ミニ・レビュー
アンディ・スターマー、奥田民生らいつもの面々に加え、ジョン・スペンサーら超豪華作家陣が楽曲を提供。誰の曲であれPUFFYでしかない世界へと塗り替えてみせる情感希薄な個性的歌唱の見事さは、もはやブルース・リーの名言「考えるな、水になれ」の領域に。
ガイドコメント
PUFFYの10周年を記念した久々のオリジナル・アルバム。亜美、由美のソロ・ヴォーカル楽曲も含む、ヴォリュームたっぷりの内容。作家やプロデューサー陣も、洋邦を股にかける豪華な面々が集結。
収録曲
01Radio Tokyo
スローで温かいアメリカン・ロック。ギターの音が歪んでなくても、PUFFYの頼もしいヴォーカルだけで充分、ロックしている。美しいメロディの脇を固めるストリングス、シンセ、8部音符を刻むピアノも温かく包容力たっぷりだ。
02ナイスバディ
思わず口ずさみたくなるイントロで始まり、彼女たちのキュートなヴォーカルが右から左から聴こえてくる爽快なポップ・ナンバー。嬉しくなる瞬間をそのまま歌にしたような、心の底から元気になる力を秘めている。
03Tokyo I'm On My Way
04Shall We Dance?
PUFFYの明るさとアメリカ人のユーモアが化学反応し、大爆発した感じのポップなアメリカン・ロック・ナンバー。作曲はアヴリル・ラヴィーンのプロデューサーとしても著名なブッチ・ウォーカーで、ナックの「マイ・シャローナ」を想起させるギター・リフも魅力的。
05恋のエチュード
タイトルの「恋のエチュード」は、曲中では「愚か者のエチュード」となっているところに注目! ベース・ラインに腰が落ち着けば、と思うが、パフィーとやっぱり合うなあ、と思わせる、どこから切ってもスピッツ・サウンドの草野正宗作品。
06女マシンガン
エルヴィス・プレスリーの脇を固めていたと思わせる、ロカビリー・スタイルのロックンロール。ギター・ウルフのセイジが強力にサポートした「飾らないロック」で、アメリカでも人気を誇るPUFFYに、いっそう「ハク」をつけたナンバー。
07Sunday in the park
奥田民生の色が濃く出ている、ミディアム・ナンバー。スタッカートが心地よい歌メロと揺らめくようなアコースティック・ギターが彩るサウンドに乗るヴォーカルは、どこまでも自然体で、どこまでもリラックス。
08モグラライク
作詞・曲は奥田民生。すっとぼけた楽曲の世界はいつも通りだが、その中でクールなギターがいななき、禅問答的な人生の哲学が見えたりする。ただのフシギちゃんでは終わらない、これぞパンクスの王道ソング。
09missing you baby
サウンドもヴォーカルもシルヴィ・バルタンの「あなたのとりこ」風。それもそのはず、ジェリー・フィッシュのアンディ・スターマーの作品。パフィーの得意技である“脱力”は、いつしか“癒し”に変身したのだ、と感じさせるナンバー。
10早春物語
ギターだらけのシンプルなリフが印象的なナンバー。アメリカでは10代に間違われるというPUFFYだが、若々しい歌声を聴けば、そう思われる要素がたっぷり。デジタルっぽい生意気なロックが彼女たちを10代のアイドルに仕立て上げているようだ。
11モグラ
マイナーなブルース風メロディに、ふたりのキュートなユニゾンのミスマッチ感がたまらない。ダウナーにつまびかれるギターが隠し味となって、シブ可愛い仕上がりとなっている。このリズムはクセになりそう。作詞・作曲は甲本ヒロト。
12らくだの国
吉村由美のソロ・ナンバー。歌詞とコード進行がひたすら暗く進むが、ヴォーカルがのると暗くならず、不思議な雰囲気が漂っている。PUFFYの特色の「明るさ」が薄いアレンジは、プロデュースした斉藤和義の世界観といえる。
13Security Blanket
大貫亜美のソロ曲は、ハイ・スタンダードの横山健に「横山サウンドとすぐわかるような曲にしてほしい」と作曲・プロデュースを依頼した、切なさあふれるハード・ロック・ナンバー。大貫亜美自身が手掛けた英詞の発音の良さとヴォーカルの力強さには脱帽。
14はじまりのうた
軽快なリズムに有無をいわさぬポップ・サウンドが響き、彼女たちのパワー溢れるヴォーカルが“あと一歩”を踏み出すきっかけとなる応援ソング。劇場版『ポケットモンスター』の主題歌として使われており、歌を聴くだけで映像が浮かんでくるようだ。
15Basket Case
グリーン・デイの代表曲をカヴァー。メロディが合唱曲の「グリーン・グリーン」のような曲だが、ヴォーカルがその“臭さ”を見事に消している。PUFFYはいつまでも年をとらない、とつくづく感じさせるパワフルなナンバー。