[Disc 1]
01グッド・タイムズ・バット・タイムズ
02ゴナ・リーヴ・ユー
ジョーン・バエズが歌うフォーク・ソングを大胆に改造した曲。ZEPはすべての断片を過剰なまでにドラマティックに再構成し、血が流れるほど深い陰影を刻み込み、誇大妄想的なまでにダイナミックなブルース・ロック・ナンバーへと変貌させている。
03ユー・シュック・ミー
特に派手な改造を施さず、比較的ストレートにカヴァーしても、他のバンドとは異なる独自の世界を構築できることを彼らはウィリー・ディクソンのこの曲で証明してみせた。終盤のペイジとプラントとのエロい絡みはライヴでその本領を発揮することになる。
04幻惑されて
1973年7月のM.S.G.公演でライヴ録音された『I』収録曲。27分間の長丁場だから、聴きどころも多い。左右に振られる弓弾きギター、ギターvsドラムス、ギターvsヴォーカル、「花のサンフランシスコ」の引用など、ライヴならではの演奏が楽しめる。
05時が来たりて
ジョーンジーが弾く教会音楽風のオルガンをフィーチャーした曲。擬似アンプラグドなサウンドを背景に、プラントがその歌唱力を見せつける。4人のコーラスも珍しい。平凡なハード・ロック・バンドではないことを彼らはこの曲で証明してみせた。
06ブラック・マウンテン・サイド
07コミュニケイション・ブレイクダウン
秀逸なギター・リフから生まれた初期の名曲。当時のZEPが必要としていた強力なフックを持つアップ・テンポのロック・チューン。プラントのセクシーなヴォーカルを全面的にフィーチャーし、さらにペイジの印象的なギター・ソロもあって、しかも2分半で終わる。
08君から離れられない
1970年1月9日のロンドン公演のリハーサル・テイク。ということになっているが、その夜の本番テイクと酷似しているので真偽は不明。ZEPはスタジオ録音版を凌ぐ素晴らしい演奏を披露しているが、ボンゾの秀逸なフィル・インで唐突にカットアウトされる。
09ハウ・メニー・モア・タイムズ
初期ZEPの可能性を詰め込んだ8分半のミニ組曲。「No Place To Go」「Rosie」「The Hunter」など、ブルース・クラシックの曲想や引用を満載し、さらに4人の得意技の数々を惜しげもなく披露している。初期のライヴでは常に最後の1曲として演奏されていた。
[Disc 2]
01胸いっぱいの愛を
1973年7月のM.S.G.公演でライヴ録音された『II』収録曲。ここでのこの名曲の“異次元ポケット”からは「クランジ」や「Let that boy boogie-woogie」が引きずり出されている。演奏そのものも見事だが、テルミンを使ったパフォーマンスなども楽しい。
02強き二人の愛
ソングライターとしてのプラントの才能が目覚めた最初の曲。静と動のコントラストを劇的に強調する初期ZEPの基本方針が明確に表現されている。プラントの歌声の魅力が詰め込まれ、さらにペイジがレスポールで美しいソロを披露している。
03レモン・ソング
セックス・シンボルとしてのプラントのイメージを決定づけた曲。ハウリン・ウルフの「Killing Floor」をアルバート・キング的なアレンジでリメイクし、さらにロバート・ジョンソンの「Traveling Riverside Blues」の性的な歌詞を効果的に挿入している。
04サンキュー
プラントが愛妻に捧げた曲。作詞家としての彼の才能を証明した最初の曲でもある。ペイジの12弦リッケンバッカーとジョーンジーのハモンド・オルガンがこの曲の抒情的なタッチを強調し、ボンゾのパワフルなドラミングが劇的な展開を牽引している。
05ハートブレイカー
ハード・ロックの代名詞となった有名なギター・リフを持つ初期ZEPの名曲。殺人的なベンディングを含むペイジの華麗なギター・ソロが聴ける。ライヴではクラシックやポップ/ロックの名曲の一部を引用した延長ヴァージョンで観客を熱狂させた。
06リヴィング・ラヴィング・メイド
ZEPのレパートリーの中では例外的なポップ・ソング。西海岸のグルーピーを描いた歌詞とキャッチーなギター・リフによる2分半の興奮。ZEPのライヴで演奏されることは一度もなかったが、のちにプラントは90年のソロ・ツアーでリメイク版を披露している。
07ランブル・オン
ZEPの音楽的多様性を証明する曲のひとつ。ペイジがイメージする陰陽のダイナミズムを最も的確に表現した曲でもあり、プラントの剛柔自在の歌唱力を端的に証明する曲でもあった。トールキンの『指輪物語』からヒントを得たという歌詞も秀逸。
08モビー・ディック
1973年7月のM.S.G.公演でライヴ録音された『II』収録曲。ロック史上に残る秀逸なギター・リフに続いて、ボンゾの超人的なドラム・ソロが披露される。長いドラム・ソロは退屈だと言う人もいるけれど、ドラムスという楽器を理解していれば、充分に楽しめる。
09ブリング・イット・オン・ホーム
ウィリー・ディクソンの同名の曲を下敷きにしたZEP流ブルース・ロック。序盤と終盤は敢えてレトロ調に演じたブルースだが、中盤では唐突にハード・ロック化している。初期のライヴではギターvs.ドラムスの派手なバトルを披露するための曲でもあった。
[Disc 3]
01移民の歌
『レッド・ツェッペリンIII』(70年)の冒頭を飾る有名曲。 “ア、ア、ア〜、ア!”というハイトーンが炸裂する絶品のハード・ロック。プロレスラー、故ブルーザー・ブロディの入場テーマ曲としても有名。
02フレンズ
フォーク・ロックにインド音楽やアラブ音楽の要素を導入した曲。変則的なオープン・チューニングによる生ギターとタブラ感覚のボンゴに低空飛行のアラブ風ストリングスが絡みつく。プラントのヴォーカルにもインド〜アラブ系の影響が感じられる。
03祭典の日
1973年7月のM.S.G.公演でライヴ録音された『III』収録曲。映画『永遠の詩』では使われていないが、このライヴ・ヴァージョンは悪くない。スタジオ版よりも速いテンポでパワフルな演奏を披露。ボンゾとペイジのプレイがバンドを荒々しく引っ張っている。
04貴方を愛し続けて
05アウト・オン・ザ・タイルズ
ボンゾが考えたリフから生まれた曲。ボンゾらしい変則的なリズム・パターンに牽引された狂躁的なサウンドは、ZEPというバンドの超人的なタフネスぶりを象徴している。中期以降のZEP流ファンク・サウンドの予告篇、と言うこともできるかもしれない。
06ギャロウズ・ポール
07タンジェリン
ペイジがヤードバース時代に書いた曲。フォーキーな曲だが、ペダル・スティール・ギターが奇妙な効果を生み、英国産トラッドと米国産カントリーが異次元で出会ったようなサウンドになっている。歌詞の内容は、前世か、あるいは生まれ変わりの物語のようだ。
08ザッツ・ザ・ウェイ
作詞家としてのプラントの成長を感じさせる曲。波のように押し寄せるギター群のサウンド、インド風のフレーズを奏でるペダル・スティール・ギター、そしてプラントの催眠的な歌声が聴き手を別の世界へと誘う。時間を忘れさせる音楽が欲しければ、これがそれ。
09スノウドニアの小屋
スノウドニアのコテージ“ブロン・イ・ヤー”で作られた曲。プラントの愛犬についての歌だと言われている。アン・ブリッグスやバート・ヤンシュの影響も感じさせる英国古謡風の賑やかな曲だが、そこはかとなく東洋的なニュアンスもあるところがZEPらしい。
10ハッツ・オフ・トゥ・ロイ・ハーパー
ブッカ・ホワイト版「Shake 'Em On Down」を下敷きにしたペイジとプラントのジャム・セッション。ペイジのボトルネック・ギターがフィーチャーされている。タイトルは、英国のシンガー・ソングライター、ロイ・ハーパーへのリスペクトの念を表明したもの。
[Disc 4]
01ブラック・ドック
02ロックン・ロール
タイトルどおりのロックンロール・チューン。ジョン・ボーナムの凄まじいドラムにはじまり、伝統的でシンプル、それでいて印象的なリフでノせる。ハード・ロック・バンドとしての彼らを代表する一曲だ。
03限りなき戦い
フェアポート・コンヴェンションの歌姫サンディ・デニーとプラントによるデュエット曲。マンドリンをフィーチャーしたトラッド風の編曲で、スコットランド戦争からヒントを得たプラントの歌詞を彼とデニーが競い合うように、あるいは補い合うように歌っている。
04天国への階段
ロック史上最も有名な曲のひとつ。叙情的なアコースティック・パートから徐々に盛り上がり、ギター・ソロで頂点に達する。ドラマティックなロック・ナンバーとして完璧な構成力を誇り、後世に語り継がれる超名曲。
05ミスティ・マウンテン・ホップ
変拍子のリフとボンゾのドラミングとの絡みを主軸にした曲。ジョーンジーのエレクトリック・ピアノも効果的に使われている。読経のようなヴァースとキャッチーなフックを歌い分けるプラントのヴォーカルも秀逸。中期以降のZEPを予感させる曲でもある。
06フォア・スティックス
変拍子のリフとタブラ感覚のドラミングを基調にした曲。この曲を叩くためにボンゾが4本のスティックを使ったことから“Four Sticks”と名づけられた。プラントのヴォーカルにはインド風のニュアンスもある。ZEPの可能性の扉のひとつを開けた曲。
07カルフォルニア
08レヴィー・ブレイク
[Disc 5]
01永遠の詩
1973年7月のM.S.G.公演でライヴ録音された『聖なる館』収録曲。スタジオ版と同じくボンゾの力強いドラミングがバンドを牽引する。ダブルネック・ギターに持ち替えたペイジのプレイも素晴らしい。ライヴならではの臨場感も味わえる熱演の貴重な記録。
02レイン・ソング
1973年7月のM.S.G.公演でライヴ録音された『聖なる館』収録曲。ペイジの繊細なプレイとジョーンジーのメロトロンが幻想的な雰囲気を演出し、ボンゾの雪崩のようなドラミングがドラマティックな展開を先導する。プラントのヴォーカルも安定している。
03丘のむこうに
独り言のような生ギターのイントロから始まる曲。強烈なリフと強力なビートに支えられたサウンドに、異次元のギター・サウンドが効果的に挿入される。どこがリアルなのか混乱するエッシャーの騙し絵のような構造の曲。プラントの歌も禅問答のように響く。
04クランジ
ボンゾの変則的なリズム・パターンから生まれた曲。変拍子を導入した踊れないファンクに、ジェイムズ・ブラウンの「Take It To The Bridge」をデフォルメした歌詞を乗せたZEP流ジョークが楽しめる。そして彼らは最後まで“ブリッジ”を探している。
05ダンシング・デイズ
身体を捩るようなギター・リフから始まる曲。踊れないファンク「クランジ」とは異なり、この曲なら踊れる。プラントは“夏の宵のダンシング・デイズ”について歌っている。ライオンやオタマジャクシの話はよくわからないが、陽気な曲であることは間違いない。
06デイジャ・メイク・ハー
冗談から生まれたZEP流レゲエ・チューン。“妻に捨てられた男”を描いた歌詞ともリンクする英国の古いジョークから拝借した曲名には“英国製のレゲエ”という意味もある。ここでのボンゾの見事なドラミングはそれだけで充分に価値のあるものだ。
07ノー・クォーター
1973年7月のM.S.G.公演でライヴ録音された『聖なる館』収録曲。ジョーンジーのエレクトリック・ピアノによる夢幻的なイントロからペイジの華麗なギター・ソロまで、すべての要素が奇跡的なタイミングで絡み合った最良のパフォーマンスが堪能できる。
08オーシャン
ボンゾの無限のパワーを伝える発言から始まる曲。そのパワーをそのまま音楽化したかのような、ポジティヴな変拍子ファンク・サウンドとプラントの陽気な歌声が快感。終盤の“ドゥーワップ”の全面的肯定性はアルバム『聖なる館』の主題ともリンクする。
[Disc 6]
01アキレス最後の戦い
二つの曲を合体させた後期ZEPの傑作。凄まじい勢いで疾走するボンゾのドラミングがバンドを先導する。多重録音されたペイジの劇的なギター・ワークも秀逸。ギリシャ神話の英雄アキレスを題材にした物語を歌うプラントのヴォーカルも素晴らしい。
02フォー・ユア・ライフ
麻薬を題材にした麻薬的な曲。執拗なまでに繰り返される刺々しいギター・リフに乗って、プラントが巧みに抑制されたヴォーカルを聴かせる。ペイジがブルーのストラトキャスターで奏でるリフが頭の中で反響し、地味ながらクセになってしまう不思議な曲。
03ロイヤル・オルレアン
ニューオーリンズのホテルの名を冠した曲。ミーターズばりのファンク・ビートを叩き出すボンゾのドラミングとペイジの性急なギター・リフにうながされて、実体験に基づいているらしい当地での挿話をプラントが歌う。どうやら主人公はジョーンジーらしい。
04俺の罪
ブラインド・ウィリー・ジョンソンの同名曲を下敷きにした曲。ボンゾ流ファンク・ビートに先導された新型ブルース・ロック。マウスハープをフィーチャーした演奏は初期ZEPを思い出させるが、得意のブレイクを効果的に駆使したサウンドはより洗練されている。
05キャンディ・ストア・ロック
後期ZEP流ロカビリー・チューン。ファンク経由のロカビリー・ビートに乗って、ペイジはスコッティ・ムーアばりのギターを奏で、プラントはエルヴィスばりの歌声を披露する。20年ぶりに蘇生された改造ロカビリー・サウンドがZEPの独創性を証明している。
06何処へ
『フィジカル・グラフィティ』のためのセッションから生まれた曲。聴く者をわくわくさせるようなリズムに乗って、プラントが歌いたいことを(やや寓意的に)歌い、ペイジが弾きたいように(やや風刺的に)弾いてみせる。陽気な即興性を基調にした楽天的な曲。
07一人でお茶を
後期ZEP版の「貴方を愛しつづけて」。初期ZEPの緊迫感あふれる名演とは異なり、大人の余裕を感じさせる仕上がりのスロー・ブルース。「1分が一生のように思える」と歌うプラントも、抑制されたプレイを聴かせる3人も、すでに20代の若者ではない。
[Disc 7]
01カスタード・パイ
ブッカ・ホワイトやサニー・ボーイ・フラーらのブルース・クラシックを下敷きにしたブルージィなファンク・ロック。ペイジのギター・リフも秀逸だが、ジョーンジーのクラヴィネットも効いている。プラントもマウスハープを披露。だが最大の功労者はやはりボンゾか。
02流浪の民
ボンゾの擬似ファンク調のリズム・パターンから始まる曲。前作『聖なる館』のアウトテイクにダビングとリミックスを施したもの。ペイジのギター・リフは例によって尊大で自己言及的だが、常に理想主義的なプラントは結束の必要性について歌っている。
03死にかけて
ボブ・ディランも歌っていたブルースの古典をZEP流に改造した曲。プラントはブラインド・ウィリー・ジョンソンの歌詞を下敷きにしている。ボンゾとジョーンジーの強靭なファンク・ビートに馬乗りになったペイジが狂騒的なボトルネック・ギター・ソロを披露する。
04聖なる館
前作『聖なる館』のアウトテイク。タイトル曲をアルバムから外すのは例外的だが、同じタイプの「ダンシング・デイズ」を彼らは選択した。ダンサブルなギター・リフとファンク・ビートも似ているが、何よりも陽気な肯定性が双生児のように似通っている。
05トランプルド・アンダー・フット
ジョーンジーのクラヴィネットをフィーチャーしたZEP流ファンク・ロック。車を性的な比喩として使った歌詞は、ロバート・ジョンソンの「Terraplane Blues」から引用したものだ。中期から後期にかけてのライヴでは、欠くことのできないレパートリーとなった。
06カシミール
ケルト、インド、アラブというZEP三大要素の集大成とも言える傑作。ペイジの“CIA”チューニング・ギターとアラブ風ストリングスによる画期的なリフを基調に、SFの世界へと迷い込んだような、眩暈がするほどエキゾチックな異次元サウンドが展開される。
[Disc 8]
01イン・ザ・ライト
「イン・ザ・モーニング」というリハーサル・ナンバーから生まれた曲。低く垂れ込める黒雲の如きキーボード・サウンドから始まり、何度かの転調やリズム・チェンジを経て、プラントが「誰もが光を求めている」と歌い上げる感動のフィナーレへと辿り着く。
02ブロン・イ・アー
『III』のアウトテイク。タイトルは、1970年の春に彼らが訪れたスノウドニアのコテージの名。ペイジの生ギターによるインストゥルメンタル曲。映画『永遠の詩』のサントラで使用され、彼らがコンサート会場へと向かうシーンで流れた。
03ダウン・バイ・ザ・シーサイド
1970年の春、“ブロン・イ・アー”で書かれた曲。ニール・ヤングの音楽にインスパイアされたもので、当初はよりフォーキーな曲だったが、ここではややエレクトリックな編曲を採用している。ヤングにも似たような題名の曲はあるが、音楽的に近いのは他の曲。
04テン・イアーズ・ゴーン
05夜間飛行
『IV』のアウトテイク。ジョーンジーのアイディアを基にしたもので、彼のオルガンが基調になっている。レスリー・スピーカーを通したペイジのギター・サウンドも印象的。プラントの力強いシャウトがボンゾの頼もしいドラミングとともにバンドを牽引している。
06ワントン・ソング
強靭なZEP流ファンク・ビートがサウンド全体を牽引する曲。レズリー・スピーカーと逆回転エコーを駆使したペイジのユニークなギター・サウンドが独特の雰囲気を作り出している。性的な比喩を満載した歌詞を歌うプラントのヴォーカルも精力的。
07ブギー・ウィズ・ステュー
『IV』のアウトテイク。「ロックンロール」の録音に参加したイアン・スチュワートとのジャム・セッション。リッチー・ヴァレンスの「Oh! My Head」を下敷きにしたもので、スチュならではのブギウギ・ピアノがほぼ全篇でフィーチャーされている。
08黒い田舎の女
『聖なる館』のアウトテイク。アンプラグドなサウンドで奏でられるフォーク・ブルース。そこはかとなく疲労感を漂わせながらも饒舌なプラントのヴォーカルとマウスハープが魅力的。ミック・ジャガーの別荘の庭で録音されたため飛行機の爆音が入っている。
09シック・アゲイン
テンションの高いハード・ロック・チューン。1973年の全米ツアーで出会った米国産グルーピーについてプラントは歌っている。ボンゾの激烈なドラミングがバンドを牽引し、ペイジの荒々しいギター・リフが狂騒的なツアーの日々をリアルに再現している。
[Disc 9]
01イン・ジ・イヴニング
3年半ぶりの新作の巻頭を飾った意欲作。幻想的な弓弾きギターのイントロに続いて、豪放磊落なギター・リフとプラントの精力的な歌声がバンドを先導する。ペイジが使用したギズモトロンの効果もあり、特別な力を感じさせる曲に仕上がっている。
02サウス・バウンド・サウレス
ジョーンジーのピアノが快調に疾走するファンク経由のロックンロール。マウスハープが効果的に使われているが、ペイジのギター・ソロも好演。プラントのヴォーカルはやや演技過剰気味だが、それはそれで楽しいし、最後のドゥーワップも面白い発想。
03フール・イン・ザ・レイン
サンバを導入した意欲作。ペイジの劇的なギター・リフとボンゾの変則的なリズム・パターンに陽気なサンバのリズムを重ねる、という一見無謀なアイディアが見事に成功し、新たな領域を開拓している。再現は難しいだろうが、ライヴで聴いてみたかった。
04ホット・ドック
05ケラウズランブラ
さまざまな要素を詰め込んだ10分を超える大作。ジョーンジーのシンセサイザー群が全篇を覆い、ペイジのギターは脇役ながら細部に貢献し、プラントは謎めいた物語を歌っている。80年代のZEPを想像させる新時代のサウンドの萌芽がここにはある。
06オール・マイ・ラヴ
1977年に病死した当時5歳の愛息カラックに父プラントが捧げたラブ・ソング。ジョーンジーのキーボードが奏でるクラシカルなストリングスをバックに、幼くして死んだ我が子への想いをプラントが切々と歌う。ZEPのレパートリーの中でも最も感動的な曲のひとつ。
07アイム・ゴナ・クロール
映画音楽のようなストリングスをフィーチャーしたスロー・ブルース。ジョーンジーのシンセサイザーが奏でる流麗なストリングスをバックに、プラントがウィルソン・ピケットばりのソウルフルな歌声を披露する。ペイジのエモーショナルなギター・ソロも素晴らしい。
[Disc 10]
01ウィアー・ゴナ・グルーヴ
1969年6月に録音された『II』のアウトテイク。ペイジのワイルドなギター・ワークとボンゾの巧みなドラミングに先導されて、若きプラントが猛々しいヴォーカルを披露。ベン・E・キングのカヴァーだが、初期ZEPはオリジナルに近い独創性を発揮している。
02プア・トム
1970年6月に録音された『III』のアウトテイク。ボンゾらしい創意に富んだ独創的なシャッフル・ビートに乗って、スキッフル風味も感じさせるZEP流のジャグバンド・サウンドが賑やかに展開される。プラントのマウスハープも楽しめる異色の1曲。
03君から離れられない
1970年1月9日のロンドン公演のリハーサル・テイク。ということになっているが、その夜の本番テイクと酷似しているので真偽は不明。ZEPはスタジオ録音版を凌ぐ素晴らしい演奏を披露しているが、ボンゾの秀逸なフィル・インで唐突にカットアウトされる。
04ウォルターズ・ウォーク
1972年5月に録音された『聖なる館』のアウトテイク。ペイジの鋭角的なギター・リフとボンゾの力強いドラミングが牽引するスリリングなハード・ロック。プラントのヴォーカルだけは82年にダビングされた、という説もあるが、とにかく強烈な未発表曲。
05オゾン・ベイビー
1978年11月に録音された『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』のアウトテイク。ペイジのソリッドなギター・リフと強力なリズム・セクションが絡み合うハード・ロッキンなロックンロール。プラントのヴォーカルも乗りに乗っている。ややビートリーなテイストもある佳作。
06ダーリーン
1978年11月に録音された『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』のアウトテイク。やや変則的なギター・リフとリズム・パターンとの絡みが最高。後半はシャッフルのロックンロールへと展開し、ジョーンジーのピアノをはじめ、4人がそれぞれに秀逸なプレイを披露する。
07モントルーのボンゾ
1976年9月にモントルーのスタジオで録音されたボンゾのソロ曲。彼のワンマン・ドラムス・オーケストラによるパーカッシヴなサウンドが堪能できる。ハーモナイザーを駆使したメロディックなアプローチもあり、あっという間に終わってしまう4分18秒の悦楽。
08ウェアリング・アンド・ティアリング
1978年11月録音の『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』のアウトテイク。全力疾走でシャウトするプラントも圧巻だが、猛烈な勢いで突っ走るリズム隊とともに痙攣的な速度で弾きまくるペイジのギターが凄まじい。パンクスを鼻息で吹き飛ばすような勢いがここにはある。
09ベイビー・カム・オン・ホーム
10トラヴェリング・リヴァーサイド・ブルース
11ホワイト・サマー〜ブラック・マウンテン・サイド
12ヘイ・ヘイ・ホワット・キャン・アイ・ドゥ