ミニ・レビュー
目新しいことは何もないが、互いを引き立てつつ演奏されるギターの音色、渋い歌声が胸に沁みてくる。クラプトンの「アフター・ミッドナイト」でケイルを知った、という世代には歓喜に打ち震えること間違いなしの、素敵な爺様二人によるコラボ作品。★
ガイドコメント
クラプトンが敬愛して「コカイン」「アフター・ミッドナイト」などをカヴァーしている、J.J.ケイルとの夢のコラボレーション・アルバム。クラプトンの共演作品はB.B.キング以来、約6年ぶりだ。
収録曲
01DANGER
70年代初期のレイド・バック・サウンドを今風にアップ・トゥ・デイトした感じの曲。クラプトンのくつろいだ歌唱と間奏のケイルのギター、ビリー・プレストンのオルガンが有機的に絡まり、実にいい雰囲気を醸し出している。
02HEADS IN GEORGIA
J.J.ケイルの作によるスロー・ブルース。米南部から西海岸へ向かう男の浮き草めいた姿と心情を綴った詞を、ケイルとクラプトンが渋い喉でじっくりと歌い込んでいる。翳りの中に深い味わいが宿るナンバーだ。
03MISSING PERSON
シャッフル調のリズムが心地よい、J.J.ケイルの作品。ギター・アンサンブル用の曲といっても過言ではないナンバーで、複数のギターがそれぞれの持ち味を十分に引き出しつつ、互いにサポートし合っている。
04WHEN THIS WAR IS OVER
軽快なカントリー・ロック調のリズムに乗せて、戦争の無意味さや愚かさバカさ加減を訴えるメッセージ・ソング。ケイルにこんな曲を書かせ、クラプトンが歌う今の世の中って何? そんな思いが頭をよぎる1曲。
05SPORTING LIFE BLUES
多くのブルース・マンが取り上げた、ブラウニー・マッギー作のブルース・クラシック。タジ・マハールのハーモニカを加えたシンプルな演奏をバックに、クラプトン&ケイルが滋味あふれる歌声を聴かせている。
06DEAD END ROAD
デニス・カプリンガーのフィドルが全編にわたってフィーチャーされた、オルタナ・カントリーの要素も含むJ.J.ケイルの作品。ドライヴ感あふれるサウンドに乗って、クラプトンが張りのある歌唱を披露している。
07IT'S EASY
懐かしのスワンプ・ロックを現代に甦らせた、そんな雰囲気のアーシーなナンバー。生ギター、スライド・ギターがツボを押さえたサウンドを提供するなかで、ケイルとクラプトンが息の合った掛け合いを聴かせている。
08HARD TO THRILL
ギタリスト、ジョン・メイヤーとクラプトンの共作によるマイナー調のブルース。枯れた味わいのギター、ヴォーカルの中に何ともいえないコクが宿り、ジワジワと効いてくる1曲。間奏のピアノが実に効果的だ。
09ANYWAY THE WIND BLOWS
ケイルが1974年に発表した『オーキー』収録曲のリメイク。ブッといギターが唸りをあげるハードなナンバーにアレンジされており、ケイルとクラプトンともに60歳過ぎとは思えない若々しいプレイを披露している。
10THREE LITTLE GIRLS
クラプトンの作詞/作曲による、彼の3人の娘たちに捧げられたナンバー。娘たちの実名を盛り込んだ愛情と感謝の念のこもった詞を、フォーキーなサウンドをバックに歌う姿は、実に微笑ましくほのぼのとしている。
11DON'T CRY SISTER
1979年にケイルが発表したアルバム『5』に収録されていた曲のリメイク。マーク・ノップラーも憧れて手本とした、ケイル独特のギター・ワークをたっぷりと堪能できる。オールド・ファン感涙の必殺チューンだ。
12LAST WILL AND TESTAMENT
リラックスした雰囲気のミディアム・チューンで、メロディのそこかしこにJ.J.ケイルらしさがにじみ出ている。全編にわたり泣きのギターがフィーチャーされ、いやがうえにも気分が昂揚してくる……そんな1曲だ。
13WHO AM I TELLING YOU?
緩やかなテンポのなか、キャリア40年以上の2人だからこそ出せる深い味わいが、聴き進むうち胸に沁みてくるナンバー。クラプトンの柔らかな歌唱に和み、間奏のブルージィなギターに酔う、地味だけど滋味な逸品だ。
14RIDE THE RIVER
カントリーのリズムも採り入れたケイルの作品。言葉以上に雄弁な、ケイルとクラプトンによるギター・バトルならぬギター・コミュニケーションがたっぷりと楽しめる、アップ・テンポのご機嫌なロック・ナンバー。