ミニ・レビュー
無防備な下校途中の男子小学生がオトナになったら、めちゃオトコ前になっていてフツウに驚いた。打ち込みや弾き語りを用いて、コクのある一風変わったダンス・アレンジを確立させたところは評価に値する。加えてナンセンスすれすれのやんちゃぶり、それこそが彼らのチャーム。
ガイドコメント
「アサガキタ」ほか先行シングル3曲を含む2ndアルバム。超高速ラップが炸裂するパワー全開の作品で、自己のパロディ「エクスタシー温泉芸者」も楽しめる。ケツメイシのRYOがゲスト参加。
収録曲
01SUSHI BOMBER
ここは外国の街角に立つ日本食屋か、勘違いハリウッド映画監督による日本の場面か……。和楽器をリミックスして、ゆったりとした空間を表現する異色のヒップホップ。文集の巻頭言のようなイメージなのだろう。ヴァラエティ豊かなアルバムのタイトル曲らしい出来で、何を予感させるような調子のままエンディングを迎える。
02ガンバリスギDEナイト
いろんなシーンで頑張っている人への応援ソング。頑張ることなど忘れたかのように扱われている現代の若者だが、アルファはきちんと見て、きちんと叫んでくれる。高速ラップに乗せ、2時間睡眠で空回りしている奴を、そこまで頑張ればOKだと後押ししてくれる。テクノとラップの融合という、実にアルファらしいナンバー。
03PULSAR (feat.RYO from ケツメイシ)
ケツメイシのRYOが参加しているせいか、いつものアルファとはちょいと違う。ゆっくりと、パルス音を表現したようなイントロを終わると、唐突に高速ラップ。しかも歌詞が聴き取れないほどのスピード。たまに耳に飛び込んでくる言葉がカッコよく聴こえたりして、一緒に「パルサー!」と叫びたくなる。途中の気怠さもたまらない。
04SOS
アルファの魅力である高電圧サウンドがのっけから響きまくり、カッコ良さを追求する形となったナンバー。ヴォコーダーを多用してテクノに寄った曲調で、やおいっぽいセクシーな発声が妙にぴったりきている。薄れる希望に「このままじゃ明日はない」と助けを求める声に共鳴したり、手を差し伸べたくなる人も多いはずだ。
05PICASSO
女の子が好きそうなキュートなイントロ。なんだか常夏……レゲエ系ポップス風の雰囲気だと思って聴いていると、唐突にテクノっぽいロボット・ヴォイスが乗っかってくる、びっくり箱のような楽しい構成だ。青空と雲、水と嵐といったナチュラルな素材をちりばめた歌詞が印象的で、このカラフルなイメージが“ピカソ”ということなのかもしれない。
06OH ZAPPA MEN
超高速すぎず、ラップ本来の言葉遊びがしっかりと耳に飛び込んでくる。アルファとしてはかなりノーマルな曲調だが、途中で女性ヴォイスを加味するなど遊び心は忘れていない。森羅万象をテーマにしているようで、かめばかむほど味わい深くなる感じが楽しい。先行シングル「SPEED STAR」のカップリング曲。
07ALIEN26 (feat.真田星人 from MICADELIC)
地球外生命体が不時着してパニックに陥るエイリアンの姿を、面白おかしくラップで表現した作品だ。ゲスト・ミュージシャンとして参加したのは、MICADELICの真田星人。「ピコピコチカチカズズドン」「センサービンビンキャッチ」といった歌詞が、それだけで鋭い個性を放っている。元気になれる一曲。
08SPEED STAR
2004年第1弾シングル。エンジンをブンブンふかして、ギアをトップに入れた走りが心地よい。ファンの間では、アルファのアンセム、アルファのスタンダードとして高い評価を得ている人気のナンバー。トリップ感あふれるテイスト、エレディスコ調のファンキーさも生かされていて、心に響いてくる。
09ECSTASY ONSEN GEISHA
DJタサカとのコラボレーションによる、アルファの記念すべきメジャー・デビュー曲「エクスタシー温泉」をセルフ・パロディ。ジャパニーズ・ヒップホップ新時代の幕開けを感じさせる出来栄えとなっている「アイ・アム・ドーパミン」の連呼に、聴いてる方もドーパミン出まくり。ちょいダサ系の歌詞が笑わせてくれるナンバーだ。
10COOKIE (feat.TWINKLE from 洛陽船)
さまざまなシーンに参加している若手ラッパー、洛陽船トウィンクーが参加しただけに、ダークなエレクトロ・ラップに仕上がった。ダースベイダーよろしくの低音ヴォイス、疲れた脳ミソをゆるませるようなスローなテンポで、アルファとしてはかなり毛色の変わった感じだ。「子供は見ちゃダメ」という内容もまた暗黒風でグッド。
11COFFEE SHOP
にぎやかな元気印といった感のあるアルバム『SUSHI BOMBER』の中で、感情的なイメージで異彩を放つ。テクノとヒップホップを遊び感覚でとらえるというより、かなりマジメに真正面から取り組んだような曲構成だ。ジャーマン・エレクトロニクスを継承する電子音ビートもいい。「嫌なことはかき消す消火器」なんて、ちょいダサの歌詞もずらり。
12MISSTTAKE
下っ腹に響くエレディスコ系ビートとポジティヴな明朗ラップの融合という、アルファらしさが爆発した必聴ナンバー。負けても外しても破滅寸前になろうとも、トライし続ける人生の意義、そしてツバを吐きたくなる激情……。生きている証を綴る歌詞が印象深い。強烈な高速ラップではないけれど、歌詞の量の割にはクールに決めていてカッコいい。
13アサガキタ
ワン・コイン・シングルとしてもリリースされたナンバー。全編を覆うデジタル・ビートはチープだが、かなり可愛らしいイメージ。そこに乗っていくフロウはタイト過ぎず、メリハリの効き具合が絶妙で、ダラけた日常を等身大に歌い上げる。いやなことがあってもお日さまいっぱいの朝が来る……という元気になれる曲だ。