ミニ・レビュー
前作から8年、解散〜ジーヴァスを経て完全復帰したクリスピアン・ミルズ率いるクーラ・シェイカーの3作目。力強いリズムと唸りを上げるファズ・ギター、妖し気なコーラスそして至高のメロによる極彩色のサイケデリアは、目眩がするほど素晴らしい。
ガイドコメント
2006年に完全復活したイギリスのロック・バンド、クーラ・シェイカーの3rdアルバム。切れ味の鋭いギター・サウンドが冴えわたるキャッチーなナンバーを多数収録。中毒性の高い一枚だ。
収録曲
01OUT ON THE HIGHWAY
クリスピアン・ミルズの艶やかな歌声と埃っぽい音色のエレクトリック・ギターが冴えわたるサザン・ロック・チューン。前作より8年ぶりとなるフル・アルバム『ストレンジフォーク』のオープニング曲だけあって、気合の入ったタイトな演奏を聴かせてくれる。
02SECOND SIGHT
ハモンド・オルガンの透明で力強い音色をフィーチャーしたサイケデリック・ロック・チューン。深いリヴァーブがかけられたクリスピアン・ミルズのヴォーカルもあいまって、サウンドは完全に60年代ロック風な仕上がり。
03DIE FOR LOVE
“愛の為にならば死ねる”という強烈な覚悟が何度も繰り返し歌い上げられる究極のラヴ・ソング。絹のようになめらかでゴージャスな音色のストリングスが楽曲を感動的に盛り上げる、メロディアスで情熱的なロッカ・バラードだ。
04GREAT DICTATOR (OF THE FREE WORLD)
利己的な権力者たちをクリスピアン・ミルズがコミカルな歌声で茶化しまくった、シニカルな社会批評ソング。突如としてドゥー・ワップ風のコーラス・ワークが飛び出すなど、底抜けに明るいサウンドなのも嫌味満点で楽しい。
05STRANGEFOLK
ハープシコードの繊細な音色に乗せて、コンピューター・ヴォイスが『ストレンジフォーク』の中核をなすコンセプトを読み上げる、一風変わった楽曲。スピリチュアルでSFチックな世界観が、いかにもクーラ・シェイカーらしい。
06SONG OF LOVE/NARAYANA
クーラ・シェイカー得意のオリエンタルなメロディ・ラインが全面的に展開されるロックンロール・ナンバー。タイトルにもなっているマントラの大合唱は迫力満点。プロディジーのリアム・ハウレットがソングライティングに参加している。
07SHADOWLANDS
広大な荒野を歩き続ける孤独な男が心に抱く、儚い“希望”をクリスピアン・ミルズが切々と歌い上げた、メランコリックなピアノ・バラード。スロー・テンポながらも、横ノリの強靭なグルーヴがビートとともにしっかりと刻み込まれている。
08FOOL THAT I AM
『ラバー・ソウル』期のビートルズを思わせる、憂鬱な雰囲気が印象的なフォーク・ロック・ナンバー。ドラムスが左チャンネルに、メイン・ヴォーカルが右チャンネルに置かれるなど、ステレオ定位の振り方までもが60年代風だ。
09HURRICANE SEASON
まさに“ハリケーン”そのものの混沌としたバンド・アンサンブルが展開されるフォーク・ロック・ナンバー。字余りの歌詞を吐き捨てるように叩きつけるクリスピアン・ミルズの歌唱法には、ボブ・ディランからの影響が顕著に現れている。
10OL' JACK TAR
ビートルズの「フライング」を歌モノにアレンジしたかのようなサイケデリック・ロック・チューン。ハーモニウムのコード弾きによって放たれる“ゆらぎ”を前面に押し出すことによって、空の上を漂っているような浮遊感を作り出している。
116FT DOWN BLUES
「墓場まであと6フィート」のところにいる“生ける屍”が抱く自責の念と、死への誘惑を描いたヘヴィなブルース。足を引きずっているかのようなクリスピアンの気だるい歌声からは、今にも倒れそうな疲労感と絶望が伝わってくる。
12DR KITT
ハープとフルートのクラシカルな響きに導かれるように、“奇跡の人”と呼ばれる「ドクター・キット」の物語が綴られる、幻想的なフォーク・ロック・ナンバー。多重録音によって作られた、重厚で美しいコーラス・ワークも特筆もの。
13SUPER CB OPERATOR
ひたすらに退屈な生活からの脱出願望が歌い上げられた、刹那の快楽を放つロックンロール・チューン。破れかぶれなほどにハイテンションなバンド・アンサンブルとナンセンスな歌詞の絡みがワイルド極まりない!
14WANNABE FAMOUS
「ただ有名になりたいだけ!」という空虚な野望を抱える男の心を描いた、ポップなロック・ナンバー。アコースティック・ギターの歯切れ良いコード・ストロークを前面に押し出した軽快なサウンドは、後期ジーヴァズを彷彿とさせる。