ミニ・レビュー
デビュー10周年を機に、ファン投票を元に編まれた2枚のベストの片割れ。「For divers area」は新曲で、最近のkjのトレンドである高速ラテン・ビートにハードコアなバンド・サウンドと高揚感あふれるメロディを掛け合わせた曲。日本のロックを変えた男たちの栄光の軌跡がここに。
ガイドコメント
日本のロック/ヒップホップ・シーンを牽引するバンド、Dragon Ashのベスト・アルバム第1弾。デビューから99年発表の3rdアルバム『Viva La Revolution』までの楽曲が対象。ファン投票ののち、メンバー自身がセレクトする。
収録曲
01For divers area
ラテン・フレイヴァを大胆に取り入れた、Dragon Ashの最新モード。ホイッスルやパーカッションがド派手にかき鳴らされるアッパーなサンバとロックのミクスチャーに、kj特有の叙情性が隠し味として落とし込まれている。
02天使ノロック
80年代米東海岸を匂わせる力任せなクランチ切りで、パワー&スピードのハード・コア・ナンバー。ゲインを上げたギター・サウンドから迸る生気、カタルシスの中で猛り狂いながらも見失うことのないメロディ。
03Ability→Normal
Dragon Ashがターンテーブルやサンプリングを取り入れる前の初期の名曲。ギター、ベース、ドラムのみのシンプルなアンサンブルとブルーハーツの影響がうかがえるイノセントな詞で歌われる、ストレートなロック・ナンバー。
04Cowboy Fuck!
アコースティック・ギターのカッティングとアルペジオの組み合わせが、美しく全編を彩る。シンプルなループを形作るストイックなドラム、独特の節回しで豊富な言葉数を歌うヴォーカルなどに、ヒップホップの影響が見え始めている。
05Fever
当時、ライヴの終盤で演奏されることが多かった初期の代表曲。スマッシングパンプキンズを思わせる切なくも優しいエモーショナルなコード感に、韻を踏むことを意識したラップ調のヴォーカル。若くポジティヴなメッセージが込められた佳曲だ。
06Face to Face
スローなバンド・サウンドに乗せ、ストレートな感情の発露を見せるkjのヴォーカルとシャウト。全編英詞で少年性を帯びた叙情的な内容を綴っている。終盤で見せる転調とその先のアッパーな展開が、すべての悲しみに終わりがあることを高らかに宣言しているかのよう。
07Invitation (Buzz Mix)
DJ BOTSのエモーショナルなスクラッチが登場し始めた中期の楽曲。歪んだギター・リフ、アコースティックな爪弾き、スクラッチ、ささやくように“歌われる”ラップとそれに重なる美しいコーラス。ヒップホップとロックの要素が見事にひとつになっている。
08Under Age's Song (Album Mix)
バンド・アンサンブルにクールなラップとキャッチーなメロディが乗せられた、彼らの真骨頂的な作風。和やかなコーラス・ワークや終盤の緩やかなストリングスなど、リリックにもあるように“一息つく”のに最適な、包容力のある楽曲だ。
09Melancholy
ゆったりとしたドラム&ベース、主張を抑えたサンプリング&スクラッチと、曲の構成がシンプルゆえに、ヴォーカルの存在感が際立っている。悲しみを超えてポジティヴに生きることの難しさを歌ったリリックが、リアリティを持って迫りくる佳曲。
10陽はまたのぼりくりかえす
“it's time to change” という決意を掲げ、大勝負に出た1stシングル曲。畳み掛けるスネア、暖かいギターの歪み、韻を踏み丁寧に歌われる偽りないメッセージ。不朽のロック・バラード、ここに誕生。
11I ♥ HIP HOP
ジョーン・ジェットの「I love Rock'n'Roll」を壮大なる元ネタに、無邪気すぎるパロディが物議をかもした一大ヒップホップ賛歌。ハードコアなギター・サウンドと馬鹿騒ぎにも似たフックにハイテンションなラップが、力強く響きわたる。
12Freedom of Expression
中期の曲では珍しくヒップホップの成分が抑えられたロック・ナンバー。ハードなギター・リフが印象的だが、叙情的な詞世界は健在。“ロックンロールは俺の青春、ヒップホップは俺のすべて”と、音楽家として、ひとりの青年として、等身大な部分を素直に歌った詞が胸に染み入る。
13Drugs can't kill teens
メロコア並みにソリッドでハードなギターと疾走感のあるアンサンブルに乗せて歌われるのは、意外にも社会的なメッセージ。ライヴ会場ではモッシュとダイヴが激しく交錯するであろう、アッパーなパンク・チューン。メロディもキャッチーで、シンガロングにも最適だ。
14Let yourself go、Let myself go
15Dark cherries
Kj率いるスノーボード・チームのことを親愛を込めて歌ったナンバー。レゲエ風のメロに誘われはねるリズム、裏打ちするワウ・ギター、多彩なパーカッション。仲間と過ごすひとときの陽気なサウンドトラック。
16Viva la revolution