ミニ・レビュー
約2年ぶりのセカンド・フル・アルバム。ハイスタを現代的に消化したような、英語で歌われるメロディック・パンク・サウンドだが、ていねいにすべき部分はていねいに作り、思い切りよくすべき部分は思い切りよくやり、浮ついてなくてまっすぐパワーが伝わる。
ガイドコメント
『ripple』に続くメロディック・パンク・バンドの約2年ぶりとなるフル・アルバム。NO USE FOR A NAMEなどの日本公演サポートで知られる彼らの、ひと回りスケールの大きくなった小気味良いサウンドが楽しめる。
収録曲
01Film
ファンキーなベース・ラインのイントロから疾走するパンク・ロックへと一気に突入する『The First Chapter』のスタート・ナンバー。未来を見据えながら“生きる力”について歌い上げるポジティヴな詞が印象的だ。
02across time
偉大なる先人にリスペクトを捧げながら、「人生に真似は必要ない」と、それぞれが自分らしく生きるように呼びかけるメッセージ・ソング。高速ブラスト・ビートと繊細なメロディ・ラインの組み合わせが切なくも感動的。
03Tobacco Smoke
退屈な日常とそこからの逃避を描いた、刹那の快楽に満ちたロックンロール。エレクトリック・ギターのピック・スクラッチが楽曲の疾走感を強調している。メイン・ヴォーカルとコーラスとの掛け合いが楽しい。
04WORDS
メロディアスなベース・ラインとエレクトリック・ギターの柔らかなアルペジオが印象的なポップ・ソング。アコースティック・ギターを隠し味的に使用した、音の隙間を活かしたアレンジが楽曲全体に深みを与えている。
05Detours
あの日の寄り道がきっと僕らの宝物になっていくはず……と、曲がりくねった人生とそこに秘められた可能性を称える賛歌。親しみやすいメロディ・ラインを丁寧に歌い上げる木下正行の伸びやかなヴォーカルは優しさと包容力に満ちている。
06SHOWCASE
キャッチーなエレクトリック・ギターのリフレインを軸に構成されたパンク・チューン。キレのあるビートに絡むアコースティック・ギターが、ドラマティックな印象のサウンドをさらに強調している。エンディング直前のブレイクも効果的。
07Ivory chair
いつも一緒にはいられないからこそ、「今夜は僕と一緒に夢を見ないか」と恋人に語りかけて、これまでの感謝の念を改めて伝えようとするラブ・ソング。ブラスト・ビートが愛する人への一途な熱い想いを表わしているかのよう。
08NOW AND FOREVER
映画『ゲッタウェイ』の主題歌として94年に大ヒットした、リチャード・マークスの代表曲のカヴァー。しっとりとしたアコースティック・バラードだった原曲を、豪快なパンク・サウンドにアレンジしているのがユニークだ。
09Grab Again
悶々とした想いを抱えた日々とそこからようやく抜け出した清々しい気分を歌い上げる、メロディアスなパンク・ソング。エレクトリック・ギターの繊細なフレージングが、モラトリアムな心情を丁寧に描き出している。
10Gift from the sky
愛する人がいるからこそ、失うことを恐れて臆病になってしまう……。そんな繊細な心情を告白するロッカ・バラード。ラブ・ソングというよりは、まるで子供に歌いかけるかのような優しさに満ちた1品だ。
11FOGGY ROADS
今は自分と異なる道を歩く友との思い出を振り返り、懐かしい気分に浸りながら「またいつもの場所で会おうじゃないか」と呼びかける、大人のためのロック・ソング。たたみかけるビートが、若かりし頃に誓った蒼い想いを活き活きと蘇えらせる。
12reason
いつまでも付きまとう不安を振り払うかのように、明日への祈りを込めて今日という日を締めくくろうとする、希望に満ちたロック・チューン。アコースティック・ギターの躍動的なコード・ストロークが、爽快でたまらない。