ミニ・レビュー
俳優+実業家でもある米国の“スーパースター”が2013年にリリースした『20/20 エクスペリエンス』というタイトルの二部作をまとめたもの。現代的なヒットR&Bがたっぷり堪能でき、金ピカ・コーティングの三つ折り紙ジャケットもピッタリだ。日本盤は歌詞と和訳が載った64ページのブックレット封入。
ガイドコメント
約7年ぶりにシーンへカムバックし、ヒットとなったアルバム『20/20 エクスペリエンス』。そこへ収録し切れなかった名曲を収めた完結編的位置づけとなるアルバム『同 2/2』をプラス。音楽の完全なる可視化体験というコンセプトを体現した作品だ。
収録曲
[Disc 1]〈20/20 エクスペリエンス〉
01PUSHER LOVE GIRL
映画のBGMにありそうなメロディアスでドリーミなストリングスから導かれる、8分にも及ぶラヴ・アプローチ。スウィートなレトロ・ソウルに包まれながら、ファルセット多めに熱っぽく“君が欲しい”と語り続ける。ストーリー性の高いモダンなナンバーだ。
02SUIT & TIE
君と愛を奏でるためにスーツとタイでバッチリ決めて行くよと告げる、華麗なパーティ・ソング。レイドバックなソウル・ポップスとともに、大人のたしなみで愛を語らう。ジェイ・Zも余裕の表情でフォーマルにフロウ。甘茶ソウルの名曲「ショウ・ナフ」も彩りを添える。
03DON' T HOLD THE WALL
壁に寄りかかってないで一緒に踊ろうと誘う、大人のラヴ・アフェア。エキゾチックでミステリアスな雰囲気に包まれたサウンドは、アラビアの舞踏会といった趣。享楽と幻想を行き来するような、ドラマティックでセクシーなミディアム・ポップだ。
04STRAWBERRY BUBBLEGUM
君は僕の可愛いストロベリー・バブルガムなんだとささやく、どこまでも甘く濃密なメイク・ラヴァー。優しい肌あたりのヴォーカルとともに、スウィートなソウル・ポップを展開する。中盤から曲風が変化する二部構成的なトラックも面白い。メロウなファルセットもいい。
05TUNNEL VISION
タメを効かせた剥き出しのビートが生み出す重厚と疾走を並列させたトラックは、ティンバランドならでは。僕には君しか見えないと、完全に心を奪われた男の狼狽を歌う。不穏なムードと艶やかなコーラスが混在した、ミステリアスなラヴ・ソングだ。
06SPACESHIP COUPE
重力を感じさせるファットなボトムと遊泳する姿が思い浮かぶふわっとしたヴォーカル。好対照な感覚がさまよう音世界は、まさにスペースシップだ。宇宙を駆け巡り、愛を交わそうと歌う、プリンスっぽいスロー・ジャム。ティンバランドとジェロム“J・ロック”ハーモンが制作。
07THAT GIRL
冒頭の口上やレイドバックしたサウンドなどオールディーズ風ソウルを体現したミッド。小刻みに入り込むギターなど、どことなくプリンスやラファエル・サディークが作りそうなメロウ・ファンクな佇まいが心地よい。あの娘に恋しているんだと熱を上げる男を歌う。
08LET THE GROOVE GET IN
プリミティヴなアフロビートを導入したパーティ・アップ。マイケル・ジャクソン「スタート・サムシング」を思わせる直情的なトラックは、ティンバランドが構築。終盤ではアース・ウィンド&ファイアっぽいコーラス・ワークで、一気に世界観を広げていく。
09MIRRORS
アルバム『20/20 エクスペリエンス』からの2ndシングル。僕と君は互いの“写し鏡”なんだと永遠を誓うラヴ・ソングで、ティンボのクセの強いビート上にクリアなヴォーカルが映える。メロディが際立ち難解ではないが、終盤はユニークなビートで締めての8分超。
10BLUE OCEAN FLOOR
逆再生音のようなゆったりとした広がりのあるサウンドエフェクトのループをバックに、誰にも見つからない海の底へ一緒に行こうとつぶやくネオ・ソウル風のミニマル・エレクトロニカ。深淵、静寂のみならず、官能的にさえ感じるドラマティックなエンディングだ。
[Disc 2]〈20/20 エクスペリエンス 2/2〉
01GIMME WHAT I DON'T KNOW (I WANT)
02TRUE BLOOD
03CABARET
04TKO
05TAKE BACK THE NIGHT
06MURDER
07DRINK YOU AWAY
08YOU GOT IT ON
09AMNESIA
10ONLY WHEN I WALK AWAY
11NOT A BAD THING