ガイドコメント
リック・オケイセックをプロデューサーに再び迎えた、4年ぶりの新作。甘酸っぱい青春路線歌詞と(メンバーもうけっこういい歳)、重厚になってより説得力を増したギター・サウンドが心地よい。
収録曲
01DON'T LET GO
前作『ピンカートン』でのパンク/ガレージ路線から、再びパワー・ポップ路線へと回帰した8ビート・ナンバー。シンプルでキャッチーなバンド・サウンド、よく聴くとヘタな気がするギター・ソロなど、彼ららしさが満載だ。
02PHOTOGRAPH
3rdアルバム、通称『グリーン・アルバム』(96年発表)からの1stシングル。ハードなギターに泣きのメロディ、ウィーザー節全開の必殺チューン。歌詞もまた、男のよわ〜い部分をさらけ出してしまうリヴァースらしさが光っている。
03HUSH PIPE
キッスが大好きなギター少年だったリヴァースによる、1970年代ロックへのオマージュ・ナンバー。ガッガッガッと弾かれるへヴィなサウンドに対し、リヴァースの歌声はファルセット。そんな好対照な要素で安直な作風を回避している。
04ISLAND IN THE SUN
最初から最後まで憂いたっぷりのナンバー。憂いを帯びたアコースティック・ギターとエレクトリック・ギターのカッティングが絶妙に重なり合い、サビ・パートでの情感爆発の導火線役となっている。
05CRAB
愚痴ってかまわないとなぐさめる歌詞こそが愚痴に思えてくる、ユニークな歌詞が綴られるナンバー。これをグリッター・ロック調のエモ・サウンドに乗せ歌えば、彼ら特有の人を喰ったような曲調に。どっしりとしたドラミングのため加減も絶妙だ。
06KNOCK-DOWN DRAG-OUT
恋人との駆け引きを戦争に置き換えて歌ったメロディアスなナンバー。コマ切れ気味でのせわしなくもある曲調で、恋の駆け引きがもたらす心理的プレッシャーを絶妙に表現。ギターもヴォーカルもユニゾンが活きている。
07SMILE
歌詞もサウンドも至極シンプルなバラード・ナンバー。ただでさえ効果的なマイナー調のメロディに彼らお得意の泣きメロの効果が加わることで、さらに輝きが増している。凡庸を凡庸で終わらせぬセンスのたまもの。
08SIMPLE PAGES
出だしから“愛をくれ、愛をくれ”と訴えかける、キャッチーなナンバー。彼らにしては珍しいへヴィなサウンドによるバラードで、その重さは歌詞にも加わっている。ユニゾンで鳴らされるメロディが実に力強い。
09GLORIOUS DAY
スタジアム・ロックを思わせる、ラウドなサウンドのメロディアス・ナンバー。ところどころで音足らず歌詞余りに展開する落ち着きのなさが、歌詞に込められた思いの切実さを如実に表現。痛々しさに満ちたラブ・ソングだ。
10O GIRLFRIEND
逢えない恋人を思い焦がれて身悶えする様が描かれた、メロウなラブ・ソング。あまりに青臭い感情がちりばめられた歌詞が、怒涛の泣きメロ攻撃の援護を受ければ痛みすらともない始める。激しいドラミングも狂おしいかぎりだ。
11THE CHRISTMAS SONG
文字どおりのクリスマス・ナンバー。まさに聖夜のBGMに似合いそうなムーディなメロディを、ゆったりとしたエモ・サウンドでプレイ。そこはかとなく感じられるオールディーズ・テイストが、音圧の向こうに見え隠れしている。
12I DO
キーボード・サウンドを主体にしたア・カペラ風ナンバー。ノスタルジックな雰囲気が魅力的な小品だが、ギター・ソロが始まったかと思えば突然途切れ、歌も山場寸前あたりで唐突に終了。なんとも奇妙なアレンジが施されている。