ミニ・レビュー
モータウンや60'sガールズ・ポップスに通じる甘酸っぱくカラフルな曲が次々に飛び出すデビュー・アルバム。男子5名を従えたアリ・ハワード嬢の存在感をダスティ・スプリングフィールドに例える声多数。レトロ・ポップなアプローチはトレイシー・ウルマンも思い出させる。★
ガイドコメント
イギリス・グリニッジ出身の6人組ポップ・バンド、Lucky Soulのデビュー・アルバム。フジテレビ系『たけしのコマネチ大学数学科』のエンディング曲となった表題曲をはじめ、流行や懐古主義に走らない普遍的なメロディが魅力的に響いている。
収録曲
01ADD YOUR LIGHT TO MINE, BABY
鮮やかなドラムの連打で幕を開けるカラフル・ポップ。モータウンに影響を受けた60年代風のメロディに、若かりし頃のカイリー・ミノーグを思わせるアリの甘い歌声が、華やかに踊る。無邪気に恋を求める乙女チックな詞が可愛い。
02ONE KISS DON'T MAKE A SUMMER
甘くノスタルジックな雰囲気に包まれたメロウ・ポップ。ギター演奏を背景にしたアリの透明感あふれるロリータ・ヴォイスが、洒落たレトロ・ポップの世界を描き出す。60年代モータウンの懐かしいフレーズとコーラス・ワークが新鮮。
03STRUCK DUMB
ソウルっぽいリズム・アレンジを施した、温かな雰囲気のドリーミー・ポップ。透明な響きを持つ甘い歌声を強調した、飾らないシンプルな演奏が自然で穏やか。カーディガンズを思わせるサウンド・アレンジが懐かしい。
04LIPS ARE UNHAPPY
“シェイク シェイク シミィ”という可愛らしいコーラスが印象的なポップ・チューン。シミィとはジャズのリズムのことで、実験的な演奏や遊び心いっぱいの古典的サウンドが新しい。大胆に取り入れたストリングスのアレンジに圧倒される。
05MY DARLING, ANYTHING
ノーザン・ソウルの香りが漂う穏やかなメロウ・バラード。ゆったりと揺れるリラックスしたメロディの中、軽く口ずさむように歌うアリの自然な歌声がふんわりと優しい。包み込むような安らぎのムードが、曲全体を満たしている。
06GET OUTTA TOWN!
元気いっぱいに叫ぶロリータ・ヴォイスが、最高にキュートなロックンロール! さまざまな楽器が入れ替わり現れる音の変化が、鮮やかでとても新鮮。 ダンスホールに飛び出して踊りたくなる縦ノリのリズムに、ワクワクすること間違いなし。
07THE GREAT UNWANTED
メロウなレトロ・ポップから不安を駆り立てるような切迫したビート・ポップへと移っていく展開が刺激的。自分を裏切った人に“死んでもいい”と透きとおる声で鋭く叫ぶ場面では鳥肌が立つ。彼らには珍しい感情的なナンバーだ。
08BABY I'M BROKE
甘く少女っぽい声で歌い上げる、もの悲しいバラード。ハモンド・オルガンの温かく幻想的な音色を前面に出し、ゆったりとした流れを作っている。お金も愛もなくしてしまった抜け殻のような心を、清らかな声で静かに歌うさまが印象的。
09MY BRITTLE HEART
甘酸っぱく郷愁的な気分に満たされるメランコリック・ポップ。叙情的に冴えわたるストリングス、そしてアリの儚さと力強さが混在する甘いヴォーカルが美しい。切なくも愛らしい普遍的なメロディに仕上がっている。
10AIN'T NEVER BEEN COOL
オールディーズ・サウンドを取り入れた粋なギター演奏に、ホーンやオルガンのアレンジを加えたガーリー・ロック。甘酸っぱくセンチメンタルなロリータ・ヴォイスに掛け合う男性コーラスも心地よい古さを漂わせ、決まっている。
11THE TOWERING INFERNO
レトロなソウルの雰囲気を漂わせるバラード・ナンバー。前半ではウィスパー系の愛らしい歌声が清らかに響き、ファンタジックな世界を作り出す。後半では情熱的なホーンの音色が入り込み、一転して華やかな色彩感を出している。
12IT'S YOURS
“あなたに夢中なの。すべてあげてもいいわ”と汚れない愛を語る詞が、伸びやかなメロディとともに綴られるバラード。途中から入り込む手拍子が、素朴な温感を作っている。自然と口ずさみたくなる親しみやすいメロディが魅力的だ。
13THE LAST SONG
子守唄のように優しく柔らかい、オルガンとギターによるバラード。静かに流れるギターの音色を従えて、舌足らずの少女っぽい歌声がロマンティックに揺らめく。賛美歌の演奏のように、清く穏やかなオルガンの音色も美しい。
14I GOTS THE MAGIC
アコースティック・ギターの音色に癒されるミディアム・ポップ。鉄琴を思わせる可愛らしい音色がところどころに現れ、ファンタジックな世界観を作っている。“魔法をかけてあげる もう私の虜”と少女のように甘くささやく歌声にゾクゾクする。
15GIVE ME LOVE
60年代テイストに彩られたメロディに、ほろ苦い懐かしさを覚えるミディアム・ポップ。甘い憂いを含んだロリータ・ヴォイスで綴られていく、愛を失い、孤独に苛まれる女性の心理。息遣いさえ聴こえるウィスパー・ヴォイスがもの悲しい。