ガイドコメント
2組の兄妹からなるイギリスの4人組ギター・ロック・バンドのデビュー・アルバム。ケミカル・ブラザーズの作品への参加でも話題となった彼らだが、本領は70年代を彷彿させるヒッピーでポップなサウンド。
収録曲
01MORNINGS ELEVEN
懐かしいけど今っぽい、マジナンらしいポップな逸品。恋焦がれ逸る気持ちを描く軽快なAメロは、80年代のギター・ポップ調。センチメンタルに浸るスローなBメロには、70年代のアメリカン・ポップスの香りが。王道普遍を行きながらも、音の作りはしっかりソリッド。何回聴いても飽きのこない、まさに“マジック・ナンバー”だ。
02FOREVER LOST
“現代版ママス&パパス”……。本人たちは否定するも、彼らがそう形容されることに頷ける、男声・女声のハーモニー際立つ爽やかなネオアコ・ナンバー。エヴァーグリーンなメロディながらも、高揚感・疾走感を携えたロックの香り。この秀逸のサウンドに、ギター・ポップをはるかに超えたミラクルなマジナン・ワールドが凝縮。
03THE MULE
マイナー調のメロディに乗せて、なんともトホホな心境を綴った失恋ソング。ロメオの味わい深いヴォーカルもさることながら、アンジェラの線の細いコーラスが繊細な心情を際立たせる。“彼女を忘れるために飲んだくれてしまおう”と、ポップス調から一転、歪んだロメオのギターが暴走……。そんなオチも、とってもリアルだ。
04LONG LEGS
“君を失いたくないんだよ”というもどかしい想いを歌ったポップなナンバー。ダイナミックなドラムといい、ラフなヴォーカルといい、どこかロンドン・パンクをも感じさせるが、あくまでポップ&スウィートなのは、やはり妹組によるところが大。彼女たちの、フワフワのホイップ・クリームのごとくの絶品コーラスをご賞味あれ。
05LOVE ME LIKE YOU
ギター・ポップ好きが狂喜乱舞すること必至の、ポップなロック・ナンバー。ハンドクラップが楽しい素朴なAメロから、空に突き抜けていくようなサビへのドラマティックな展開は、実に開放的で心地良い。そして、何より輝いているのは、ショーンが「もう一つの楽器」と形容したほどの、妹たちが“奏でる”爽やかなコーラス。
06WHICH WAY TO HAPPY
人生という、長くて複雑な旅路に付きものの、迷いや後悔。まさにそういった心情を、弱気な男の立場で綴ったスロー・バラード。ちょっぴりウェットなメロディを切々と歌い上げるロメオに、やさしく寄り添うアンジェラのスウィートなコーラス。そのハーモニーの織り成す世界は、極上の“ソフト・ソウル”とでも言おうか。
07I SEE YOU, YOU SEE ME
恋人たちがお互いを見つめ合う光景が目に浮かぶような、スウィートなラヴ・バラード。ロメオの温かい歌声に、アンジェラのクリスタル・ヴォイスが絡むデュエットにうっとり。控え目な鉄琴の響きが、ロマンティックに浸るリスナーを、さらにドリーミーな世界に引き込んでくれる。おやすみ前に聴けば、きっといい夢が見られそう。
08DON'T GIVE UP THE FIGHT
“ベイビー、頼むからあきらめないで……”と励ます歌声がなんとも健気で、心温まるポップ・ナンバー。爽やかなフォーク・ロックを基調としながら、歌い回しや、女声コーラスのつけ方にはソウル色が濃厚。決して熱くならず、あくまでやさしく見守る、というスタンスのリリックに、ロメオの柔和な人柄が滲み出るようだ。
09THIS LOVE
アコースティック・ギターの哀愁たっぷりのアルペジオが印象的な、シリアスなラヴ・バラード。ロメオのメランコリックなヴォーカルに、アンジェラの繊細なヴォーカルが絡み、フィドルの上品な旋律が絡む。重なり合うそのハーモニーは実に美しく、瑞々しい。ブリティッシュ・トラッドの風格さえ漂う、叙情豊かな秀作だ。
10WHEELS ON FIRE
そのタイトルから、年季の入ったロック・ファンは荒削りなナンバーを連想してしまいそうだが……そんな予想も見事に裏切る、マジナン・ワールド全開な心温まるソウル・バラード。どこか郷愁を誘うやさしいメロディに、ロメオ、ミシェル、アンジェラの織りなす珠玉のハーモニー。心の芯まで、癒されそう。
11LOVE'S A GAME
もどかしい恋のかけひきを、マジナンらしいスウィートなハーモニーを織り交ぜて綴る、70年代テイストのオシャレなソウル・バラード。メロディ、サウンドとも、いたってシンプルながらも、聴けば聴くほど味わい深い。ポップ路線ながらも、通をしっかり唸らせるその底知れぬ音楽性を垣間見せる、秀逸なナンバー。
12TRY
ソウルやカントリーといった古き良き音楽を愛するロメオ。そんな彼のルーツを垣間見る、ロマンティックなソウル・バラード。スローなメロディをじっくりと歌い上げるロメオのヴォーカルにうっとり。妹組によるコーラスが、ムーディーななかにも清涼感を与え、王道といえどもマジナンにしかできないサウンドを作り上げている。
13HYMN FOR HER
14IDEA OF A FEELING
15I HOPE YOU DON'T MIND