となった音塊は、この手の音に慣れたキッズを再び覚醒させた。
04WAIT AND BLEED
カルト的人気を誇る覆面9人組メタル・ラウド・バンドが放つ、ぶっ飛びチューン。「憎しみが込み上げてくる〜」というAメロは非常にスローで、流血の香り漂うシャウトの間にメロディアスな雰囲気をたたえている。
05SURFACING
全パートが競いあうように次々と前へ前へと出てくる、この上なくラウドでやかましいナンバー。内面から吐き出される制御不能の憎しみや怒りで激しくつき動かされる、ライヴの定番曲だ。
06SPIT IT OUT
爆音集団スリップノットの、ヘヴィかつ疾走感あふれるナンバー。ヴォーカル、コリーが吐き出す挑発的な歌詞と攻撃的なギター・リフが、聴く者の脳裏に焼きつく、彼らの代表曲のひとつ。
07TATTERED & TORN
『スリップノット』の中ではわりと地味な楽曲ではあるが、クレイジーなサンプリング音、残虐なリフ、地の底から響くようなシャウトなど、全パートが引き裂かれてボロボロになった心を表現しているよう。渦巻く情念の濃さでは随一だ。
08ME INSIDE
突如として切りこんでくるテクニカルなギター・フレーズやファニーなノイズが、どこか壊れた印象を醸し出すカオティックなナンバー。混沌とした激音の中で響きわたるクリーン・ヴォイスが良いアクセントになっている。
09LIBERATE
高速ラップとラウドな音塊が凄まじいパワーで襲いかかるド迫力のナンバーで、ライヴでも必ず混乱に近い激モッシュを巻き起こす。冷静に聴くとリズム・チェンジが激しく複雑だが、最後まで一気に聴かせる気迫に満ちている。
10PROSTHETICS
ドラム缶を叩いているような独特なパーカッションの音とエフェクト処理した浮遊感のあるヴォーカルを軸に、グルーヴィに攻めつつもエンディングは怒涛のドラミングと絶叫で締める。実験的でありながらもスリップノットらしさが出ている1曲。
11NO LIFE
腐った社会に対する怒りをぶちまけた攻撃的なラップと躍動感のあるトライバルなリズムを軸に、これでもかと畳みかける息もつかせないスリリングな展開。危機感を煽るような性急さから、ギリギリの精神状態が伝わってくる。
12DILUTED
早口でまくしたてられる、自己の醜い部分までさらけ出した歌と粗暴な激音が矢継ぎ早に畳み掛けてくるファストなナンバー。殺伐とした雰囲気の中で生々しい痛々しさを表現した詞がリアルに心に突き刺さる。
13ONLY ONE
メタル、ハードコア由来の叩きつけるような縦ノリのリズムとヒップホップ風の横ノリのグルーヴが絶妙に絡んだ起伏のある展開。メンバー全員の多岐にわたるバックグラウンドを垣間見ることができるナンバー。
14SCISSORS
静と動の大きなうねりが混沌としたドラマを描く8分弱に及ぶ大曲。後半のインプロヴィゼーションにも舌を巻くが、コリィの全身全霊の悲痛な叫びの迫力は絶大。当時の続々と登場していたKORNフォロワーとの格の違いをみせつけたナンバー。
15GET THIS
連射される弾丸ブラスト・ビートと高速リフ、叫びまくるヴォーカルなど、隅から隅まで破壊衝動に満ちている。感情のままなりふりかまわずぶっ飛ばす、“猪突猛進型”荒くれハードコア・パンク・チューン。
16INTERLOPER
野太い咆哮と凶暴なサウンドがうなるデス・メタル風ナンバー。多彩なサンプリング音の乱舞や、ブレイクやキメをきちんと配置するなど、重さや激しさだけではない、アレンジや展開の妙が楽しめる。
17DESPISE
無名時代から楽曲の完成度の高さを証明する、デビュー前のデモ音源。冒頭の掛け声から圧倒的テンションで迫るヴォーカルが肝で、「ディスバイズ」と連呼するサビが強烈に耳に残る。