ミニ・レビュー
久しぶりのアルバム。デイヴ・スチュワートが曲作りに参加した「TAKING CHANCES」、ハートのカヴァー「ALONE」、東洋っぽい「EYES ON ME」など、これまでのイメージを塗り替えるような曲も多く、ヴォーカルも生き生きしている。ツアーも再開するなど、新たなスタートにふさわしい新鮮な内容だ。
ガイドコメント
世界中に多くのファンを持つ歌姫、セリーヌ・ディオンの2007年11月発表のアルバム。王道のバラードやクールなR&Bなどヴァラエティに富んだ楽曲の数々を、持ち前の響きの良いヴォーカルで歌いこなしている。
収録曲
01TAKING CHANCES
デイヴ・スチュワートが曲作りに参加、ジョン・シャンクスのプロデュースによる、美しいタイトル・ナンバー。曲調はしっとりとしているがヴォーカルは時に力強く新鮮で、前作より約3年ぶりとなるアルバムのオープニングを飾るのにぴったりだ。
02ALONE
ハートのヒット曲のカヴァー。ベックの父、デイヴィッド・キャンベルがストリングスのアレンジを担当するなど、さすがに豪華なスタッフが参加。ドラマティックな歌とサウンドに魅せられるが、パワフルなシャウトにもびっくり。
03EYES ON ME
オーストラリア出身のデルタ・グッドレムが曲作りとバック・ヴォーカルに参加したナンバー。中近東を感じさせるエキゾティックなサウンドで、セリーヌの変幻自在なヴォーカルも曲調にうまくマッチしている。
04MY LOVE
収録アルバム『TAKING CHANCES』には豪華なスタッフが大勢迎えられているが、本曲は元4ノン・ブロンズのリンダ・ペリーがプロデュースと演奏で参加。スケールの大きい伸びやかなヴォーカルが堪能できるバラードだ。
05SHADOW OF LOVE
ロック調のドラマティックなナンバーで、ダイナミックなセリーヌのヴォーカルは見事としかいいようがないほどに完璧だ。ノリがよく、ますます若返っているようでもある。スウェーデンのアンダース・バッグらが参加。
06SURPRISE SURPRISE
エリック・ベネイなどで知られるエマニュエル・キリアコウらがプロデュース。軽快なポップ調の曲だが、丁寧な歌いぶりながらやや甘さを控えめにして塩味を多めに効かせたような、ピリリと引き締まったヴォーカルが印象的だ。
07THIS TIME
元エヴァネッセンスのギタリスト、ベン・ムーディがプロデュースに参加したバラード。デイヴィッド・キャンベルのストリングス・アレンジが、シリアスなムードを盛り上げる。はつらつとしたセリーヌのヴォーカルに、くぎ付けになること間違いなし。
08NEW DAWN
リンダ・ペリーがプロデュース、ピアノなどで参加。ゴスペル調のナンバーで驚かされるが、さらに迫力満点のセリーヌのハミングやヴォーカルには、誰もがノック・ダウンさせられるだろう。コブシも堂に入っている。
09A SONG FOR YOU
ピアノとストリングスだけのバックによるバラード・ナンバー。セリーヌのヴォーカルは圧倒的な存在感があるが、この曲においてはサウンドがシンプルだけに、息遣いも生々しく、さらに彼女の独壇場といった感じだ。
10A WORLD TO BELIEVE IN
セリーヌと伊藤由奈のコラボ・シングル(邦題「あなたがいる限り」)のオリジナル・ヴァージョン。大人の女性らしい温かく落ち着いたヴォーカルに癒される、しっとりとしたナンバーだ。ジョン・シャンクスが初ソロを手掛けたルーシー・ウッドワードがコーラスで参加。
11CAN'T FIGHT THE FEELIN'
パワフルなロック・ナンバー。低音も高音も使い分けたエネルギッシュなヴォーカルに、圧倒されっぱなしだ。ボン・ジョヴィのアルバムなどに参加するアルド・ノヴァの曲で、彼のギターもギンギンにフィーチャーされている。
12I GOT NOTHIN' LEFT
少し抑え気味にコントロールされた巧みなヴォーカルで、しかも独特の声色も披露するなど、聴きどころの多い切ないバラード・ナンバー。R&B界の人気者、Ne-Yoがバック・ヴォーカルで参加している。
13RIGHT NEXT TO THE RIGHT ONE
デンマークのバンド、ディジー・ミズ・リジーの中心メンバーだったティム・クリステンセンのカヴァーで、演奏でも彼が大活躍。セリーヌのリラックスして素朴なヴォーカルが心を打つ、3拍子の可愛らしい曲に仕上がっている。
14FADE AWAY
ストリングスがサウンドの中心的な役割を果たしている、ドラマティックなポップ・ロック調ナンバー。アレンジの意図、雰囲気などにも敏感に反応したヴォーカルの巧みさや余裕に、歌手としての総合的な力量が感じ取れる。
15THAT'S JUST THE WOMAN IN ME
イギリスのバンド、カトリーナ&ザ・ウェイヴスのカヴァー。ミディアムの3拍子なのに、歌い始めから感情を吐き出すような激しいヴォーカルを披露する。特にシャウトなど、荒くれブルースマン顔負けの迫力だ。すごい!
16SKIES OF L.A.
アルバム『TAKING CHANCES』本編のラスト・ナンバー。ブリトニー・スピアーズなどを手掛けたクリストファー・スチュワートのプロデュースによる、こよなく美しいバラードだ。繊細で巧みなヴォーカルを聴かせ、母親としての優しさも十分。感動的な曲だ。
17MAP TO MY HEART
アルバム『TAKING CHANCES』日本盤のみのボーナス・トラック。ブルース調のバラード・ナンバーで、しんみりとしたヴォーカルから始まり、ドラマティックに盛り上がったところに鋭いエレキ・ギターが絡んでくる。静と動のバランスが見事な曲だ。
18THE REASON I GO ON
アルバム『TAKING CHANCES』日本盤のみのボーナス・トラックで、アコースティック・ピアノからスタートするバラード・ナンバー。抑えきれない感情を内に秘めたような情感たっぷりなヴォーカルや、ちょっとしたハミングにも重みがあるのは、セリーヌならでは。