ミニ・レビュー
必ずしも先鋭的な音が一番いいとは限らない。それを証明している作品だ。ソウル、ファンク、ディスコなど今まで以上にグルーヴに気を配られてはいるものの、基盤にあるのはジェイ・ケイの声やメロディなど、変わりようのない個性。大物の貫禄十分だ。
ガイドコメント
いよいよ出るぞー! ジャミロクワイのニュー・アルバム。前作は輸入盤も含め140万枚のスーパー特大ヒットになりました。感謝の気持ちも込めて新作は気合が違います。お帰りなさいって感じ。
収録曲
01CANNED HEAT
4thアルバム『シンクロナイズド』のリード・トラック。“燃料が詰まってる靴で踊るんだ!”と歌うファンキーなダンス・チューン。うねるボトム・ビートの上を軽快なフットワークで駆け抜けていく、ファンキーなギターとストリングス・アレンジが爽快。
02PLANET HOME
故郷の星ほど素晴らしいところはないんだと歌う、宇宙船地球号賛歌ともいうべき曲。中盤でラテン・テイストのアフロ・キューバンなサウンドも採り入れたディスコ・ファンクだが、タイトなビートによって軸のブレないなめらかなサウンドとなっている。
03BLACK CAPRICORN DAY
70年代ソウルの匂いを漂わせたイントロから、ホーンを採り入れた極太のブラック・ミュージックへとなだれ込むファンキー・ディスコ。“暗黒の山羊座の日を経験している”という謎めいた詞が連なるダークな内容だが、サウンドはしっかりグルーヴしている。
04SOUL EDUCATION
カーティス風ニュー・ソウルの匂いがプンプンするイントロから、足抜きのいいソウル・ファンクを展開。魂の教育で音楽に救ってもらえばいいと歌うミラーボール・ディスコ・チューンだが、ギラギラし過ぎないのは、颯爽たるストリングス・アレンジの功績が大。
05FALLING
恋に落ちていく男の“君の愛が欲しい”という切なる願いを綴った、メロウなスロー・チューン。リズム隊はあくまでもシンプルだが、そこに艶やかなホーン・アレンジが絡むことで、思い悩み悶々とする心情を巧みに描写している。
06DESTITUTE ILLUSIONS
うごめくようにうねるボトムに陰りをちらつかせるシンセが漂うインスト・チューン。マイナー調のメロディだが、シャキシャキしたドラムとスクラッチでファンキーな一面をもたらせている。“貧窮な幻覚”を意味するタイトルは、現代人への警鐘メッセージか。
07SUPERSONIC
“彼はスーパーソニック”と連呼するファンキー・ディスコ・チューン。イントロから鳴り響くウォリスのディジリドゥ(木の筒からなるアボリジニの民族楽器)による“ヴォー”と共鳴する低音が、ワールド・ミュージック風テイストを醸し出している。
08BUTTERFLY
意中の女性との恋愛を蝶に見立て“僕の元へ戻っておいで”と歌うメロウなミディアム・チューン。うねるボトム・ライン、“アイ・ウォント・イット……”と繰り返されるバック・コーラス、麗しいストリングスが一体となって、幻想的な雰囲気を醸し出している。
09WHERE DO WE GO FROM HERE?
低音のピアノ・フレーズのイントロがインパクトを残す、恋の行方に不安を抱えた男の心境を歌うダンサブルなファンキー・チューン。艶のあるホーンがジャジィな色合いを、ファンキーなギター・リフが疾走感を与えて、ラテン風の陽気さを生んでいる。
10KING FOR A DAY
オルゴール風からピアノ風の音色へ移行して奏でられるクリシェ・ラインと緊迫感あるストリングスが物憂げな表情を生む、クラシック・テイストのナンバー。わがままに振る舞った君は一日だけの王様で終わったんだと愛の終焉を告げる詞が、なんとも虚しい。
11GETINFUNKY
アルバム『シンクロナイズド』の日本盤ボーナス・トラックとして収録されたインストゥルメンタル・ナンバー。イントロでのヘリコプターのプロペラ音やビープ音風のSEなどが配されたシンセ中心のサウンドによって、サイバーバンクな世界観を描き出している。