ミニ・レビュー
ナイアガラ・レーベル創立20周年で、カタログ第1号“伝説の名盤”が今よみがえる。伝説のデモテープ、伝説の解散コンサートライヴのボーナス・トラックで“伝説神話”がさらに強化された。達郎ポップスの原石がゴロンと投げ出された感じがする。
収録曲
01SHOW
1975年にリリースされたアルバム『SONGS』の冒頭曲。グルーヴのある演奏にのせて「素敵なShowの始まりだよ」と歌われるように、ライヴのオープニング用として書かれた高揚感あふれる軽快なナンバー。
02DOWN TOWN
1975年発表の『ソングス』に収録された彼らの代表曲。ポップなメロディ・ラインとファンク色の強いリズムに、さわやかな歌声が魅力の一曲。いつ聴いても、色褪せず新鮮に心に響くメロディが、気分を晴れやかにしてくれる。
03蜃気楼の街
住み慣れた街(東京)から出ていきたいという脱出願望がテーマ。緻密に練られたアンサンブルが大貫の繊細なヴォーカルをバック・アップする。当時の彼女の心像がゆったりと歌われる上質なポップ・ナンバー。
04風の世界
大貫妙子がシュールなラブ・ソングを思い描いて書いた曲で、「さみしがりや私を尋ねて来たあなたは風」と歌われる。お洒落なコード進行と器楽曲のようなメロディ・ラインを持ち、カッティングやソロなどギターも全面的に活躍。
05ためいきばかり
リード・ギター村松邦男の作品。ギタリストらしい熟考したリフやソロが随所で聴くことができ、ハイ・トーンのヴォーカルも担当。スティーリー・ダン風の硬質なサウンドだが、詞は情けないダメ男の世界が描かれている。
06いつも通り
大貫妙子が歌手シリータ・ライト(スティーヴィー・ワンダー元夫人)に影響を受けて書いた曲。都会の孤独感をテーマに、躍動感に満ちたストリングスやサックスの音、透明感あふれるヴォーカルが響く洗練されたポップス。
07すてきなメロディー
山下達郎と大貫妙子のデュエット・ナンバーで、作曲も2人の共作。タイトなリズムにホンキー・トンク風のピアノが絡む、楽しさあふれるナンバー。間奏のア・カペラ・コーラスのベース・パートは大瀧詠一で、ヤギの鳴き真似は山下。
08今日はなんだか
「今日はなんだか 少しはましな」と希望が膨らんでくる様子を歌った曲。勢いのあるバンド演奏にハードなブラスがダビングされたソウルっぽいナンバーだが、のちに山下達郎はヴォーカルの未熟さが気になって仕方がないと語っている。
09雨は手のひらにいっぱい
山下達郎がアルバム『SONGS』のベスト・テイクだと自負する曲。雨の中で感傷的にたたずむ姿が描かれ、メンバーの演奏に加え流麗なストリングスがサウンドに彩りを添えている。ヴォーカルも情感たっぷりで艶やかさに満ちている。
10過ぎ去りし日々“60's Dream”
1960年代のニューヨーク・ポップ・シーンをイメージした、アコースティック感に満ちたスロー・ナンバー。歌詞には“魔法を信じるの?”“今日は生きよう”などの1960年代洋楽の邦題からの引用がちりばめられている。
11SUGAR
プロデューサーである大瀧詠一の趣味が多大に発揮された、ラテン・フレイヴァーたっぷりの“お祭りナンバー”。大瀧や後に「ナイアガラ音頭」をリリースする布谷文夫らも奇声で参加。編集をわざと未完成のままにするなど、遊び心満載の楽曲。
12SHOW (デモ)
1974年4月、ニッポン放送のスタジオで録音されたデモ・テープで、エンジニアは大瀧詠一。ここで聴かれるテイクは当時ステージで演奏していたアレンジのまま。山下達郎いわく、ヴォーカルは正規ヴァージョンより出来がいいとか。
13夏の終りに (デモ)
夏の終わりをテーマにした山下達郎の最初のオリジナル作品。複雑なコーラスはステージでも再現していたというから恐れ入る。歌詞中の「めくるめく」や「つるべおとし」など古風な表現が大瀧詠一は気に入っていたという。
14指切り (デモ)
1972年の大瀧詠一のソロ・アルバム『大滝詠一』収録曲のカヴァーで、オリジナルよりテンポを上げ、カラフルでリズミカルなポップスに仕立て直されている。松本隆が作詞した“行き先のない疲れた恋愛感情”を山下達郎がパワフルな歌声で表現している。
15パレード (デモ)
大瀧詠一、伊藤銀次、山下達郎からなる『ナイアガラ・トライアングルVOL.1』に収録されたナンバーのオリジナル・アレンジによる演奏。山下がシングルを意識して一晩で書き上げた曲で、カーニヴァルの楽しさが伝わってくる。
16すてきなメロディー (ライヴ)
1976年3月、シュガー・ベイブ解散コンサートからのライヴ・テイク。スタジオ・テイク同様に山下達郎と大貫妙子のデュエットが楽しめるポップな曲。ライヴらしくギター・プレーも饒舌な音色を聴かせてくれる。
17愛は幻 (ライヴ)
大貫妙子のファースト・アルバム『グレイ・スカイズ』収録曲で、1976年4月のシュガー・ベイブ解散コンサートからのライヴ音源。夏の海と街を対比させた歌詞と、ハードなギター・ソロやスピード感あふれるアレンジが冴える。
18今日はなんだか (ライヴ)
シュガー・ベイブ解散コンサートからの音源。シンプルなバンド編成のみでのライヴ演奏は、ワイルドでロック的なサウンドを感じさせる。山下達郎のヴォーカルもスタジオ録音よりもはるかに力強く響く。