ミニ・レビュー
タイトルのイメージに反して、内容は詞・曲共にわりとセンチメンタルな楽曲が多い。唯一、はじけて青春してるのは(5)か。また気になるのは(3)と(6)。歌詞とメロディがサビを中心にほぼ同じ。“Good−by”と“Hello”の対比からして、対の曲と解釈しようか。
収録曲
01Sign of the Time
重めのピアノ・ロック曲。いつの間にか心がすれ違い気付いた時には手遅れだった恋人同士の関係を、車の運転になぞらえた歌。ユーミンの感情を抑えたような控えめな歌い方と良い意味で彼女らしくないメロディが聴きどころ。
02砂の惑星
エジプト/インド民俗音楽風ナンバー。幻想的な砂漠を舞台に2人の愛を綴る歌詞は生と死をも超越した形而上的レベルに達し、ユーミンの個性的な歌声はエスニックなメロディと出逢うことで珠玉の響きを得ている。
03Good-bye friend
今は亡き友人を歌ったナンバー。胸の奥に生き続けているからずっと友達でいてねと願う切ない歌だが、サウンドがいくぶん爽やかなところからも、その死を受け入れていることが伝わってくる。メロディアスなベースが実に印象的。
04Bye bye boy
サビ裏の下降するシタール・サウンドが特徴的なライト・ポップス。もう昔のようには仲直りできなくなってしまった恋人の、ほろ苦い別れの歌。ポップに歌われる“よね”や“のに”という響きが実に印象的で耳に残る。
05GET AWAY
セレモニーを連想させるオルガンとホーンで始まる、軽快なポップ・チューン。冬休みを翌日に控えた少女が“彼”へアタックする歌で、レゲエ風リズムからサビへの弾けるような展開が恋にひた走る少女の姿を象徴している。
06Hello、my friend
80年代の末期、シンセによるマシンビートの多用で歌世界も機械的になってしまったユーミンに、初期の作風を思わせる甘酸っぱい香りが戻り、ファンに大歓迎で迎えられた名曲。痛いくらいの切なさに号泣。
07RIVER
ギターとベースのユニゾンが印象的な重めのロック。恋人と一緒にいたはずが気付くと独りになっている女性の悲しい歌。疲労感が感じられる“また”や自分ではどうにもできない“流されて”といった表現が特徴的。
08Lonesome Cowboy
故郷から離れたところで暮らし、恋人とも別れた男の孤独を歌ったミディアム・スロー・ナンバー。疲れ切った心情を表わすブルージィなギターやユーミンがわずかにエスニックな節回しを見せるBメロなどが印象的。
09Oh Juliet
ユニークなポップ&ロック・ナンバー。ユーモアを感じさせるタイトル通り、内容は現代版『ロミオとジュリエット』で、ひたすら悲劇の愛を叫ぶ。ロマンティックな雰囲気のサビへの大胆なリズム・チェンジが聴きどころ。
10春よ、来い
ユーミンが松任谷姓になった最初のアルバム『紅雀』(1978年)から追求を続けてきた和的情緒が、ひとつの頂点に達した記念碑的名曲。昔からすでに存在していたかのようなスタンダード感あふれるメロディが感動的。