ミニ・レビュー
2009年リリース作にライヴ音源などを加えたデラックス・エディション。ひと言で言えば“変化”の4作目。新たにジャクワイア・キングをプロデューサーに迎え、サウンドはこれまでになくロック色が強くなり、自ら弾くギターのパートが増え、歌詞も孤独感漂うものが多くなる。全米ではトップ3入り。
ガイドコメント
2009年11月に発表されたアルバム『ザ・フォール』のデラックス・エディション盤。NYで行なったライヴ音源と2曲のボーナス・トラックを収録。ジャクワイア・キングをプロデューサーに迎え、ジェシー・ハリスらと共同制作した意欲作だ。
収録曲
[Disc 1]
01CHASING PIRATES
波に漂うようなリラックスしたヴォーカルが心地よい、アルバム『ザ・フォール』のリード・トラック。「ちょっとカーティス・メイフィールドっぽい雰囲気」を意識したと本人が語るように、穏やかでありながらグルーヴィな楽曲に仕上がっている。
02EVEN THOUGH
ジェシー・ハリスとの共作曲。切なさを際立たせる歪んだギターの音色が印象的な、センチメンタルでゆったりとしたポップ・ソング。相手と気持ちが通じ合わない寂しさを歌った、憂いを帯びたヴォーカルも聴きどころ。
03LIGHT AS A FEATHER
“暗雲”“石の雨”などの暗いイメージのキーワードをちりばめたアンニュイな歌詞とブルージィな旋律がマッチしたスロー・ナンバー。詞とともに語尾に気だるさを感じさせるヴォーカルは、同時にとても妖艶に響いている。
04YOUNG BLOOD
陰と陽の両方のキーワードをちりばめた、おとぎ話のようにも感じられる言葉遊び風の歌詞が印象的。憂いを帯びたヴォーカルが、ノスタルジックなメロディや躍動感に満ちたサウンドと相まって、摩訶不思議な世界を作り出している。
05I WOULDN'T NEED YOU
心が離れてしまった恋人に帰ってきてと切々と訴えるラヴ・ソング。ゆったりとしたテンポで奏でられる切なくも美しいピアノの旋律や、あなたが必要だとストレートに愛を語る情感を込めたヴォーカルが胸に沁みる。
06WAITING
帰ってくるはずのない恋人を待つ女性の心境を歌った切ないバラード。スロー・テンポの穏やかなサウンドにたゆたうような、柔らかなヴォーカルが心地よい。噛めば噛むほど味わい深い、スルメのような“食感”の名曲だ。
07IT'S GONNA BE
力強いドラミングと本人によるウーリッツァーの音色が固い意志を表わしているかのように響くメッセージ・ソング。自分の国の経済やマスコミについての懸念を歌っており、冷静でありながらエモーショナルなヴォーカルが冴えている。
08YOU'VE RUINED ME
カントリーの要素を取り入れた牧歌的かつポップなサウンドに乗せて“あんたのせいでわたしは台無し”と繰り返す、壊れた愛について歌ったナンバー。軽やかなメロディと悲しい歌詞のギャップが、いっそうやるせない気持ちを演出している。
09BACK TO MANHATTAN
ノラ自身が音楽活動の礎となる数多くの経験をした第二の故郷、マンハッタンを題材にしたノスタルジックなバラード・ナンバー。ピアノやペダル・スティールが奏でる、ゆらゆらと揺れるようなゆったりとしたサウンドが胸に沁みる。
10STUCK
後味の良くない出来事を綴った歌詞と憂いを帯びたメロディがマッチしたミッド・スロー・ナンバー。伸びやかで力強いだけでなく、気だるさや爽やかさをも感じさせる歌唱など、その引き出しの多さに改めて脱帽。
11DECEMBER
ピアノとアコギのみのシンプルな構成のメロウ・ナンバー。指でなぞるような優しく流麗なメロディに呼応する、リラックスしたヴォーカルを聴くことができる。夢見心地になってしまうことうけあいの、癒し系バラードだ。
12TELL YER MAMA
別れた恋人をひたすら罵るという怒りに満ちた歌詞でありながらも全体的にカラッとした印象なのは、ズッチャ、ズッチャというリズムやファニーでポップなメロディのおかげ。アーシーなサウンドもそれに一役買っている、カントリー・ロック調のナンバーだ。
13MAN OF THE HOUR
本人のピアノ弾き語りによる、しっとりとしたラヴ・ソング。残酷で滑稽なストーリー性のある歌詞を紡ぐ大らかで伸びやかなヴォーカルは、ときに淋し気で、ときに楽し気。その豊かな表現力は特筆に値する。
14HER RED SHOES
アルバム『ザ・フォール』の日本盤ボーナス・トラック。音数を絞ったシンプルで穏やかなアコースティック・サウンドが、力強さと優しさを兼ね備えた美しいヴォーカルをいっそう際立たせている。
15CAN'T STOP
[Disc 2]
01IT'S GONNA BE
02WAITING
03YOU'VE RUINED ME
04JESUS ETC.
05CRY, CRY, CRY
06STRANGERS