ミニ・レビュー
90年代後半の男性コーラス・グループに道を開いた彼らのデビュー15周年を飾る一作。カヴァー集が続いたので、オリジナル盤は『フル・サークル』(2002年)以来で、彼ら自身が全曲の曲作り、プロデュースに関わる。トリオになってもハーモニーの美しさは変わらない。
ガイドコメント
前作より実に4年ぶりとなる、2006年10月発表のオリジナル・アルバム。アッパーなパーティ・チューンや彼らの王道であるスロー・ジャム、オーガニック・テイストの楽曲など、メロディ重視の良質R&Bが満載だ。
収録曲
01MUZAK
前作より4年ぶり、3人組としては初のオリジナルとなるアルバム『ザ・レメディ』のオープニング曲。スペイン風ギターの歯切れのいいリフとリズミカルなコーラスが織りなすフレーズが、心地よいグルーヴを醸し出しているパーティ・チューン。
02GONNA HAVE
女の子を前にして気弱になりそうな男心を優しく勇気づけるミディアム・スロー・ナンバー。ソフトなメイン・ヴォーカルを始め、流れるようなコーラス・ワークやウィスパー・ヴォイスなど、コーラス・グループとしての魅力を堪能できる。
03HERE I COME
ボーイズIIメンの真骨頂といえる、夜の恋人たちのシーンにピッタリはまりそうな、ムード満点のスロー・ジャム・チューン。リズム・トラックが強調されたシンプルなアレンジが、彼らの甘いヴォーカルをいっそう際立たせている。
04PERFECT LOVE SONG
ロナルド・アイズリー、マーヴィン・ゲイ、ビヨンセ……。彼らがリスペクトするソウル/R&Bのアーティストの名を歌に織り込みながら、愛する女性を「完璧なラブ・ソング」で称賛する、スウィート&メロウなミディアム・スロー・ナンバー。
05MISUNDERSTANDING
クラブに集まる男女の都会的な恋愛模様と時に悲しみもまとうその情景を、あくまで洒脱な歌でまとめあげているR&Bナンバー。キックのきいたビートが三連を刻んだり、電話の着信音が織り交ぜられるなど、聴く者をハッとさせる仕掛けが満載だ。
06BOOED UP
アリーヤを手掛けたダニー・スキャンツのプロデュースによるミディアムR&B。流れるようなテンポやビートに憂いを帯びたスキャット風ヴォーカルが絡む、コンテンポラリーR&Bの芳醇な香りが楽しめるラブ・ソングだ。
07YOU DON'T LOVE ME
哀調のスパニッシュ・ギターによる静かなイントロからラップ調のヴォーカルへ流れる展開が、何か刺激的な予感をさせるミディアムR&Bチューン。豊かなコーラスが重なるサビのエモーショナルなグルーヴに、自然と身体が揺れるはず。
08THE LAST TIME
ヴォコーダーなどを用いたスペーシーなサウンド・アレンジが特徴的な、シカゴの新鋭、インソムニアックスのプロデュースによるソウル・ナンバー。ボーイズIIメンの正統派ヴォーカルと浮遊感のある現代的な音世界が見事にマッチしている。
09JUST LIKE ME
繰り返し爪弾かれる哀愁のギター・フレーズが、抑制の効いた繊細な雰囲気を醸し出すミディアム・バラード。別れの心情を切なく歌うメイン・ヴォーカルと、スウィートなコーラスが控えめでありながら複雑な表情を紡いでいく。
10CRUSH
生音の温もりを感じさせるドラムと穏やかにうねるベースを基調とした重層的な音作りが特色のミディアム・ナンバー。大陸的でアーシーなサウンドに寄り添うヴォーカルの一体感に、彼らの振幅の広さが垣間見られる。
11EGO
若さゆえの過ちを反省しながら“あの頃があって今があるんだ”と前向きに受け止める詞に、大人の風格が感じられるナンバー。不穏さが漂うヘヴィなリズムに流麗なストリングスが絡むという、複雑なサウンドに負けないヴォーカルは、重鎮の貫禄だ。
12MORNING LOVE
イントロのギター・アルペジオは、タイトルにふさわしい夜明けのムード。これから愛し合いたいという内容を、大人の恋の甘さを惜しみなく伝えるのにふさわしい、磨きぬかれたヴォーカルで披露。途中に流れる爽やかなピアノ同様にウットリするナンバーだ。
13MUZAK
メイン・ヴォーカルにEXILEのATSUSHIをフィーチャーした、日米アーティスト競演の豪華なボーナス・トラック。ムーディなコーラスにATSUSHIのヴォーカルが小気味よくハマる、指を鳴らし踊り出しそうな仕上がりのアップ・テンポのナンバー。