ミニ・レビュー
ドラマ『西遊記』の主題歌として大ヒットした(10)を含むサード・アルバム。アコースティック・サウンドとヒップホップの融合というBECK以降と言うべき手法は、ここまで整理整頓されたのだいうことが本作を聴くとよく分かる。メロディが異常に高品質なのが強い。
ガイドコメント
カナダ人兄弟率いる4人組ロック・バンドの通算3作目となるアルバム。時折平井堅のようなセクシーさも見せる表現力豊かな歌声や印象に残るギター・フレーズなどが特徴的。和洋折衷の良質なポップ・ロック。
収録曲
01turn
左チャンネルで情感豊かなフレーズを爪弾き続けるアコースティック・ギターと切ないメロディ・ラインとの絡みが胸を打つミディアム・ナンバー。「でも明日はきっと来るから」と暗闇の中に差す一筋の希望を、力強く歌い上げる。
02another day
エレクトリック・ギターのカッティングを中心に構成されたファンキー・チューン。スクラッチを導入するなどヒップホップのグルーヴ感を巧みに採り入れたモダンなサウンドが、キャッチーなメロディ・ラインをさらに際立たせている。
03thank you
これまで自分を支えてきてくれた人々への感謝の気持ちを込めた歌詞からは、彼らの優しい人柄が感じられる。目立たないながらも意外にメロディアスなベース・ラインと、プラント兄弟の日本への愛情が感じられるラップ・パートにも注目!
04on and on
彼らのソングライティング能力の高さが実感できるストレートなギター・ロック。アコースティック・ギターとエレクトリック・ギターのコード・ストロークを中心に組み立てられた、ざっくりとしたサウンドは爽快感抜群。
05雪合戦
monkeymajik流インダストリアル・ロックが展開されるヘヴィ・ナンバー。全編英語詞の楽曲に「雪合戦」という日本語タイトルをつけてしまうあたりに、彼らの一筋縄ではいかない鋭いセンスが表われている。
06fly
2006年1月にリリースされた彼らにとって初となるシングル曲。大空を連想させる爽快なメロディや多種多様なサウンド、緩急あるアレンジなど、完成度の高い仕上がりに。全国のFM各局でパワー・プレイされた。
07between the lines
グルーヴ感満点の16ビートが気持ち良い、monkeymajik流ディスコ・チューン。楽曲全体を引っ張っていくサンプリング風のギター・カッティングがしなやかなリズムを強調する。キーボードがポップな隠し味だ。
08all by myself
ラテン風なギターと隠し味的に挿入されるストリングスの音色が、なんとも心地良いバラード。移りゆく季節の中で真っ直ぐに前を見つめる、プラント兄弟の人生観を反映した歌詞からは、言葉の壁を越えた普遍的な感情があふれている。
09delayed
不安定なコード感を強調したギターのリズミカルなアルペジオが特徴的な、サイケデリックかつ哀愁漂うアコースティック・バラード。ユーモラスな言葉を綴ったラップ・パートでオチをつけるという遊び心が楽しい。
10Around The World
フジテレビ系ドラマ『西遊記』主題歌。歌詞の大半の英語や、中盤の男性ファルセットから70年代ソウルを彷彿とさせるが、歌謡曲調の覚えやすいメロディやサビの日本語詞が印象的。まさに国際視野のポップス。
11STAY
多彩なギター・サウンドが軽快に響くポップ・ロック・ナンバー。時折、平井堅のようなセクシーな表情を覗かせるリード・ヴォーカルや兄弟ならではのタイトなコーラスなどが聴きどころ。メリハリのある曲構成も見事。
12種
アコースティック・ギターの弾き語りから徐々に音数が増えていく展開がドラマティックなラブ・ソング。「もしも一つだけ願いが叶うなら」と“祈り”を切々と歌い上げるメイナードのヴォーカルは、ソウルフルかつ色気たっぷり。