ミニ・レビュー
結成10周年記念で制作された2枚組ベスト盤。激しくたたみかけるフロウとビートのダンスホール・チューンが核となるが、哀愁のラテン調あり、陽気で緩いカリビアン風ありと、そのアプローチは実に多彩。また、思わずニヤリとするリリックにも注目の大充実作だ。
ガイドコメント
横浜市出身のレゲエ・グループ、FIRE BALL初のベスト・アルバム。シングル曲やライヴで定番のナンバーなどが集められた2枚組で、彼らの魅力を余すことなく伝えている。
収録曲
[Disc 1]
01INTRO
ブラックかつメロウなベース・ライン、ジャジィなギター・カッティングに導かれて淡々とメッセージを語り上げる、アダルトな雰囲気の小品。モダン・ジャズを意識したアレンジはなんともムーディだ。
02BAD JAPANESE
派手なホーンや跳ねるビートが交錯するアッパーなトラックが特徴。そこへエネルギッシュ極まりない、ハイテンションのマイクリレーが飛び込んでくる。ポジティヴな“日本賛歌”が高らかに歌われるダンスホール・レゲエだ。
03FIRE BALLのテーマ
シンセの不穏なフレーズで幕を開ける、FIRE BALLのテーマ・ソング。テンションを抑えたトラックとヴォーカルが、本番への助走を感じさせる。YOYO-Cをフィーチャーしたテクニカルなマイクリレーも印象的。
04BRING IT ON
繊細なエレキ・ギターのリフが印象的な、ミドル・テンポのダンスホール・トラック。曲の骨格がむき出しになった無駄のない音数で、トラックがグルーヴしていく。回転の速いラップとメロウなメロディのアンサンブルは圧巻だ。
05FIST and FIRE
涼しげなキーボードのフレーズが耳をくすぐるサマー・チューン。掲げた両腕を左右に振りたくなるような、ピースフルな雰囲気に仕上がっている。エンターテイナーとしてのFIRE BALLが前面に押し出た楽曲といえる。
06BURN BAD MIND
インド歌謡風のフレーズやハワイアンなスティールパンのサウンドが取り入れられた、ユニークな楽曲。だが、ビートはあくまで跳ねるダンスホール調。世界中の暑さがミックスされたような、にぎやかな楽曲に仕上がっている。
07キットヒット〜踊るカルマン〜
ハンドクラップとオーガニックなアフリカン・ドラムを中心に構成される、軽快なビートが印象的。ウクレレのようなサウンドで爪弾かれる上モノのフレーズも、FIRE BALLらしいピースフルさを醸し出している。夏にふさわしいレゲエ・チューンだ。
08KOOMINA
09アンジェリータ
アルゼンチンタンゴを彷彿とさせるバンドネオンのソロから幕を開ける、情熱的な楽曲。マリアッチ風のアコギの爪弾きなど、ラテン音楽の要素を組み込んだトラックとなっている。レゲエの暑さとラテンの情熱が好相性な楽曲。
10999RULAZ
軽快なダンスホール・ビートの上に、丸みのあるオルガンのフレーズが乗せられたユニークなトラック。タイトルに(『銀河鉄道999』を思わせる)“999”とあるだけあって、汽車をモチーフにしたリリックが並ぶ。ミドル・テンポでリラックスした印象の曲に仕上がっている。
11到来
驚異的な文字数のリリックが高速回転のラップによって耳に流れ込んでくる、テクニカルなマイクリレー。金属的なギターの爪弾きが、イントロからサビにかけて効果的に用いられている。抑揚を抑えたクールなトラックも印象的に響く。
12KICK UP
低音のシンセがダークなフレーズを構築する、影のあるトラック。ダンスホール調のビートも、太さを抑えた鋭いものに仕上がっている。真夜中のクラブがよく似合う、色香の漂うセクシーなレゲエ・チューン。
13LIGHT UP THE FIRE〜FB:着火のテーマ〜
ヨーロッパ民謡のような怪しげなイントロから、ダンスホールのビートが走り出す。軽快さの中に神秘的なダークネスを含んだトラックが、独特のインパクトを与えてくれる。イントロで用いられたヴォーカルのユニゾンが、そのままフックになっているのも特徴。
14DA BALA
中東の民俗音楽的な響きを持った打楽器と弦楽器が、サウンドの中核を担っている。オリエンタルな曲の印象が、FIRE BALLの野太いヴォーカルと好相性だ。砂漠の暑さとジャマイカの暑さが出会った、神秘的なサマー・チューン。
15MAKE IT FIRE BURN
ウッドブロックなどを用いた乾いたビートが軽快に踊り狂うダンスホール・レゲエ。情熱的な熱さをたたえたリリックが、にぎやかなトラックの上で自由奔放に炸裂する。シンガロングしたら気持ちの良さそうな、フックのメロディも印象的だ。
16UNDER THE BLUE LIGHT〜ハマのテーマ〜
読んで字のごとくの“横浜賛歌”。高BPMで跳ねるドラムがリスナーのテンションを上げ、ローカルな地名や名所が乱れ飛ぶ地元愛に満ちたリリックが微笑ましい。高音のシンセや高速ラップが、アッパーな曲調に拍車をかけている。
17BATTLE FIRE J
ポジティヴなリリックが力強く歌われる極太のダンスホール・レゲエ。エレクトリックで硬質なトラックが、さながらブレイクビーツのようなグルーヴを持って迫ってくる。ライヴでの盛り上がりが目に浮かぶような、ハイテンションな楽曲だ。
18FIRE WAY〜待たせたな〜
三味線にも似た効果音と完全打ち込みのデジタル・トラックという不思議な組み合わせが魅力的。新旧の音楽性を融合させたうえに、勢いたっぷりのラップ&ライムが強烈に炸裂! 聴いているだけで踊り出したくなること請け合いのナンバー。
[Disc 2]
01INTRO
ブラックかつメロウなベース・ライン、ジャジィなギター・カッティングに導かれて淡々とメッセージを語り上げる、アダルトな雰囲気の小品。モダン・ジャズを意識したアレンジはなんともムーディだ。
02JOYFUL DAYS
アコースティック・ギターのフレーズとオーガニックなパーカッションを用いた、緩やかなトラックが白眉。ヴォーカルもトラックに合わせた、メロディアスでリラックスしたものとなっている。サーフ系のサウンドを彷彿とさせる、優しくナチュラルな楽曲だ。
03DANCING MOOD
FIRE BALLの楽曲の中では比較的オーセンティック・レゲエに近い、緩やかで落ち着いた曲調。GUAN CHAIの英詞と甘いメロディが印象的だ。キーボードの裏打ちが心地良い涼しさを演出する好ナンバー。
04流
シンプルなギターの裏打ちが“これぞレゲエ”なオーセンティック・トラック。伸びやかで牧歌的なヴォーカルが、ピースフルな曲の印象を決定付けている。真夏にのんびりしながら聴きたい、リラックスしたレゲエ・チューン。
05STEP
リラックスする気持ちの大切さを、優しく囁くように温かく歌い上げたレゲエ・ナンバー。メロウでメロディアスなベース・ラインに体は自然と横に揺れ、彼らの美しいコーラスに心が激しく打たれること間違いなしの名曲。
06雨が上がるまでの間
ピアニカのもの悲しいフレーズが耳に残る佳曲。ギターの裏打ちや歪んだダビーなエフェクトなど、本格的なレゲエのパーツがちりばめられている。JUNGLE ROOTSをフィーチャーし、セクシーなヴォーカルも印象的に響く。
07MORNING
爽やかな16ビートのハイハットに、清らかに響くストリングス。ファルセットのコーラスに、豊かな和音が気持ちいいエレクトリック・ピアノ。まさに“清らかな朝”を表現する要素が揃ったミディアム・テンポのポップ・ソング。
08JUNGLE ROOTS
スロー・テンポの裏打ちや本格的なダブ処理に、FIRE BALLの老獪さを垣間見ることができるレゲエ・トラック。ホーンを用いたバックやエモーショナルなギター・ソロなど、深みのある曲構成も特徴だ。タイトルどおり、JUNGLE ROOTSをフィーチャー。
09ROOTS
お手本のようなレゲエ・サウンドに真正面から取り組んだ、メロディアスなミディアム・ナンバー。バック・ミュージシャンの確かな演奏技術が、彼らの奔放なヴォーカルを引き立てている。爽やかでシャープな曲調が魅力的なナンバーだ。
10PRESSURE DROP〜自業自得〜
軽快なストロークで奏でられる裏打ちのリズムが、可愛らしい曲の印象を形作っている。サビのコーラス・ワークや日本語と英語が入り混じったヴォーカルもにぎやかでピースフルだ。FIRE BALLの懐の深さが感じ取れる、ユーモラスな楽曲。
11NEW BEGINNING
JUNGLE ROOTSをゲストに迎えた、ラヴァーズ・ロック調。穏やかでオーガニックなサウンドが、ルーツ・レゲエ風の貫禄と説得力を持ち合わせている。美しいメロディに乗せてポジティヴなメッセージが歌われる、ポップ・チューン。
12WITH YOU ALL THE WAY
リム・ショットやコーラス・ワークが涼しげな、JUNGLE ROOTSをフィーチャーしたレゲエ風スロー・バラード。伸びやかに歌われるヴォーカルやオーガニックなサウンドの数々が、雄大で平和な印象を与えてくれる。
13BIRDMAN
ポジティヴで力強いメッセージが歌われる、ミドル・テンポのレゲエ・チューン。ギターの裏打ちやオルガンのフレーズなどを用いたシンプルなトラックであるがゆえに、メロディアスでカラフルなヴォーカルが際立っている。希望に満ちたフレッシュな楽曲だ。
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