ミニ・レビュー
声優としても活躍する女性シンガーの、前作から1年4ヵ月ぶりとなる10枚目のアルバム。勢いのあるロック・ナンバーを中心に、ただ盛り上がれるというだけでなく、艶っぽさや大人っぽさを感じさせる楽曲が並ぶ。ドリカムのカヴァー「笑顔の行方」も、オリジナル曲とはまた違った味わいで新鮮に聴こえる。
ガイドコメント
前作『ROCKBOUND NEIGHBORS』以来約1年4ヵ月ぶり、2014年4月16日リリースの10thアルバム。声優アーティスト界のみならずJ-POPシーンのトップランナーとして活躍する水樹奈々の、10枚目という節目にふさわしい渾身作。
収録曲
01VIRGIN CODE
水樹奈々の王道といえるスケールの大きな高速ハード・ロック・チューン。スペースオペラ的な雄大な幕開けから、未来への決意を綴った歌詞を力強く歌い上げる。“隈”としても知られるSHiNのカオティックなドラムも聴きもの。
02GUILTY
バキバキのエレクトロとギターを中心としたサウンドに、オリエンタルなアクセントを効果的に取り込んだアッパーなダンス・チューン。“もっとGUILTY味あわせてあげる”など、セクシーなフレーズが並ぶ歌詞と挑発的な歌唱に悩殺必至。
03アパッショナート
自身が作詞曲を手がけたドラマティックなメタル・チューン。本格メタル・サウンドにバグパイプやスパニッシュ・ギター、アルパなど世界各地の民族楽器を配し、多国籍なテイストに仕上げているのが特長。胸に眠らせた未来への熱い想いを煽る歌詞に心が震える。
04笑顔の行方
DREAMS COME TRUEが90年に発表したヒット曲のカヴァー。ラテン風味のパーカッシヴなビートを軸に、カラフルでアッパーなテイストに仕立て上げている。原曲からは大きく離れたアレンジながら、圧倒的な歌唱力と表現力で違和感のないものに。
05アンティークナハトムジーク
“おとぎ話”に紛れ込んだホラー要素を徹底的に煮詰めたようなスリリングなナンバー。作編曲は古川貴浩が手がけ、5拍子、3拍子、4拍子が組み合わさった複雑なアレンジはストーリー性を引き立てている。中世な世界観を見事に表現するヴォーカルも見事。
06Fun Fun★People
林部直樹の軽快かつ細やかなギターのカッティングで幕を開けるファンク・チューン。ブリブリなブラスも映える超ベタベタなサウンドに合わせてか、“いくよテンション バリバリじゃん”など、どこか懐かしさも感じるようなダサめな歌詞がユニーク。
07FATE
温かなアコースティック・ギターとピアノの音色が春っぽいミディアム・バラード。大切な人との“運命(=FATE)”を描いた物語を、伸びやかな声で歌い上げる。彼女の代表作といえるキャラ名のタイトルから、感謝の気持ちを汲み取るのは深読みのしすぎか。
08Vitalization (Aufwachen Form)
TVアニメ『戦姫絶唱シンフォギアG』オープニング・テーマの29thシングルで、アニメで使用されたヴァージョン。ハード・ロックに緊張感あるストリングス、エレクトロの要素も取り入れ、“シンフォニックロック”の真骨頂といえるサウンドスケープを構築。
09哀愁トワイライト
ジャズのテイストを前面に押し出した大人っぽいロック・ナンバー。歌謡曲のような切なさ満点のメロディもサウンドにハマっており、傷つけあいながらも離れられない二人の物語を色っぽく表現している。宇佐美宏のギター・ソロも色気ムンムン。
10セツナキャパシティー
スケールの大きなストリングスを取り入れつつ、ガール・ポップに大胆に寄せたキラキラとしたアレンジが新鮮なポップ・チューン。胸がキュンとするような甘酸っぱい恋物語を、キュートな声色で歌い上げる表現力の豊かさはさすがのひと言。
11Ladyspiker
中野領太が作編曲を手がけたシンプルな王道ロック・ナンバー。“ムルい世界”を撃ち抜き、次の時代へと躊躇なく飛び込めという力強いメッセージが印象的で、ロック・スター然とした風格たっぷりの歌いまわしはワイルドかつちょっぴりキュート。
12Rock you baby!
“Rock you baby!”という煽りから始まるイントロをはじめ、超ライヴ対応型のカラっと突き抜けたポップ・ロック・ナンバー。シンプルなアレンジゆえに、手堅く平均点を取るよりもノーガードで攻めていけと背中を押すメッセージが強く響く。
13Million Ways=One Destination
前山田健一と伊藤賢治の共作によるスマホ向けRPG『乖離性ミリオンアーサー』主題歌は、ハード・ロック×ストリングスで雄大なスケールと迫力のサウンドを作り出したナンバー。もがきながら光を目指して進んでいく強い決意を、まっすぐな歌声で表現する。
14僕らの未来
数多くの水樹作品を手がける“矢吹俊郎節”が色濃く反映されたロック・チューン。未来へ向けて背中を押す力強いナンバーだが、“奪うだけじゃ道じゃない”“余計な荷物捨ててみよう”など、絶妙な力の抜き方を提示するさじ加減が見事。
15愛の星-two hearts-
映画『宇宙戦艦ヤマト2199』第七章エンディング・テーマのアレンジ・ヴァージョン。バックは上松美香が演奏するアルパのみの一発録りで録音されており、二人の親密な空気を感じることができる温かな仕上がり。どこまでも透きとおる歌声は感動的だ。